表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

第2話-S 馬鹿な神様のやらかし

「お、この溶液と溶液を混ぜると変てこな色に変化するのだ!!可愛いのだ!!」


 世界は物理法則に支配されている。

 アインシュタインが相対性理論を発見し、シュレーディンガーはそれまでハイゼンベルクの行列形式で表現された量子の振舞いを波動方程式にして表してみせた。


 さらにはもう少し巨視的な観点で電子の動きにのみ注目するならば、原子同士の結合の振舞いを数式で記述することができる。


「私も立派な神になってみせるぞ!化学の専門家になるのだ!」


 世界を支配する自然法則は、実は神が設定したものである。

 全ては神がお遊びで自然の法則を設定した、宇宙規模の遊戯なのである。


「私も先代のお父ちゃんみたいに、立派な神になるのだ!」


 神はお遊びで自然法則を作る。その自然法則も神が管理する。この少女、レミーの父が「地球」を作り、その宇宙を創造した。


 しかし、レミーの父は何兆年も生きた後に他界し、今地球を含む宇宙の自然法則は惰性で運用されている。娘のレミーが地球を含む自然法則を管理する神になったのだが、なにしろ当のレミーは生粋のおバカさんなのである。


 馬鹿


 阿保


 生まれながらの天然の神なのである。


 しかし馬鹿なりに、父の創造したこの地球という星を愛している。そのため、まずは「化学」と呼ばれる学問を勉強し、愛する地球の住人のために医療薬を創造してやることを目標に日々学問に励んでいるのであった。


「私は神なのにお馬鹿なのだ。まだまだ人間レベルの化学の知識しか理解できないのだ。これじゃあ、物理法則を支配する神など絶対になれぬ。でも努力していればきっと天才God様として可愛い地球の住人達を幸せにするようなことを、神なりにしてやれるのだ」


 今日はある溶液とある溶液を混ぜると色が変化することに気づいたレミー。やった!と、人に心の中できゃぴきゃぴと喜んでいた。


 今日も勉強のために神のお勉強タイム。


 しかしそんな中、意地悪な悪魔がやってきた。

 悪魔の到来。


「おいレミーよ、ちょっと緊急の話があるぜ」

「むむ、悪魔さんじゃないか。また私のことをだまそうとしているな、あっちいけ」


 レミーは幾度となくこの悪魔に騙された経験がある。父が生きていた時は彼の助言により悪魔とは一切関わるなと言いつけられていた。そのため、レミーは悪魔と対面した時おいはらうような言葉を投げかけた。


 しかし


「緊急な話と言っているだろう」

「どうせ私をだますつもりだろ!あっちいくのだ!!」

「ちがう、これは緊急の話だ。地球が危ない状況なんだ!」

「えっ!!」


 レミーは動揺した。悪魔さんは今、地球が危ない、そう言ったのだ。


「何の話なのだ……?」


 レミーは悪魔に問う。


「実はな、今、地球にはある化学物質が蔓延している。それが地球を脅かしている」

「えっ、化学物質が地球を脅かしている!な、なにの話なのだ!!もっと聞かせるのだ!」


 愛する地球。そして人間。彼らの星が危険にさらされているとなれば、レミーはじっとしていられなかった。


「実はな、非常にたちの悪い化学物質が地球に蔓延している」

「どんな化学物質なのだ!」


 地球が危ない!そうレミーは感じた。


「実はな、その化学物質は多量に摂取すると人間を死に至らしめる」

「えっ!私の大好きな人間が死んじゃう……そんな化学物質が、蔓延している……?」


 レミーは焦った。今は化学の勉強中。詳しい話は分からない。しかし、どうもその化学物質は大量摂取で人間を死に至らしめるというのだ。


「しかもな、それは金属の腐食に関与し、例えば橋や建物等、暮らしに欠かせないライフラインの寿命を縮めてしまう」

「えっ!そ、それは大変なのだ!橋とか建物の鉄筋が腐食されたら、崩れて、壊れて、人間が危ない状況になっちゃうのだ!!」


 レミーは必死に悪魔の話を聞いていた。どうも金属の腐食に関与する危険な化学物質のようであった。


「さらにはな、その化学物質に触れてしまった人が、仕事中に感電しやすくなって、それが致命傷で死んでしまう事例も多発している」

「そ、そんな!!大変なのだ!人間が感電死してしまうのだ!僕はどうすればいいのだ!人間、今助けてやるからな!」


 そう言って、レミーは悪魔にどうするべきか問いただした。

 すると一枚の契約書を差し出した。


「レミーよ、この契約書には、その化学物質を規制し、地球から一切のそれを取り除き消滅させるように書かれた文言が書かれている」

「む、難しいことは分からないのだ!」

「つまり、レミーがこれにサインすれば、その化学物質を地球から無くしてやる」

「ほ、本当なのか!あ、ありがとう、本当にありがとうなのだ」


 悪魔は実はいいやつだった、そうレミーは確信した。すぐさまレミーは悪魔の契約書にサインした。これで、その地球に蔓延する化学物質を取り除き、人間を助けることができる。


「まいどあり」


 悪魔はレミーのサインを確認すると、そそくさと帰っていった。


「よかったのだ。これで……」





 --------------------------------------------------------------------






 次の日、地球の全生命は死んだ。人間も、植物も、プラントンも。犬も猫も魚も、全て。

 さらには地球の海は消滅し、カラカラになった砂漠の土地だけが広がっていた。


「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、騙したな騙したな騙したな騙したな」


 レミーは怒り狂い、叫び、狂乱した。


 水、それは生命を維持するもっともの重要な化学物質。

 水、それは地球の海を構成する主要な化学物質。


 それが取り除かれ、全ての生命は死に、海は消え去った。


 水を大量に摂取すると、血中のナトリウムイオン濃度が薄くなり、水中毒で死亡する。


 水は鉄等の金属をサビさせ、腐食を促す。


 水は皮膚の電気伝導率を高め、電気工事作業時に感電・死亡リスクを高める。


「なんてことを、私は、してしまって。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」


 次の日、レミーは首を吊り自殺した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ