嫌われ物の壁
いつもいつも、困難を乗り越えられない、一人の少年がいた。
困難何て乗り越えられないよ。いつもいつも泣いていた。
ある時一人の老人が、泣いている少年に声をかけた。
君は何故泣いているんだい??
少年は絵を描きたいのだが、自分の才能がない事に気づいて泣いている事を話した。
老人は言った。
私も昔、私自身を疑っていた時期があった。
たった一人で戦っていたんだね。私は世界に一人ぼっちだったんだ。
助けて、そう人に言えた時、困難な壁は壊されていったんだ。
たった一言、助けて下さいと。
今でも彼らは、私の良き理解者であり、仲間だよ。
でも、絵を描くのって、一人でやらなければいけない事。
誰も助けて何かくれないよ。
老人は言った。
まずは、この年寄りが言った事をよく考えて、誰かに助けて下さいと言ってみなさい。きっと誰か力になってくれる人がいるさ。
そう言って去っていった。
その少年は、次の日、いつもヤンチャばかりしている、ガキ大将に、助けて欲しいと言ってみた。
そのガキ大将は、絵は分からないが、助ける方法はあると言った。
今から言う通りにするんだ。
もし、お前が困難な壁を感じたら、その壁に他人がハンマーで壊したくなるような絵を描くんだ。
そうすれば、壁は壊されて、お前は前に進めるってわけだ。
描きたい絵を描くんじゃなくて、人の頭にハンマーを下ろすんだ。そうすれば相手は、様々な理由で、その壁を壊してくれるさ。
その少年は、次の日、自分の一家の風刺画を壁に描いてみた。母親が飛んできて、その壁をハンマーで叩き割って行った。父親まで参加して、壁は綺麗に取り除かれた。
次の日は、学校を題材にして絵を描いた。
校長先生が飛んできて、壁を取り除いてくれた。
また前へ少年は進めた。
次の日は日本を、その次の日は世界を描いた。
またたくまに、少年が描いた絵は世界中の壁を壊した。
壁を壊して欲しいと依頼が増え、絵をどんどん描いて行った。
少年は若くして有名な、絵描きになったのだ。
あるインタビューで、何があなたを変えたのですか??と聞かれた。
少年は答えた。
声にならない声を拾うのは、至難のわざです。
だから声を大にして、誰か助けてと叫びました。
ある時、その声を聞いた人がアイディアをくれました。
だから私は思うんです。
助けての一言をちゃんと言葉にして叫ぶ勇気。
好きですとちゃんと言葉にして伝える勇気。
たったそれだけの勇気が、困難な壁をも壊すと。
今あなたが一番描きたい絵は何ですかと聞かれた。
少年は、かつて自分に教えてくれた老人を右側に、ガキ大将を左側に、そして、壁を通り抜け、成長した自分を真ん中に描いた。
かつて、昔の巨匠である、ゴッホのムンクの叫びとは、壁を越えられない、心の叫びを表していたのではないかと、かつての自分と重ねて、少年はその耳を絵に向けて、声を探した。