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5コメ 異世界『キモコメ』おじさんを探せ!〜前編〜

『あぁ、アリィ。アリィアリィ…可愛いよ。チュッチュチュッ。』


『アリィ…今日もすっごく肌が綺麗だ。恋でもしてるのかな…。』


『どうしたんだ…?僕の愛に気づかないの…?』


『…どうして。なんで答えてくれないんだァ!』


「ひっ…!離して…!」

「アリィ、アリィなら分かってくれるよな?」

「痛い…!痛いよ!!」

「俺の気持ちも分からないなら…生きてる意味も無いよね。」


『グサッ』


ーー


「はっ…!はぁ…。はぁ…。」

夢。悪い夢を見ていた。おそらく元の世界だったら見ないような夢だ。

『キモコメ』にとどまらず、暴徒化するファン。ある意味熊田誠太郎はその線引きを理解していた。『肉太郎』はネット上のみの存在であり、リアルには存在しない。危害を加えるような真似は、絶対にしない。

モヤモヤとした感情が過ぎる。


『もし私が、アルバムを渡した男に会いに行ったら。どうなってしなうんだろう。』


『もしかしたら、さっき見た夢が正夢になってしまうかも。』


だが、会ってみたいという衝動は抑えられないままだった。


翌日、酒場『踊り子』にて。

「写真機を持った男?覚えてないなぁ。」

「あれ、ロジェストさんよく持って来てなかった?」

「あぁ。」

「ロジェスト?」

「教会の向かいに住んでる人だよ。」

案外近くにいた。

まだ1証言だけだが、こんなに早く見つかるとは。順調すぎて拍子抜けしてしまう。


「ありがとうございます!」

「ちょっと変わり者だから気をつけてね。」

「あ、はい!」

変わり者。

えてしていい女子の追っかけをしている人はそういう人種なのかもしれない。


『いや待て。』


場所が住んでいる場所が分かったからと言って突然訪問して良いものなのだろうか。今日見た夢のこともあるが、最初に考えるべきは『いきなり訪問して良いのか?』である。

日本の倫理観ではアウトだ。何らかの『アポイントメント』をとってから会うのがセオリー。はは、仕事でも『アポ』なんて取ったことないのにねぇ?


冗談はさておき、ここの人らはどうだ?酒場とはいえかなりフランクに個人情報を教えてくれた。どういうスタンスなんだろう。


『んー。ちょっと甘かったか…。』


ーー


「別にいいんじゃない?」

困った時のエリオちゃん。

あっけらかんと答えてくれた。


「そう?!」

「小さな街だし。別に隠すものもないでしょ。第一、アリィにちょっかい出して来た奴なんだから懲らしめてやりなさいよ。」

いつになく強気なエリオちゃん。


「私は別に懲らしめたいわけじゃなくて…。」

「じゃあ、どうしたいの?」

「なんというかさ。話してみたいなーって。」

「話す?話の通じる奴だといいね。」

アリィは、彼がどういう心境で『キモコメ』をしたのか気になっていた。自分と同じなのか、それともまた別の感情があるのか。


「へぇ。変なの。ほんと、アリィ変わったよね。変わりすぎて、なんか他人と暮らしているみたい。」

そう言って少し目を細め、クッションに顔を埋める。アリィはそんなエリオの隣に座り、ぬいぐるみのようにぎゅっと抱きしめる。


「寂しいこと言うなよう。エリオ。」

「やっと名前覚えたか。まったく。」

「流石にねっ。」


やっと。ほんのちょっとだけ、接し方がわかった気がした。



「で、なんで俺なんだ?」

「まぁ、強そうだし?いざという時のために。」

「そうか。」

あぁ、バローズの態度は明らかにダルそう。昔はそんなことなかったのにねぇ?仮にも目の前にいるのはプロポーズした女性ですよ??中身はおじさんだけど。


「ってわけで、ロジェストさん家を探そう!」

「は?もう特定できてんじゃねぇのか?」

「分かってるのは教会の前って情報まで。」

この街は教会を中心に円を描くように建物が並ぶ。家の数はざっと10軒ほど。


「ま、しらみ潰しに探せばなんとかなるっしょ!」

「まじか。俺もそんなにヒマじゃな…」

そう言っている隙にもうアリィは1軒目の戸を叩いていた。


ー1時間後

「だめだぁ。あっれぇ…?」

「…もう全部回ったか?」

「多分。あーん、ロジェストさんどこー!!」

折角の情報と努力がパーになる。教会の途方に暮れるアリィと、早く帰りたいバローズ。


「てか、人探しの魔法とか無いのかな?エリオに言って探してもらおうかな。」

「あるぞ。」

「うんうん。え、マジ!?」

「あぁ。俺も使える。」

「はぁ!?早く言えし!!」

バローズは『魔法族』であり『騎士族』二つの特殊技能を持ち合わせるスーパープレイヤーだ。

だが、エリオもバローズも魔法を使わない理由があった。


「街中じゃ、無闇に使えないんだ。」

「…そっか。まぁ、そうだよね。」

魔法族の禁忌の一つに『集落内での魔法使用の禁止』というのがある。破った場合は、それ相応の罰を食うことがある。


『あれ、でもエリオよく読心術使って私の考え読んでるけどな…?』


「読心術は、例外なんだ。」

すかさずバローズにも読まれるアリィ。


「変態!すけべ!えっち!!」

「は?!そんなじゃねぇし。」

どうやら、揉め事や事件の解決、円滑に生活を送るために『読心術』をはじめいくつかの例外があるらしい。便利な設定だな…。


「だがその読み取った内容は第三者に漏らさないこと。それが条件だ。」

「ふぅん。」

バローズの話も右から左。この時点でアリィはかなり疲弊していた。もう、こうなったら。


「ロジェストさーーーん!!!」

最後の力を振り絞って大声を出す。


「うぉ!?街中でいきなりデケェ声出すな!!」

「しょうがないじゃん!見つかんないんだから!!」

確かに、どの世界でもいきなりでかい声を出すのは変質者。下手に注目を集める必要はない。


「また出直そう。」

「んむ…。」

不服そうなアリィ。流石に、もう限界か。

すると、1人の男性が近づいて来た。


「私を、お探しですかな。」

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