表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/28

第2幕 繰り返される喜劇の果てに

 王都を離れる馬車の中、レオノーラ・ヴァレンティナ・エーデルレーヴェは、窓の外を無言で眺めていた。


 手足は冷えきり、唇はかすかに震えている。


(これで、何度目かしら)


 淡く笑った。誰にも見せない、誰にも知られない微笑みだった。


 庶民の少女フィオナが選ばれ、王太子クラウスは婚約破棄を宣言する。

 学園の貴公子たちが、判を押したように断罪の言葉を並べる。

 階段、教科書、破れた鞄――記憶の中で何度も見た光景。


 彼らの視線も、声の調子も、群衆の歓声すらも、少しの違いもなく繰り返されていた。


(演劇のような、悪夢のような……)


 辿り着いたのは、かつての離宮――今は打ち捨てられた屋敷だった。

 家具は朽ち、屋根は雨漏りし、暖炉に火はない。


 古びた部屋にひとり腰掛け、レオノーラは蝋燭に火を灯した。


「また、最初から……ですのね」


 自分がいつから“この地獄”に囚われているのか、もうわからない。

 けれど確かに、何度も繰り返している。


 フィオナに勝とうとしても。

 王太子に真実を訴えても。

 仲間を得ようと手を伸ばしても。

 結末は常に同じだった。


 自分は断罪され、世界は滅び――やり直しが始まる。


(もう……疲れたわ)


 蝋燭の炎にかざした指が、ゆっくりと震えた。

 孤独と絶望はとうに慣れた。けれど、心の奥底に残るただひとつの願いが、彼女を立たせる。


「――早く、この繰り返しを終わらせなければ……」


 無限に続くような地獄から、抜け出さなければならない。

 もうじき、また世界は逆行する――その前に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ