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第22幕 君が残したもの

 ミハイルとエリナは学園内を、ジュリオとフィオナは寮内を、ノアとリリスは王宮を、それぞれ捜索することになった。

 そして、クラウスはレオノーラの実家である公爵家を訪ねることになった。


 これまでにもレオノーラのことを尋ねに何度か訪れているが、彼女がいない今、頻繁に足を運ぶクラウスのことを怪しむ者もいる。だが、そんなことを気にしている暇はない。


「王太子殿下、度々のご訪問ですが、何かご用でしょうか?我が家に問題でも?」


 公爵は困惑の色を隠せない。


「詳しくは説明できないが、東側の大きな木が窓から見える部屋に案内してくれないか?」


 それは、かつてレオノーラが使っていた部屋だ。二人きりになったことはないが、クラウスは何度か足を踏み入れたことがある。


「そこは現在、空き部屋となっておりますが……」


 クラウスは無言で頷いた。



 不審がる公爵をどうにか宥め、クラウスは久方ぶりに、レオノーラの部屋だった場所へと足を踏み入れた。


 そこには、かつての面影はもうなかった。


 埃の積もった床、色褪せたカーテン。調度品は片づけられ、家具も最小限に留められたその空間は、すっかり“空き部屋”と化していた。


 落ち着きと気品に満ちていた彼女の気配も、温もりも――すべてが、跡形もなく消えている。


「……やはり、駄目か」


 落胆の吐息とともに視線を落としたその時、ふと、足元で何かが光を反射していることに気づいた。


「これは……?」


 しゃがみ込み、そっと拾い上げる。


 それは、小さな銀の指輪だった。


 レオノーラの愛用品とは思えないほど、子どもじみた粗末な作り。だが、次の瞬間――指輪に触れた途端に、視界がぐらりと揺らぐ。


 あの断罪の瞬間。

 誇り高かった彼女が、クラウスに縋りつき、涙ながらに助けを求めていた姿が脳裏に焼きつくように流れ込んできた。


「……思い出した。これは……私が、昔、レオノーラに贈った婚約指輪だ」


 幼い頃、将来を約束し合ったあのときのもの。ままごとのような約束だった。あまりにも小さな指輪だから、すっかり忘れていた。


 けれど、もしこれが――レオノーラの“もっとも大切な物”であったのなら。


 彼女の想いは、間違いなくクラウスに向けられていたということだ。


「……ありがとう、レオノーラ。お前の想い、確かに受け取った」


 クラウスはそっと目を閉じ、胸に抱きしめた指輪の温もりを確かめるように言った。

 その頬を、静かに一筋の涙が伝う。


 次の瞬間――。


 ブオン、と鈍く低い電子音が室内に響き、何もなかった空間に淡い光が浮かび上がった。

 空中に浮かぶ透明なスクリーンのようなものに、見慣れぬ文字列が次々と表示される。



---


【 Error Code:E-8714 】

【 異常検知:ループデータに不整合を確認 】

【 該当ヒロインルート:レオノーラ・ヴァレンティナ・エーデルレーヴェ 】

【 ステータス:破棄処理中…… 】


……


【 進行フラグ:リセット済 】

【 強制起動:フィオナ・エルメロワルート 】


……


【 バグ修復率:95% 】



---


「……なんだ、これは……?」


 クラウスは言葉を失った。

 理解が追いつかない。何を意味しているのか、何が起きているのか――まったくわからない。


 だが、表示された『破棄処理中』という言葉だけが、鋭く胸を刺す。


 そして次の瞬間。


 【バグ修復率:96%】と数字が切り替わったのと同時に――

 彼の手の中にあったはずの指輪が、音もなくふっと消えた。


「……っ!」


 思わずその場に膝をつき、クラウスは震える声で呟く。


「まさか……これは――レオノーラが“完全に消える”カウントダウン……なのか……!?」

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