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17コメ 尋ね人

『コンコン』

アリィの家を尋ねる男達。うっすらと笑顔を浮かべ、出てくるのを待つ。


『ガチャ』

「はいはいー。何で……しょうか?」

アリィは何の気無しにドアを開ける。そして、物々しい男たちの迫力に気圧される。


「ここに、アステルシアと名乗る女の子はいらっしゃいませんでしょうか?」

「え?……女の子は妹のエリオしか。」


『何々……?何なの?この人たち。』


「そうですか。あの、最近この付近に迷子が保護された等そういった情報はありませんか?」

「迷子?いや、それも記憶に無いですね。」


『ミク……?ミクを探してる?』


「そうですか、すいません。ありがとうございました。」


『ガチャ』

「……。」

「怪しいですね。何かを隠していました。」

「レイさん、尋問しましょう。」

「いや、いい。バローズだけ連れていく。」

「ですが!」

「ん?アイツ。逃げる気か。」

「まったく……!」

バローズが森へ向かう気配を感じ取りすぐさま追いかける。


「誰……でしたか?」

「わかんない。何か、人探ししてるってさ。この世界の人は基本聞き込みだよねぇ。私の時もそうだったけどさ。ミク、顔色悪いけど平気?」

「はい。少し、動悸が。『強い魔力』を感じたので。」

ミクは額に大粒の汗をかき、息を荒くする。

心臓に手を当て、落ち着くのを待つ。

アリィも背中を摩り介抱する。


「よしよし。」

「ありがとうございます。」

「こういう時お医者さんならどうするの?」

「へ?」

「ほら、ミクって『元は』お医者さん……だったよね。」

「えと、ん……。」

顎に手を当て考え込むポーズをとる。

本当に忘れそうになることがあるが、彼らの奥底には『キモコメ』おじさんが眠っている。生前女の子が好きすぎて、死後何の因果か女の子になってしまった。

基本ラインどこかに『天性のキモさ』がある、はず?


それは一旦置いておいて、現在はまごう事なき美少女だ。この世界では『キモコメ』される側なのである。


「特に思い出せなかったですが、なんだか少し落ち着きました。」

「あぁ!そりゃよかった。」

「そういえば……アリィさんは、どうやってここに来たんですか?」

「どうやって?おぉ、んー。どうやって。」

遠い記憶を呼び起こす。アリィはアリィでギリギリ思い出せるような気がするが、どうしても草原に横たわってたところまでで止まってしまう。

あの時の景色は鮮明だ。優しく吹き抜ける風に一面の緑、遠くから聞こえるエリオの声。

あの時から、全てが始まった。


「熊田誠太郎さん。」

「おぉ!それは覚えてるんだ。」

「御厨隆にとって、熊田さんは敵でした。」

「あぁーそうか……はは。」

「でも、今は感謝しています。」

「えぇ?そう?」

「私が正気でいられるのも、にk……熊田さんのおかげです。」

一瞬『肉太郎』と言いかけた。どんなことを忘れても、この名前だけは忘れない自信がミクにはあった。


「熊田誠太郎のこと、もうあんまり覚えてないんだけどさ。どうしようもない生活をしてたと思う。」

「はい。そう……でしたね。」

「だよね!?なんかさ。こっち来て家事めっちゃやるんだけど、時々『面倒臭いなぁ!』っていう……多分、熊田誠太郎の想いみたいなのが目を覚ますことがあるんだよ。きっと遺伝子レベルで怠惰な人間だったんだよ。」

「はは。確かに熊田さんは、物凄く太っていました。」

「そっか。そりゃ死んじゃうわけだ。向こうの世界で。」

いやいや、だからってそんなにすぐ死なないって!と言いつつ、実際肉太郎は階段から転落し頭部を強打した。御厨はベランダから転落した。

異世界への転生。信じられないことだが、少なくともこの2人には紛れもない事実である。


「何のために、呼ばれたんだろ。この世界に。」

「そうですね……。」

必ず理由はある。

そう信じて、日々を過ごす。



「待てバローズ!!」

「どうする気ですか?我々からは逃げられないと言ったでしょう。」

「この森の奥に!住人がいるんだ!!」

「森の奥?」

「幼体だろうがサウリアは獰猛だ。助けねぇと食われちまうかもしれねぇ!」

「そうですか。」

「そうですかって、お前ら!」

「その方が、貴方には好都合なんじゃないですか?」

「え?」

「エドゥアルド・バッグウェル。彼も貴方と同様の罪で我々が拘束しました。既に移送も済んでおります。それでもまだこの森に御用がありますか?」

バローズとエドゥアルド。2人は『何か』を企んでいた。この街の安寧を脅かす何かを。


「時間切れです。すぐに移送します。」

「待て待て!待ってくr」


『シュッ』

レイと呼ばれた人物が手をかざすと、バローズは石のように固まり地面に転がった。

それを拾い上げる2人の若い魔法術使い。


「道中、くれぐれも気をつけて。丁寧に扱ってくださいね。」

「承知。」

「わかりました。」


『サーッ』

バローズを抱え、砂のように消え去る2人。瞬間移動の魔法術だろうか。


「さて、後始末といきますか。ん?何でしょう、お嬢ちゃん。」

レイと向き合うのはエリオ。一部始終を見ていた。


「バローズ様を、どうしたの?」

「バローズ?何のことでしょうか?」

「惚けないでよ。あんたらが、バローズ様を石にするところ見たんだから!」

「はは。そうですか。別に、何でもありませんよ。少なくともお嬢ちゃんには関係の無いことです。」

「……!」

「おおっと。私に魔法術で対峙するんですか?はは。やめておいた方がいいですよ。さ、お帰りください。」


『こいつ……物凄い魔力。でも、ミクの方がこれよりも何百倍もすごかった。』


「手を下げてください。ね?」

「くっ……ん……体が、勝手に……!」

「回れ右。お家へ帰りなさい。」

「あぁっ!ん……!こら!勝手に操るな!!!おい!!」


「……やれやれ。」

そして、レイは森に入った。

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