19コメ 旅の仲間〜中編〜
『べキィ!』
『ドサッ』
「はぁ。」
小柄なサウリアを捕まえては『駆除』していく。レイにとっては簡単な仕事だった。
「おや。」
「おっさん。」
「これはこれは。先ほどのお嬢様ではないですか。」
「よくもやってくれたわね。」
「ん?あなたも……。」
「あ、はい。あー。どもー……ははは。」
全体的にきまずい空気が流れる。それもそのはず、アリィもエリオも今が初めて会うわけでは無い。
「そうですか。で、何の用でしょうか。この森には結界が張ってあったと思うのですが。」
「破らせてもらった。」
「ほう。そうですか。」
「気に入らないわね。魔法術の番人のくせに、乱用するのね。」
「乱用?いえ。これは正当な理由での使用です。サウリアは獰猛で増えるスピードもはやい。人里に放していてはあなた方の住む町を滅ぼしかねませんよ?」
「……でも、生け取りにすればいい。殺す必要はないわ。」
「はは。ははは!サウリアを生け捕りねぇ。ではなさってください。どうぞ!」
懸命に反論を繰り出すエリオだが、悉く論破される。
そして1匹の小さなサウリアが歩み寄ってくる。
『キャアウ!』
「エリオ大丈夫!?小さいけどヤバいって多分。」
「わ、私じゃないわよ。おっさん!あんたがやりなさいよ!!」
「私は『上の者』よりサウリアの『駆除』を仰せつかっております。故に、殺すしか出来ないのです。さ、どうぞお捕まえになってください。」
「エリオやばいって!逃げようよ!!」
「できない。」
「え?」
「足が、動かない!」
『キャアアアアウ!!』
サウリアがエリオめがけて走り出す。『この前の夜』のように。
咄嗟に目を瞑る。
『またやられる。』
諦めかけたその時。
『べキィ!!』
飛びかかる寸前、サウリアが木の枝のように折れた。
息を荒げ、立ち尽くすエリオとアリィ。
「死ん……じゃった。」
「ね。だから、こうするしかないんです。」
「……。」
「あとどれだけいるんですか?」
「残るは、2匹というところでしょうか。」
「分かりました。もういいね?エリオ。」
「……。」
無言で頷き、その場を離れようとする2人。
「待ってください。」
「なに。」
「アステルシア様を、ご存知ですね?」
鋭い目つきでエリオを睨むレイ。
「知らない。」
「そんなはずはありません。貴女にかけた魔法術を解除でき、この結界の内側に入ることができるのは『上級の魔法術使い』に限られます。」
「は?」
「いるのは分かっています。出てきてください!」
そう言うと、木の陰からミクが出てきた。
「ミク!!」
「……バカ!外で待っててって言ったじゃない!」
「ごめんなさい。」
「お久しぶりです。アステルシア様。」
「……。」
「ここにいるのはミク。適当なこと言わないで。」
「さ、帰りましょう。」
「やめて!!」
差し出された手を拒否するミク。
レイは少し呆気にとられたような顔で見つめる。まさか、アステルシアの記憶が綺麗さっぱり消えてしまったとは露とも思っていない。
「それ以上、近づかないでください……。」
「えと、私をお忘れですか?お父様t」
「やめて!!!聞きたくない!!」
「ミク、大丈夫?」
「おっさん。その辺にしといた方がいい。ミク相手じゃ、おっさんも敵わないから。ぶっ飛ばされたくなぁったらやめな。」
「はぁ……そうですね。」
身を震わせるミクの肩をそっと抱くアリィ。
「帰ろ。」
エリオが振り帰ろうとしたその時。
――閃光
「ぐはぁっ!!」
わずか数秒間の出来事だった。
レイが放った閃光を反射的にミクが跳ね返す。
そしてレイを直撃し、木に叩きつける。
「だから、やめとけって言ったじゃん。」
「……これではっきりしました、アステルシア様。」
「はぁ……はぁ……。」
「ミク。」
「アステルシア様、私と帰りましょう。『マーゼンガット』へ。」
苦しそうに言葉を絞り出すレイ。
『マーゼンガット』は何処なのか、ミクも知る由がない。
「……。」
「貴女は、アステルシア・メリルバート。紛れもなく、マーゼンガットの王女なのですよ。」




