第2話
朝食を食べた後、ルヴィアーノは冒険者ギルドへと向かって歩いていた。
ルヴィアーノ達が住んでいる街は、コルスタッドという、シオーネ王国の中でも、辺境と称される程の田舎にある街である。
そんな街中にある冒険者ギルドは、魔物の処理をすることが多く、また、魔物の反乱いわゆるスタンピードに即座に対応が出来るよう、森からすぐに来れる街の北門の近くにあった。
辺境の街というものの、街の規模感的には王都に匹敵する程には広かった。しかし、ルヴィアーノの家が冒険者ギルド寄りにあったため、それほど時間は掛からず、剣と盾が描かれた看板のある冒険者ギルドに辿り着いた。
扉を開いてギルド内に入ると、まだ早朝であるにもかかわらず、受付には多くの人が並んでおり、大層賑やかであった。
そんな光景には目もくれず、慣れた様子で、人の並んでいない受付に向かった。
その受付では、顔に傷のある強面のおっさんが、眉間に皺を寄せて座っている。
「ダンさん、おはようございます。」
「…………おう。」
「今日も迷いの森で薬草採取しようと思ってるんですけど、常設依頼の他に草系の依頼はありますか?」
「お前な〜、俺に聞くんじゃなくて、あそこにある依頼板を見てこいよ。それに、聞くんだとしても、なんで毎回俺に聞きに来るんだよ。」
「あのですね、来る度に毎回言ってますけど、僕があのごった返してる依頼板見に行っても、見えるわけないですよね?それに、複数の受付のうち、空いている所に来るのは、当たり前でしょう?」
通常、冒険者ギルドで依頼を受ける場合、入口から見て左にある大型の依頼板に表示されている依頼内容や依頼番号、受注状況が"未"であることを確認した上で、自分のギルドカードに依頼番号を入力すれば、依頼を受注することが出来る。
しかし、依頼番号等を確認するため、依頼板の前が人で溢れかえり、今回の様に朝の時間帯であれば余計に、依頼板を見ることが難しい。
したがって、依頼板を見ることの出来ない、又は美人な受付嬢と話がしたいという人が受付に並ぶということが常態化している。
「………(ったく、なんでコイツは毎回)…………はぁ。分かった、やってやるよ。」
「はい、お願いします。」
「………え〜と〜…………迷いの森でEランクのお前が受けられる依頼は、受注前のものだと、この辺りだな。」
ダンはそう言いながら、ルヴィアーノの前に、いくつかの依頼を表示させた小型の依頼板(現代でいうタブレットサイズのもの)を差し出す。
そこに表示されていたのは、
・毒消し草の採取(20本)
・眠り草の採取(10本)
・痺れ草の採取(10本)
・薬草採取の手伝い(半日〜一日)
であった。
ちなみに、冒険者ギルドのランクは、S、A、B、C、D、E、Fの7段階あり、Sは人外の強さを持ち、Aは常識で図れる強さ、Bがベテラン、Cが中堅、Dが1人前、Eが新人、Fが見習いと定義付けられており、ダンが先に発言したとおりルヴィアーノはEランクである。
また、ギルドカードもランクによって色分けされており、上から黒、金、赤、青、緑、黃、白となっている。
「なるほど………因みに、この"薬草採取の手伝い"ってなんですか?」
「あん?ちょっと待ってろ………………」
ダンが依頼板を自分の手元に戻して操作する。
「………………依頼書に書いてある限りだと、常設で採取されて薬師ギルドを経由してくる物だと新鮮さが足りないから、薬師が直接採取しに行きたいってことらしいな。まあ、その護衛兼採取の手伝いって感じだな。一応言っとくと、迷いの森の浅いところって条件付きで依頼を出したみたいだから、Eランクでも受けられるぞ。」
「そうなんですね……………いや、止めときます。他の採取依頼は受けますので、依頼番号を教えて下さい。」
「はいよ。」
ダンは、先程の依頼を再検索して、依頼板をルヴィに見せる。
「ありがとうございました。」
「まあ、気負わずに頑張れや。」
「はい。行ってきます。」
そうして、冒険者ギルドで依頼を受けたあと、ルヴィアーノは迷いの森に向かうのであった。