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第3次パワフル転生野球大戦ACE  作者: 青空顎門
第1章 雌伏の幼少期編
31/388

028 美海ちゃんの野望

 出席番号順で2人組。

 学外野球チーム所属組の5人が全員男なので必然的に女子と組む確率が上がる。

 見ると、あーちゃんも女の子と組んでいた。


 ……あーちゃん、ちゃんと手加減できるだろうか。

 スキルによる加算分も含めれば、今のあーちゃんはあの3人よりも大分ステータスが高いからな。

 少しだけ心配だ。


「しゅーじろうくん! まじめにやって!」

「っと、ごめんごめん」


 あーちゃんの意識を向けていると、浜中美海ちゃんに怒られてしまった。

 ボールはこっちにあるからな。俺が悪い。

 下手投げでふんわりと投げ返してやる。


「んっ!!」


 過剰に体を強張らせながらグローブを構える美海ちゃん。

 怖がってる感じじゃない。

 何と言うか、入れ込み過ぎて力が入っている感じだ。


「あ……」


 結果、グローブでボールを弾いて落としてしまう。

 さっきからこの調子だ。


「う~~」


 悔しそうに呻く美海ちゃん。

 別に小学校の体育なんだから、もう少し気軽にやってもいいと思うが……。


「えーっと、美海ちゃん? もっと肩の力を抜いた方がいいよ」

「だめ! ちゃんとやってじょーたつしないと! しょーらいのために!」

「お、おう……」


 凄い勢いで捲くし立てられ、軽く引く。


「えっと、キャッチボールが将来のためになるの?」

「やきゅーがうまくなることが!」


 うーん。

 何か噛み合ってないな。


「プロやきゅーせんしゅのおくさんになるには、やきゅーがすごくうまくないといけないの!」

「え、そうなの?」

「そうなの!」


 ホントかよ。

 一瞬疑うが、この世界のことを思えばあり得る話かもしれない。

 全く同じスペックの異性がいた場合、野球が上手な方が印象がいい。

 それは間違いなくて、その上でかなりのウエイトを占めていそうだ。


「だから、わたしはやきゅーがうまくなりたいの!」


 なら、まず学外の野球チームに入るべきでは?

 とも思うが、俺も別に入ってないしな。

 理由は色々あるが、最たるものは金がかかるから。

 それぞれ家庭には事情があるだろうし、どうしようもないこともある。


 何より【成長タイプ:マニュアル】の子は野球チームに入っても意味がない。

【生得スキル】【マニュアル操作】を持っていない限りは。

 まあ、その事実を認識できるのは俺だけだが。


「だから、まじめにやって!」

「…………分かった」


 必死な様子の美海ちゃんに表情を引き締めて頷く。

 そこまで頑張ろうとしている子供を無視できる程、大人げなくはないつもりだ。

 最初のキャッチボールでペアになったのも何かの縁。

 真面目に考えよう。

 彼女が本気なら、ステータスを操作することも含めて。


「えい!」


 上手投げで無理して投げたせいで、明後日の方向に飛んでいくボール。

 さすがに取ることはできないが、全速力で走っていって戻ってくる。

 で、ふんわりと投げ返す。

 けれど、捕れない。

 美海ちゃんはわたわたしながら足下に転がるボールを拾い上げる。

 そこから彼女が慌ただしく投げてきたボールは俺の頭上を越えていく。

 走って取ってくる。

 その繰り返し。

 他のペアを見ても俺だけ明らかに運動量が多過ぎる。

 ……何だか犬になった気分だ。

 まあ、トレーニングになるからいいけどさ。


「もー、なんで!?」


 何度やってもうまく行かず、美海ちゃんは地団太を踏む。

 ステータス上は最低限のキャッチボールぐらいできるはずなので、完全に気合が空回りしている感じだ。

 こんな精神状態じゃステータスの補正も利く訳がない。

 まずこれをどうにかしないと、ステータスを上げても逆効果だ。

 出力が上がる分、変な動きをして怪我をする危険性が高まりすらする。


 ……これは、体育の授業中だけで改善するのは難しいな。

 まずは自然体で練習に臨めるようにならないと。

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