キミがボクを好きになるまで、ツギハギだらけの顔に泥を塗る
僕は、うまれたよ。
小さなハリをブスブスと、サシて....おんなのヒトがツクッてくれたよ。
「わぁ!!なにこの子、カワイイ!!」
僕は、うりちゃんというミツアミのおんなのコのものになった。
抱き抱るウリちゃんは、とても嬉しそう。
でも、色んなヌノで、できた僕のカラダはすでにボロボロだったよ。
「この子の名前は、なににしようかなぁ....
んー、キツネみたいだから、フォック!!ジュクで、キツネはフォックスって教わったんだよね。エラいでしょ?」
「そうだねぇ。偉いね」
カノジョの家は、貧しかったよ。
とっても貧乏で、とっても....カワイソウな家だったよ。
「私、このおニンギョウさん大事にするねっ!!」
「ふふ、そうね」
私も頑張ったカイがあるわ。って、おんなのひとはしゃべってたけども....
「ぁ...ん......」
僕を抱えて、スーパーへ行くと、君の目は、おもちゃ売り場へと向かった。
そんなうりちゃんに気づいたオンナの人は、困ったような表情をする。
「どうしたの?あぁ....やっぱり、その子じゃダメだったかしら」
「う、ううんん、私いい子だからっ!!そんなこと思ってないよっ!!」
少し眉を寄せて少しほほえんだオンナの人は、買い物にもどったよ。
その後、僕の体をギュッとダキしめた....
ダキシめ....
君はクチビルをかみしめた。小さなくちから、血がボクの顔へとしたたりオチる。シミる。
「........私だって欲しいものあるもん」
キミの声は、ボクにだけには届いていたよ。
「いい子だから、そのおニンギョウさんと遊んでてね。」
「うん!!わかった」
オンナの人が、どこかへといく時、いつもキミは笑顔でうんっ♪っていう。
でも、僕は知っている。そのエガオは、イツワリノ....
「ん......」
オンナの人がいなくなると、君の笑顔は段々キエていく。
急に、僕にはそんな君が、コワく見える。
砂場に、二人ぼっち...
僕を、近くに置いて、キミは、木の枝で絵を描いていく。
「.....ふんふん♪ふ〜ん♪」
キミは、ちいさなコドモを描いていた。オトナも描いていた。
そこに僕の姿は、なかった。
僕は....
君にとって
ナンナノ?
「たっくん?」
「僕から、はなれて」
「ど、どうしたの?いきなりそんなこと....」
「ごめん」
たっくんは、君がスキナ人。
キミは好きな人にも、ハブられた。
クラスに、君のイバショは、ない。
これで....僕を、スキになってくれるかな....
クスクスと笑う声がボクのミミにのこる。キミは、その場で立っているだけだった。
少ししてから、いつものようにクチビルをカムと、ボクを連れて外へと飛び出した。
トイレの中で、ひとり。
そっと座り込むと、顔をウデの中にうずめた。
ポロポロと、涙がおちる。
「たっくん...」
カレは、ずっと友達だったコ。
いつも、カレと一緒にいるとき、キミは笑顔だった。
僕といる時は?
僕が、いなくなったら....こんな顔するのかな。
でも、そうだ。
いつも、いつも
ボクといる時は、笑顔じゃない。
すこしして、僕を掴む。
僕を、ミツめた君は、少しだけサメたような瞳で僕をじっとミツめた。
「あ......ヒモが」
僕のホホを縫っているヒモが、ほつれていた。
僕は手づくりで作られたから、ほつれているところがあったみたい。
(...........なにを、キミはおもってるんだろう)
ずっと、ずっと、君のことばかりカンガえている。
君のクロい目を、見つめる。
(その手は、なに.....ね、ねぇ!?!なにしようとしてるの!?)
キミは、ほつれたヒモに手をつけた。
「......返して」
と、一言呟いたきり...
ただ、ただ無表情に僕のヒモをほどいていった。
(イタイっ!!、、、イタイよ、、、、ねぇ、お願いだから、やめてよ。)
オンナの子の手はとまらない。
ヒモが スルスル と、解ける音が僕とキミの間を縮める。
「あぁああああぁああああ!!!」
叫びながら、泣くキミを僕の黒いボタンが見つめていた。
(.............)
僕は、もう、痛いとか言わなかった。
ウスヨゴレたワタの上に、ボタンが落ちる。
小さなボタンについた赤い染みが、残っている。
ただ....
ただ見つめていた。
君が、好きだった。
嬉しいと、笑ってくれた君が好きだった。
例え、マガイモノだとしても
でも...
僕を、家族としてくれなかったのが、ココロノコリだ。
「.....その子」
「ごべん...なさい....」
「.....ヌノだけになっちゃったわね。ありあわせのヌノで作ったものだから、ヒモを解いたらすぐにくずれちゃうのよ?」
「ごめんなさいぃ!!ごめんなさい!!」
「はぁ....わかったわ。この子、治す?」
「......ナオなくていい」
「そう。」
ボタンが、キミを見つめている。
見つめている。
ずっと、ずっと見つめツヅケテイル。
......
僕は、うまれたよ。
オンナの人がこっそり、ナオしてくれたみたいだよ♪
いたかったよ。
しぬほど、いたかったよ。
いたかったんだよ?ボク.....
それから、ボクは、そっとタンスの奥へとおかれたよ。
闇の中をじっとじっと、見つめ続けているよ。
ボク一人だけで....
サビしいなぁ....こんなところで、サビしいなぁ...ウリちゃん。気づいてくれないかなぁ...僕が、好きなウリちゃん。ダイスキなウリちゃん。ヨナカにこっそり見て、ニッコリ笑顔で僕を見つけてくれないかな。あ....君が、好きな人をツれてきたら、笑ってくれるかな。コンドは...あの土の上で、サンニンの絵を書いてもらおう。だって、僕達は元々バラバラだったのだから...楽しみだなぁ...好きだもんなぁウリちゃん。
「なぁ。おまえ、よかったのかよ」
「しかたないよ。僕はハブられたくない。」
「まぁ、別にいいけどよ。あ、そうだ。ツギハギって知ってるか?」
「なんだよ。それ....」
「おまえ、知らないの?」
「な、なんだよ」
「布でアんだぬいぐるみに、血をタらして、スきな子を思いながらコワスんだと、そうすると....そのぬいぐるみが、スきな人の魂を食べちゃうんだって」
「いやいや...そんなことで、呪われたりしないでしょ」
「嘘じゃないんだって!!その子が、好きになるまで...魂を食べ尽くすんだよ。」
「..........止める方法は、ないのかよ。」
「あるよ。それはね。.....お、おい?どうした?」
「............」
「たくみ?」
「たっくん?」
「........その、残念だったわね。急死だって.....」
「キュウシってなに?たっくんは、どこにいるの?」
「たっくんはね。もう、この世にはいないのよ。」
「コノヨ?なにをいってるの?」
「..........」
「ねぇ」
僕は....いたかったんだよ?ねぇ?たっくん?
(ァァ......)
僕、頑張るから
君の大好きな人をみんな、みんな....イッショになるから
ゆっくりと、立ち上がった人形は、なにかにアヤツラレているかのように、浮かび上がる。
体を残して、体の半分のたっくんが、呻き声を上げている。
「いや、いやっ!!いやっ!!!あ、あのぬいぐるみのセイっ!!あのぬいぐるみがやったのよ」
「ねぇ、ちょっと」
そっと、ウリちゃんに近づく。
「おかあさん、ぬいぐるみどこにやったの?」
「だから.....」
廊下から、見える君は...とても、可愛い。
(カゾクに)
「ひっ....なに、あれ....ねぇ、あれなんなの」
「何を言ってるの?あなた」
「たっくんが....たっくん...がっ!!!」
「たっくんは、この世にいないって言ってるでしょぉ!!!!」
ウリちゃんを、叫び声を上げて、ひっぱたく。
(カゾク.....だよ?)
「ぁ......ぁ.....」
バタリと音を、立てて....オンナの人が倒れる。
「いやいや....ヤダ。こないで」
((ボクをオモイダシテ))
「........いゃ.....」
((あの日の、砂場のツヅキ・カゾク.....))
「アナタなんか、カゾクじゃないっ!!」
((..........ワタシは、カゾクじゃない?キミが、好きな人たちだよ?ボク......ボク.......))
「..............」
顔に降り掛かっていた砂が、泥へと変わる。
ボクは....
ボクは.....
カゾクガ、ホシカッタ
作者のあとがき
この物語は、タイトルから作り上げた小説です。
気持ち悪い作品と...考えた時に、人形、泥(怨念、憎悪、嫉妬)、恋愛....という三つが上がったんだと思います。
要するに、語感から短編を作ったんです。
自分は、ホラーを書く時に縁というなの、紐を想像して書いてることが多いなと感じました。
自分の別作品 ドッペルゲンガーでは、社会や、人との繋がりを毛嫌いした青年が、恋愛をし...振られる。そうして、パラレルワールドの自分を見た瞬間、行き過ぎた感情。
殺意を、抱き.....相手との、縁を切ろうとして...誤って、自分の命の紐を切ってしまい。パラレルワールドの自分と、今の自分が死ぬ。という行程があるわけですが...
この作品では、言葉が足りなすぎてほぼ、なにが書いてるか分からない小説だった(旧作の方)と思うので、何度も改稿しています。
自分なりの、ある一種の儀式をしていたように思いました。
人形というのを、一つの軸として...ウリちゃんの好きな人、オンナの人(お母さんでは無い)、ウリちゃん....その三人の縁という紐を繋ぐ。
コミュニティが、人形という形で出来上がる。それを、人形は、カゾクと称するわけです。
自分が、なぜ...この短編にそこまでこだわるのか...?
それは、自分の根幹だったから....かもしれません。
コミュニティに属する事への気持ち悪さ。
恋愛という、紐を結ぶ行為への.....嫌悪感。
または、もう一度、繋ぎ合わせたいという願望かもしれません。
自己分析に近いものになるので、気持ち悪いものがありますけど....縁という名の紐....これからも、題材にしていくかもしれませんね。
お読み頂きありがとうごさいました。