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第3次パワフル転生野球大戦ACE  作者: 青空顎門
第3章幕間

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261 色々補足

「はー、それにしても私が日本代表だなんてね……」

「みなみー、そればっか」

「し、仕方ないでしょ!? 国を背負って戦うことになるのよ!?」

「だとしても、別にやることは変わらない。いつだって、どこでだって。わたしだったら、しゅー君の助けになれるように頑張る。それだけ」

「茜っちはブレないっすねえ」


 落山さんが日本代表監督として緊急記者会見を開いた翌々日のこと。

 時刻は12時過ぎ。

 今日も秋季キャンプの昼休憩時間のタイミングだ。

 場所はいつもの練習球場のケータリング室。

 そこで、一昨日から数えて何度目になるか分からない会話が繰り返されていた。

 しかし、今日は少しばかり様子が違う。

 昨日まではここで終わっていたが、どうやらまだ続くようだ。


「けど、昨日の夕方のニュース番組見た? 失礼しちゃうわよね」

「えっと、耕穣小学校に取材に行ってた奴?」


 昇二が当たりをつけて問うと、美海ちゃんは不満顔のまま大きく頷いた。


「あのインタビュアー、秀治郎君のことばかり聞いてたっすね」

「最後の最後にちょっとだけわたし達のことにも触れてたけど――」

「選ばれた私達よりも、正樹君に割いた時間の方が大きかったのがホントもうね」

「しかも、内容も酷かったっすからね。明暗分かれたとか何とか」


 言いながら、倉本さんは黙々と昼食を取っている正樹に視線を向ける。

 対して彼は「ふん」と全く興味なさそうに鼻を鳴らした。


「日本シリーズで満塁ホームラン2本打ってるのにあの言い草だものね」

「一応、その後に今後の復活を期待みたいなこと言ってフォローしてたけど」


 隣の兄の顔色を窺いながら、昇二自身もそれこそフォローするように言う。

 それでも、正樹は我関せず。

 彼はその辺りについて、既に自分の中で結論を出してしまっている。

 だからだろう。

 来シーズンの活躍で周りの雑音を全て黙らせる。

 それ以上でも以下でもないのだ。


「でも、すなお先生、変わってなかった」

「そうね。何だか懐かしかったわ」

「小学校の頃の担任の先生だったんすよね?」

「ええ。夢を大切にしてくれる先生だった。……あれから遠くまで来たものね」

「会おうと思えばすぐ会いに行けるぐらい近い」


 しみじみと呟いた美海ちゃんに対し、真顔でズレたことを言うあーちゃん。

 よく知らない他人が見ると本気か冗談か分かり辛いだろうが、そこは幼馴染だ。


「茜は全くもう。比喩よ、比喩」

「ん。分かってる」


 2人は柔らかい表情で軽口を叩き合う。


「でも、そうね。茜の言う通り距離は近いんだし、今度会いに行ってみる?」

「それも悪くない」

「野球が随分盛んになってたみたいだし、皆で道具を寄贈するのもいいかもな」

「いいわね。それ」

「しゅー君、ナイスアイデア」


 グッと親指を立てるあーちゃん。

 小学校時代を思い出してか、いつもの2割増しぐらい和気藹々とした雰囲気だ。

 正に幼馴染のノリだな。

 しかし、そこに水を差すように。


「インタビューと言えば、アイツのところにも行ってたみたいだな」


 そう新しい話題を振ってきた幼馴染の1人である正樹に対し、美海ちゃんは和やかな笑顔から打って変わって不機嫌そうに顔をしかめた。

 名前を言ってはいけない存在のような扱いを受けているあの人というのは――。


「ああ、海峰永徳っすか」


 倉本さんが口にした通り。

 かつては日本一のバッターと呼ばれたこともある彼のことだ。


「そう言えば、選ばれてなかったっすね」


 しかし、彼女の中ではもう忘れ去られた存在になっていたらしい。

 今ようやく気づいたとばかりにポンと手を叩く。


「2部リーグから最後まで戻ってこられなかったんだから当然」


 あーちゃんも心底どうでもよさそうに言う。

 ……丁度いいタイミングかもしれない。

 ここらで今回落山さんが発表した日本代表メンバーを纏めておこう。


 ポジション 背番号   名前      所属

  投手   11  岩中 将志   宮城オーラムアステリオス

  投手   12  佐々藤隆浩   横浜ポートドルフィンズ

  投手   13  西牧 文久   埼玉セルヴァグレーツ

初 投手   14  斉木 弘人   大阪トラストレオパルズ

  投手   15  野上 浩樹   東京プレスギガンテス

初 投手   16  浜中 美海   村山マダーレッドサフフラワーズ

初 投手   17  大松 勝次   東京プレスギガンテス

初 投手   18  磐城 巧    兵庫ブルーヴォルテックス

初 投手   19  野村 秀治郎  村山マダーレッドサフフラワーズ

  投手   21  武藤 久海   札幌ダイヤモンドダスツ

  投手   24  前野 学    広島オリエンタルバハムーツ

  投手   33  藤柳 晃太郎  大阪トラストレオパルズ

  投手   77  米本 哲伸   兵庫ブルーヴォルテックス

  投手   92  藤野 裕哉   岡山ローズフェザンツ

  捕手    1  城崎 智司   福岡アルジェントヴァルチャーズ

  捕手    8  古茂 中司   愛知ゴールデンオルカーズ

初 捕手   22  鈴木 茜    村山マダーレッドサフフラワーズ

初 捕手   39  倉本 未来   村山マダーレッドサフフラワーズ

  内野手  20  黒井 力皇   福岡アルジェントヴァルチャーズ

  内野手  23  白露 尊    神奈川ポーラースターズ

初 内野手  25  岡原 和徳   東京プレスギガンテス

  内野手  32  登坂 聖也   千葉オケアノスガルズ

  内野手  35  佐藤 世界   静岡ミントアゼリアーズ

  内野手  36  大笠 勝大   北海道フレッシュウォリアーズ

  内野手  80  田岡 影秋   大阪トラストレオパルズ

  外野手   0  飯山 鉄郎   東京ラクトアトミクス

初 外野手   2  瀬川 昇二   村山マダーレッドサフフラワーズ

  外野手   7  山崎 一裕   宮城オーラムアステリオス

  外野手  10  山  友義   兵庫ブルーヴォルテックス

  外野手  99  畑口 荘衛   兵庫ブルーヴォルテックス


 以上30人が落山さんに選ばれた日本代表メンバーだ。

 当然、ピッチャー14人、キャッチャー2人以上の登録義務は満たされている。

 しかし、見ての通り海峰永徳選手の名前はどこにもなかった。


 彼は2部リーグに落ちて以降、結局シーズン終了まで調子が戻らなかった。

 怪我のトラウマに苦しめられてしまった様子だ。

 恐らく、来シーズンも厳しい状況に立たされ続けることになるだろう。

 と言うのも、海峰永徳選手は2部リーグでバッティングが崩れている間に【マイナススキル】をいくつか追加で取得してしまっているからだ。

 例えば【得点圏×】とか【追い込まれると弱い】とか。

 挙句の果てには1部リーグに比べて試合で得られる【経験ポイント】が減少しているせいもあり、ステータスが若干目減りしてしまっている。

 完全に負の連鎖に陥ってしまった形だ。

 更には埼玉セルヴァグレーツの2部チームもぶっち切りの最下位になってしまっており、海峰永徳選手疫病神説がファンの間で強固になっているのも逆風だろう。

 球団としても、おいそれと1部リーグに戻すことができない状況になっている。

 このままでは坂道を転げ落ちるようにドン底まで……。


「しゅー君」


 と、あーちゃんが真剣な声色で俺を呼びながら真っ直ぐに見詰めてきた。

 どうやら【以心伝心】によって、微かな感情の揺れに気づかれたらしい。

 しかし――。


「……大丈夫だよ。俺にはあーちゃんがいるからな」

「ん。分かってるならいい」


 そう言って微かな笑みを浮かべるあーちゃんに、自然と俺の表情も和らぐ。

 所詮は小市民。普段は波風1つ立たない不動心とは行かない。

 だが、彼女のおかげで必要以上にその感情に引きずられたりすることはない。

 やるべきことも分かっている。

 とにもかくにも「プロ野球選手野村秀治郎」を全うするのみだ。

 その気持ちもまた【以心伝心】であーちゃんに伝わっている。

 優しく頷く彼女の姿からそれが分かった。


「はいはい。イチャイチャしないの」


 呆れたように、しばらく見詰め合う形となった俺達を窘める美海ちゃん。

 それから彼女は軽く嘆息すると、話を軌道修正した。


「合計30人。おおよそこのメンバーでWBWも戦うことになるのね」

「まあ、少なくとも1人は正樹と入れ替わることになるだろうけどな」

「それが僕達じゃない保証もないよね……」


 今シーズンの成績だけで言うなら、まずあり得ないことではある。

 しかし、国際大会は短期決戦。

 決勝トーナメントに至っては負けたら終わり。

 そんな厳しい戦いに適応し、相乗効果を生むことのできる選手が求められる。

 勿論。そうは言っても、実績重視で当時の海峰永徳選手のように若干素行に問題があっても日本代表に選ばれる場合もあるけどな。

 落山さんであれば、そういうことはまずしないだろう。

 つまるところ、日本の勝利のために同じ方向を向いて戦うことができないような者はメンバーから外されてしまう可能性もあるということだ。

 決して数字を鼻にかけたりすることなく、チームのために自分ができる最善を必死に考えて協調性を持って臨まなければならない。

 今回選ばれたからと言って、気を緩めることはできない。


「でも、海外代表と特別強化試合なんて、一体どことやるのかしら」

「アメリカ代表は……さすがに無理っすよね?」

「そりゃな。そもそもアメリカ側にメリットがないし、受けてくれないだろう」


 少なくとも現時点では。

 レジェンドの魂を持つアメリカ代表選手達には熱い戦いをしたいという欲求が見え隠れしているが、WBWは国家の大事。

 こればかりは選手の一存で決められるようなことではない。


「日本だってそう」

「そうだな。俺達にとって有意義な相手じゃないと意味がない。その上でデメリットも比較的少ない。そんな国を選出しているはずだ」

「有意義で、デメリットが少ない……」

「とりあえず、予選で当たる同じアジア地域の国はなさそうっすね」

「ともすると手の内を明かすだけになりかねないからな」

「デメリットが少ないのは予選で当たらない別の地域。そして有意義なのは――」

「決勝トーナメントに残るか、それに準じた成績を収めてるところってことよね」


 そう考えるのが妥当なところではあるだろう。

 しかし、現日本代表監督はあの落山さんだ。

 上辺だけの生半可な相手を用意してくるはずがない。

 なるべく過去の実績よりも今の実力を見極めようとするはずだ。

 そう考えると、1つの可能性が脳裏を過ぎる。


 もしかすると。

 転生者を擁する国との試合が組まれてる……なんてこともあるかもしれないな。

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