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第3次パワフル転生野球大戦ACE  作者: 青空顎門
最終章 転生野球大戦編

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285 イタリア代表チームの来日と新たな隠しスキル

 その日の朝。

 俺達はフォスフォライトスタジアム那覇近くのホテルをチェックアウトし、特別強化合宿後半戦の練習拠点となる琉球ライムストーン球場に向かった。

 事前公開されているスケジュール通りなので、スタンドは変わらず満員御礼。

 日中は多くの観客が見守る中、軽めのメニューを消化した。

 この琉球ライムストーン球場もまたフォスフォライトスタジアム那覇と同じように、今回の特別強化合宿に合わせて最新設備に全面改修されている。

 そのおかげもあって、前半戦と変わらない感覚で練習することができていた。


「……愛知ゴールデンオルカーズも棚ぼたね」


 それに対する美海ちゃんの感想はこれ。

 春季キャンプで利用予定の球団を指し、フォスフォライトスタジアム那覇を本拠地とする沖縄クリアオーシャンズに対するコメントと同じ内容を口にしていた。

 まあ、国の金で最新設備を導入できるとなれば然もありなん。

 美海ちゃんのは100%冗談だが、やっかみを受けても不思議ではない。

 とは言え、設備だけあったところで使いこなせなければ宝の持ち腐れだ。

 しっかり有効活用することができてチームのレベルアップを図ることまでできたなら、その部分に関しては彼ら自身の功績と数えてもいいだろう。

 いずれにしても。


「明日からの練習も恙なくできそうでよかったっす」


 倉本さんがそう満足したように。

 実際、琉球ライムストーン球場の使用感は悪くなかった。


 そんなこんなで後半戦初日の練習をこなした後は、まず貸し切りバスで全員揃って最寄りの新しい滞在先に移動してチェックイン。

 このホテルには前はなかった大宴会場があったことに加え、移った初日ということもあって選手とコーチングスタッフが一堂に会して夕食を取ることになった。

 それがつい先程解散し、ようやく自由時間となったのが今だ。

 俺は部屋に戻る前に軽く【好感度】稼ぎをしようとしていたのだが……。

 丁度そのタイミングでロビーに置かれたテレビに映し出されたのが、特別強化試合最初の対戦相手であるイタリア代表チームが来日したニュースだった。


「噂には聞いてたけどよ。マジで女性比率が高過ぎんな」

「ええ。30人中12人ですからね……」


 近くにいた黒井選手の呟きに同意するように言いながら軽く補足する。

 イタリア代表チームは割合で言えば40%が女性選手。

 日本代表はあーちゃん達3人で10%なので実に4倍だ。

 プロ野球選手全体の男女比からすると異常値としか言いようがない。

 あーちゃん達がプロになった時も割と物議を醸していた訳だから、イタリアの世論はかなり大変なことになっていたに違いない。

 しかし――。


「イタリアの……スクデットリーグだっけ? の成績上位に全員入ってんだろ?」

「らしいな。まあ、そうでもなきゃ代表選手になんてなれねえだろうけど」


 無責任な外野の発言は、最終的に実力で全て捻じ伏せられたのだろう。

 トッププロリーグで数字を出されてしまったら、認めない訳にはいかない。


 まあ、勿論。

 成績順に上から招集すれば必ず上手く行くってものでもないけどな。


 そんな単純な話だったら誰も苦労はしたりはしない。

 野球はチームスポーツ。

 海峰永徳みたいなのがいたり、他の男性選手が変に拗らせてしまったり。

 能力があってもチームとして機能せず、下手したら空中分解する可能性もある。

 監督やコーチ、それと通常通り設けられていればキャプテンの手腕が重要だ。


「女性選手12名の内訳は野手は7人。投手は5人。それに加えて同じ球団から2人の男性選手が選ばれているらしい。合計14人。偏りが酷いな」

「そりゃWBWに挑むってのに、全球団から満遍なくとか配慮してらんねえだろ」

「彼女らが所属するキウーザ・カネデルリは、昨シーズンの村山マダーレッドサフフラワーズよりも突出した成績を収めていたみたいだからね。是非もないよ」


 正に岩中選手の言う通りで。

 かの球団はイタリアトッププロリーグで無双していた。

 当然のイタリアNo.1で勝率は9割7分。

 レギュラーシーズンでは負けが1桁しかない。

 村山マダーレッドサフフラワーズ以上にゲームのような数字を残していた。

 ちなみに、負けは数合わせ的な男性の先発投手が絶不調でポカをした時だ。

 更に補足すると、女性投手5人の内訳は先発4、抑え1となっている。

 彼女らはシーズン序盤に下部組織から昇格してきた選手でもあった。


「とは言え、1番ヤバいのはあの彼ということでしたが……」


 山崎選手の視線の先。

 画面が変わって件の彼が映し出される。


 ルカ・デ・ルカ選手。

 海外で頭角を現した選手を調査して貰った際に、我らがインターンシップ部隊がピックアップした中にいたイタリア生まれのイタリア人だ。

【マニュアル操作】と【離見の見】を持つ俺と同じ転生者でもあるのだが……。


「は?」


 そんな彼の姿を目にして、俺は思わずポカンと口を開けて呆けてしまった。

 練習とホテルの移動でニュースを見る暇もなく、来日した時の映像を目にしたのは正にこのタイミングが初めてだった。

 最新のステータスを確認するのも数ヶ月振り。

 正直なところ、ルカ選手も既にカンストしている上にスキルも一通り網羅しているため、そう目立った変化などあるはずがないと思っていたが――。


「何だ、これ」


 表示された内容を目にして、ついそんな声を漏らしてしまう。


「しゅー君? どうしたの?」


 すぐ傍でピッタリと当たり前の顔で俺に寄り添っているあーちゃんがそれを聞き逃すはずもなく、彼女は軽く顔を覗き込むようにしながら問うてきた。

 しかし、これはステータスやスキルに関わる内容。

 おいそれと教えられるようなものではない。

 さて、どう説明したものかと考え込んでしまう。

 そうしていると、彼女はテレビに視線をやって小さく首を傾げた。


「この選手……陸玖ちゃん先輩達が言ってた?」


 ニュースの内容そのものには余り興味がない様子だったマイペースなあーちゃんだが、俺の呟きを受けて彼に意識の焦点を合わせたようだった。


「確か、女たらし」


 その覚え方はどうかと思うが、否定することはできない。

 彼も転生者として当然のように【マニュアル操作】と【離見の見】以外の【生得スキル】を2つ持っているが、そのどちらもがそれっぽいものだからだ。

 まず1つ目。【プレイボーイ】。

 もう名前からしてアレだ。

 効果もまた『チームメイト、またはバフの対象に選べる【関係者】に含まれている女性の人数に応じて自分のステータスにバフがかかる』という象徴的なもの。

 チームに女性を加えているのは正に自分を強化するためでもあるだろうが、こんなピーキーなスキルをわざわざ取得している時点で女好きな性格が滲み出ている。


 2つ目は【パトロネージュ(対女性)】。

 効果は『チームメイト、またはバフの対象に選べる【関係者】の女性に対し、自身のステータスと自身に対する好感度に応じたバフをかける』というもの。

 この効果によって彼のチームに加わった女性は、男性顔負けどころか遥かに上回るような活躍を見せることができていたようだ。

 それこそホームラン数も含め、男性選手を大きく引き離している。

 割と細身の女性がバカスカ打つ姿は、ちょっと非現実的ですらあった。


 というところまでは一応既知の情報。

 問題なのはここからだ。


「しゅー君?」


 あーちゃんに繰り返し呼びかけられるが、頭の整理が追いつかない。

 ルカ選手の【取得スキル一覧】には、以前はなかった【隠しスキル】が2つ。

 その内の1つに関しても、まあ、別にいい。

【外国語理解(野球)】なる【隠しスキル】だが……。

 効果は『球場限定で言語を同じくしていない者と意思疎通することができる。このスキルを持つ者同士は球場外でも効果を発揮する』というもの。

 メキシコ代表チームの転生者たるエドアルド・ルイス・ロペス・ガルシア選手も持っていたし、別にステータスに影響を与えるようなものではない。

 便利だなとは思うものの、それだけだ。


 だが、もう1つの【隠しスキル】。

 これこそが動揺の原因だった。


「ひ、【比翼連理】?」

「……しゅー君とわたしのこと?」


 思わず口の中で読み上げてしまった言葉に反応し、あーちゃんが首を傾げる。

 この流れで唐突にそんなことを言うはずがないけれども、とりあえず彼女に対しては「ああうん」と適当に応じておく。

 ただ、あーちゃんには【以心伝心】がある。

 そうではないと察してしまっただろう。

 だから、俺の方から彼女の手を取って恋人握りで誤魔化しにかかる。


「ん」


 対するあーちゃんは誤魔化されてあげると言わんばかりの見透かしたような目をこちらに向けてから、俺の手を握り返して腕を組んできた。

 そんな彼女に苦笑しつつ、意識を彼の【隠しスキル】に戻す。

 名称は俺が口にした通り【比翼連理】。

 効果は『真に心を通わせた伴侶とスキルを共有する。重複しているスキルは効果が1.5倍になる。スキルの重複は最大2つまで』というものだった。


 このスキルを持つのはルカ選手ともう1人。

 彼の隣を歩く女性選手のステータスにも、この【隠しスキル】の記載がある。

 更に1人1人確認していくと、同じものを持っている女性選手が後2人程いた。


「いや、何でだよ」


 思わず小声で突っ込む。

 あーちゃんはこれもスルーしてくれたが、それはともかくとして。

 オタク脳故か、真っ先にルカ選手起点で女性3人のハーレム状態と認識してしまって突っ込みを口にしてしまったけれども、組み合わせはそれだけとは限らない。

 ルカ選手と隣の女性。

 残る2人の女性。

 それぞれ別々に関係を構築している可能性もなくはない。


 いや、そんなことはどうでもいい。

 どちらでもいい。

 どうやって【比翼連理】なる【隠しスキル】を取得したのか。

 それが問題だ。

 発生条件は、スキル効果にもあるように伴侶と真に心を通わせることとある。

 にもかかわらず、俺達の【スキル習得画面】にはどこにも記載がない。

 あるいは、何か隠された特別な条件でもあるというのか……。


 この【隠しスキル】が持つ破格の効果に対する警戒以上に。

 何故、俺とあーちゃんでは取得することができないのか。

 そんな疑問が俺の頭の中を埋め尽くしていた。

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