11コメ 仮に、ミクと呼ぶことにした
「あぢー。のぼせちゃった…。」
「大丈夫…ですか?」
「あ、ん…。とりあえずね。ミクはよく平気でいられるね?」
あまりにもヒントが無く、彼女を仮に『ミク』と呼ぶことにした。
「私はなんだか大丈夫みたいです。」
「つよ。ふぃー。あぢー。……ん、なに?」
突然ミクが人差し指をアリィに向ける。すーっと顔を左右になぞり、中心付近で上に持っていく。
「えいっ!」
「イデデッ」
頭頂部をぐぃっと押した。驚きと痛みが同時にアリィを襲う。
「なになに!痛いよぉ!!」
「あぁ、すいません。のぼせに効くツボなんです。」
「ツボ?え?んん…ちょっと軽くなった?いや、痛いだけで変な汗出てきた。」
「すいません。」
「そういえば、ミクはお医者さんだったね。はは。」
「指圧は医療行為とは異なりますが、個人的に興味があったので。なんなら全身やりましょうか?」
「いや、結構です。」
痛そうなのでキッパリと断っておく。
ミクはミクで合法的にアリィの体を触ることができず落胆する。
まだまだ、御厨隆がチラつく。
「てなわけで、今日からウチに住むことになったミクちゃん!」
「ミクです。よろしくお願いします!」
「ん。」
ミクを一瞥し、挨拶もそぞろなエリオ。
「妹のエリオ。ごめんねぇ…人見知りなんだよ。」
「は、はい。どうぞよろしk」
「私、課題があるから部屋戻るね。」
「あぁ、うん。」
「制服のスカート、汚れちゃったからついでに染み抜きしといて。」
読んでいた本を乱暴に閉じ、自室に戻っていくエリオ。ミクはというと。
「妹は妹で鬼カワじゃん…!これは捗るわ…。」
溢れ出るキモコメを抑えきれていなかった。捗るって何がよ?
「あはは。じゃ、ウチのこと色々教えるよ。」
「あ、はい!」
ミクは物覚えが良かった。さすがは東大の医学部を主席で卒業した頭脳。
容量よく家事をこなし、普段の半分くらいの時間で片付けてしまった。
家事の仕上げに取り掛かる。頼まれていた染み抜きだ。
『んむ?これは…血?』
スカートに滲む赤い斑点。血のようでもあり、違うようでもある。
直接聞いてみたいが、素直に教えてくれるとも思えない。
『いじめ?授業中に怪我した?えぇ、学校でうまくいってないのかな。』
不安が募る。
友達との間で何かがあったら助けようが無い。ただでさえ『友達はいらない』と公言するエリオ。
どうしようかねぇ…?
「何かありました?」
ミクが様子を見にきた。
「や…うん。」
「血液…ですね?」
「やっぱそうだよね。」
「アルカリ性の洗剤などあれば比較的楽に落とせますよ。」
「え、そうなの。」
「はい。血液に含まれるタンパク質は酸性なので、アルカリ性の液体で分解できます!」
元いた地球上の科学が適用できるかは定かではないが、試してみない手はない。
「なんだ案外簡単じゃん!」
「理屈が分かってればそんなもんです。」
本当にすぐ落とせた。普段より濃い目に洗剤を作り、ピンポイントで擦っていく。みるみる落ちていく染み。
今までで一番有益な情報かもね…?
「なんで、血なんかついてたんですか?」
「さぁ。わかんない。」
「気にならないんですか?」
「なるよ。すっごく気になる。でもさ、そういうとこナイーブだから。エリオは。」
姉妹だからこそ分かる距離感。エリオは頭がいい。その上、考えていることも読めてしまう。
「そんな、もんですか。」
「あとでなんとなく聞いてみるよ。」
「はい。」
「さ、今日はもう休んでよ。」
今日も今日とて、怒涛の1日だった。
明日は、どんなことが起きるだろう。
『もう、何でもドンと来いだ!』
色々と、覚悟が決まったアリィだった。




