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16コメ 国際魔法術連合

「じゃ、ここでいいか?」

「ありがとうございました。バローズ様。」

「ありがとう、ございます!!」

夜も更け、まもなく陽が出ようという頃。

ミクとエリオは無言のまま帰宅した。

『ドサッ』とソファに腰を落とし、先ほどまでの森での出来事に思いをめぐらせる。

死と生。その両方を目の当たりにした。

そしてミクは『アステルシア』という名前であるという事実も得た。果たして、何処の誰なのか。

まだ、知る由もない。


「ミク。あり…がと。」

「いえ。気分はいかがですか?」

「変な感じ。身体中傷だらけなのに。この通り元気よ。」

九死に一生…いや、死から舞い戻ったエリオ。俄には信じられない体験をし、今だに実感が持てない。

ミクはエリオと身を寄せ合った。互いの体温を感じ、今生きていることに感謝をする。


「本当によかったです。本当に。」

「うん。」

涙が溢れた。恐怖を感じた時に流した涙とはまるで違う、暖かい涙。安堵が、2人を包み込む。

そしてそのまま、眠りについた。


――


『コトコトコト』

何か調理をする音がする。薄目を開けると差し込む陽の光が昼頃であることを告げる。


「おはようございます。」

「あ、おはよ。起こしちゃったね。」

「大丈夫です。アリィさん、体調は?」

「この通り!もう元気だよ。大事をとって今日もおとなしくしてるけどね。」

「良かったです。……エリオさんは?」

「自分の部屋じゃないかな。」

アリィはすっかり回復していた。そして、何か食事を準備してくれているようだった。


「昨日は夜遅かったの?」

「昨日というか、今日の朝方というか。」

「ほんと?!エリオ……ちょっと頑固なとこあるから。ゴメンねぇ。」

「い、いえ!全然。」

アリィに言うべきだろうか。森での出来事を。

妹が『一度死んだ』なんていう事実を知ったら、どう思うだろう。

そんなことを悩んでいると。


「はぁ。おはよ。」

「あ、起きたなーエリオ。もうすぐご飯できるよ。」

「だろうね。だから来た。」

エリオはいつの間にか寝衣に着替えていた。そして眠い目を擦りテーブルにつく。

そんな何気ない日常を目の当たりにして顔が綻ぶ。


「エリオさん。おはよ……ございます。」

「なによ。にやけちゃって。……おはよ、ミク。」

「お?仲直りしたんだ?」

「うっさい。」

「へへ……。」


『ねぇ、ミク。』

エリオがミクの意識に直接話しかける。


『何ですか?』

『昨日のこと、アリィには黙ってて。』

『はい……わかりました!』


「なに見つめ合ってんの。へぇーもうそういう間柄になったのぉ?」

「えっ。」

「ち、ちがうわよバカ!バカアリィ!!」

「2人が幸せならお姉ちゃんは別にいいけどね。」

「さっさと食べるわよ。」

「そ、そうですね。」

「んじゃ、はい。いただきます。」

「いただきゃーす。」

「いただきます。」

ミクもすっかり家族の一員である。正体不明の謎の少女が、今では心を通わせこうやって食卓を囲んでいる。こんな何気ない幸せな日が続けばいい、アリィはそう思った。


――


数日後。

物々しい集団がメレンダの街へと踏み込んで来た。

緑色の装束に身を包み、縦長の帽子を冠る。いかにも魔法使いというような風貌だ。


「この辺だな。」

「はい。」

「この街も封鎖しますか?」

「いや、そこまではしなくていい。人探しをするだけだ。」

そう言うと、コンパスのような物を取り出す。


「バローズ・ラングウッド。」

名前を唱えると、コンパスが彼のいる方角を指し示す。


「アステルシア・メリルバート」

反応なし。


「ダメですね。この街にもいませんか。」

「いや。私は感じる……強大な魔力を。おそらく、この街にいる。アステルシア様が。」


――


「バローズ・ラングウッドだな。」

「ん?何ですか?」

「もう一度聞く。バローズ・ラングウッドだな?」

「……はい。」

「国際魔法術法違反の容疑で、お前を連行する。」

「え?」

急な事態に頭が真っ白になる。


「お前は、法を犯した。わかるな?」

「……。」

「先日、この付近でサウリアが人を襲った。普段は人里からは遠く離れたところに生息する魔物だ。騎士なら、それ位知ってるだろう。」

「……。」

「魔物と人とは明確な境界がある。それを管理するのも我々『国際魔法術連合』の役割なのでね。」

「遅かったんじゃないか?」

挑戦的な態度で対峙するバローズ。『国際魔法術連合』を名乗る男たちは、そんな彼に至って冷静に対処する。


「確かに俺は結界を破ってサウリアを引き入れた。だが、もうソレは始末された。」

「そうですか。では、これを見てください。」

そう言って別の男が何かを取り出す。


「……卵の、殻?」

「サウリアの、卵です。これ以外にもあと6つ確認できました。貴方が連れて来たのは『メス』。卵を持っていたんです。」

「馬鹿な!俺は確認した。サウリアのメスは特徴的なツノがある。だがヤツにはなかった。」

「転性は、知っているかな?」

いわゆる『性転換』である。トカゲや魚類など、ごく稀に性転換をする種が存在する。サウリアも、その1種だった。

これぞまさに『異性界転性』……すいません。


「そんな……。」

「複数の罪で君を連合裁判にかけることになる。本部のあるザルツヴェルトまで同行願えるだろうか。」

「ヤツは、爆発的に増える。このままじゃメレンダが。この街が終わっちまう!!」

「元々は、君が蒔いた種だろう!……まぁ、落ち着くんだ。ラセタの森は結界で覆わせてもらった。それにまだ子供のサウリアだ。森の外へは出んだろう。」

「……。」

「出発の準備をしたまえ。我々はもう1人に会いに行く。逃げようとしても無駄だぞ?我々は魔法術連合の人間なんでね。」

そう言うと、一行は瞬間的に行方を眩ませた。

脳内を整理する。

バローズはサウリアを人里へ引き入れた罪などで拘束される。そして、サウリアはメスで繁殖をしていた。ラセタの森は、結界で覆われた。結界……。


「エドゥアルドさん!!」


森の唯一の住人『エドゥアルド』である。ラセタの森が結界で覆われたとなるとエドゥアルドは閉じ込められた形になる。


『助けないと、マズいことになる。』


バローズは咄嗟に矢筒を取り『馬のような生き物』を駆る。

「あれ?バローズ!!どこ行くんだ!?」

「ザーク。少し出てくる!」


まだ、馬のような生き物の名前は知る由も無い。

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