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第3次パワフル転生野球大戦ACE  作者: 青空顎門
第3章 日本プロ野球1部リーグ編
300/388

241 レギュラーシーズン最終日と最終戦セレモニー

『放送席、放送席! 並びに山形きらきらスタジアムにお集まりの皆様!』


 ナイターで行われたホームゲームの終了後。

 通常であればヒーローインタビューで選手が呼ばれるタイミングだが……。

 今日に限っては、いつもと少しばかり趣が違っていた。

 と言うのも――。


『村山マダーレッドサフフラワーズは、本日の試合を持ちましてレギュラーシーズンの全日程を終了いたしました!』


 場内アナウンスが告げた通り、今日は村山マダーレッドサフフラワーズ、もとい私営イーストリーグのペナントレース最終戦だったからだ。

 しかも丁度いいことにホームゲーム。

 どの球団も本拠地最終戦では大体最終戦セレモニーを行う訳だが、リーグ優勝を果たした村山マダーレッドサフフラワーズは更に表彰式も予定している。

 その直前のお立ち台に誰が呼ばれるかは、試合での活躍に依らず決まっていた。


『本日は、1部リーグ昇格初年度にして初リーグ優勝へとチームを導きました尾高監督にヒーローインタビューにお越しいただきました!』


 インタビュアーの紹介の言葉に合わせて、尾高監督が恐縮したような表情を浮かべて帽子を取りながらスタンドの方へと何回か頭を下げる。

 それを受け、山形きらきらスタジアム全体から大きな歓声が上がった。

 最終戦も恒例の満員御礼だが、一際熱狂的なファンが来てくれている様子だ。


『まずは尾高監督。レギュラーシーズン最終戦も圧倒的な勝利で飾り、シーズン記録の145勝という金字塔を打ち立てました。今の心境は如何でしょうか』

『正直なところ。でき過ぎと言いますか、私個人としては椅子に座っていたら特大の栄誉を頂いた心持ちです。全てにおいて選手達のおかげだと思っています』

『では、レギュラーシーズンを終えた今この瞬間、そんな選手達に何か言葉をかけるとすればどのようなものになりますか?』

『そうですね。とにかくありがとうと。ご存知の通り、私は現役時代最後まで1部リーグでプレイできなかった者です。監督としても至らぬ身ですが、そんな私を彼らが盛り立ててくれたおかげで、今この場に立つことができています』

『尾高監督らしいお言葉ですね。村山マダーレッドサフフラワーズはリーグ優勝を果たし、これからプレーオフに挑むことになりますが――』


 ヒーローインタビューはそのまま更に続き、様々な質問を投げかけられる。

 だが、尾高監督は全体を通して謙虚な発言に終始していた。

 本心からそう思っていることが傍から見ていても分かる。

 割と普段からも言っていることでもあるので尚更だろう。

 そういった部分が一部界隈では批判ポイントにもなっているのだが……。


「今の村山マダーレッドサフフラワーズでは余計なことをしないのが大正解」

「それは全く以ってそうなんだろうけど、それをそのまま素直に受け入れることができるのが尾高監督の凄いところよね」

「ウチだったら絶対に我を出したくなるっす」


 最後に倉本さんが言った通り、立場を得れば権威を振るいたくなるもの。

 そこで波風を立てないように自分を抑えることができるのは1つの力だ。

 勿論、強権を振るわなければならないようなチームもあるだろうが、転生者などという異分子が紛れ込んでいるここにはやはり尾高監督のような人が合っている。

 そうでなければ、ここまでスムーズに来ることができなかったのは間違いない。


「っと。ほら、整列しないと」

「ん」


 そんな尾高監督に対するインタビューが終わり、次なる催しのために全員で内野の3塁から1塁に広がるように横一列で並ぶ。


『これより、私営イーストリーグ優勝球団表彰式を行います』


 リーグ優勝のそれは往々にして優勝決定日とタイミングをズラして行われるものだが、今回はマジックナンバーが0になってから既に1ヶ月以上も経っている。

 史上最速のリーグ優勝に対して表彰式が最終戦。

 間が空いた期間でも確実に歴代1位だろう。

 ここまで引っ張ったのは、あるいは改めてリーグ優勝した事実を再認識させることでプレーオフへのモチベーションを盛り上げるためでもあるのかもしれない。


『初めに村山マダーレッドサフフラワーズ尾高監督に日本プロ野球コミッショナーより私営イーストリーグレギュラーシーズン優勝ペナントが授与されます!』


 私営イーストリーグはセレスティアルリーグと同じように優勝ペナントがチャンピオンフラッグを兼ねている。

 そのせいもあってか、尾高監督は大きな二等辺三角形状の優勝旗に歴史の重みを感じているように恭しく受け取っている。

 かなり気後れしているのが分かる。

 繰り返しになるが、現状この球団にとって尾高監督は最適な監督だ。

 この場で表彰を受ける資格は十分にある。

 そう思っているのだが、尾高監督は優勝ペナントをすぐにあーちゃんに渡した。

 まあ、それはまだ表彰が続くからでもあるけれども、ちょっと素早過ぎる。


『続いて優勝トロフィーが授与されます!』


 こちらもパーマネントリーグ寄りの勝利の女神像が中央にあしらわれたものではなく、3本のバットが杯を支えるような形のもの。

 それを受け取った尾高監督は少し観客に向けて掲げると――。


「これは君が持つべきだ」


 またすぐに俺のところに来て、そのトロフィーを差し出してきた。

 今度はもう後に別の表彰が控えている訳ではないはずだが……。


「尾高監督、少しは誇って下さい」

「私の誇りは、トロフィーよりも君の野球人生に関わることができることだよ」


 ノータイムでそんなことを言われ、ちょっと反応に困ってしまう。

 しかし、今はセレモニーの途中だ。

 プロ野球選手野村秀治郎として行動しなければ。

 そう思いながら、受け取ったトロフィーを天高く掲げる。

 すると、歓声が一層大きくなった。

 ファンファーストであれば、まあ、こうするのが正しいか。


『これより1年間ご声援を頂いたファンの皆様への感謝を込めて監督・コーチ・選手が場内を一周いたします。皆様、熱いご声援、誠にありがとうございました!』


 結局最後まで陰に徹しようとする尾高監督に苦笑しつつ、俺はあーちゃんとトロフィーを2人で持つようにしながら先頭を歩き出した。

 世間受けを考え、優勝ペナントの方は美海ちゃんと倉本さんに預けて。

 彼女達は昇二を含む何人かの選手達と一緒に優勝ペナントを広げて後に続く。

 そのまま時折観客に手を振りながら、フェンスを縁取るように一周していった。


「これでレギュラーシーズンも終わり。後はプレーオフ」

「そうだな」

「けど、まだ出揃ってない」


 レギュラーシーズンの順位は162試合の積み重ねによるもの。

 故に、シーズン最終試合は既に消化試合に成り果てていることがほとんどだ。

 それは3位までプレーオフに進出できる制度があっても変わらない。

 村山マダーレッドサフフラワーズが所属する私営イーストリーグも早い段階で順位が確定して来季に向けた戦いに移行したり、引退試合を行ったりしていた。

 そんな中で。唯一私営ウエストリーグだけはそうできる余裕もなく、シーズン最終盤でもバチバチの真剣勝負を繰り広げていた。

 その理由は昨日までの順位表を見れば分かる。


【私営ウエストリーグ】

順位      チーム名       試合  勝利  敗戦 引分 ゲーム差

 1 岡山ローズフェザンツ     160  68  88  4  M1

 2 宮崎サンライトフェニックス  162  69  90  3   0

 2 堺ノーブルオーロックス    162  69  90  3  0.5

 4 京都フォルクレガシーズ    161  68  89  4   0

 5 奈良キーンディアーズ     162  69  91  2  0.5

 6 熊本ヴァリアントラークス   161  68  90  3   0


「奇跡的。あるいは、作為的?」

「まあ、確かにでき過ぎてる感はあるけどな」


 残念リーグとも称されている私営ウエストリーグは、あーちゃんの疑いの気持ちも少し分かるぐらいに芸術的なことになっている。

 全球団借金だけでは飽き足らず、未だに順位が確定していない。

 ただ1チーム。奈良キーンディアーズのみプレーオフ進出の可能性が完全消滅してしまっているが、そこだって4位の可能性は未だに残っている。

 逆にプレーオフ進出が確定しているのは、直接対決の勝利数の関係で2位の宮崎サンライトフェニックスのみという歪な状態でもあった。

 もし岡山ローズフェザンツが2連敗してしまったら、160試合を経て現在1位の球団がプレーオフ進出を逃す事態になる。

 ちなみに、明日行われる岡山ローズフェザンツ対熊本ヴァリアントラークスの試合が全てのリーグにおけてシーズン最終試合となる。


 正直、面白過ぎる状況だ。

 不名誉極まりなくもあるので、私営ウエストリーグには申し訳ないけれども。

 しかし、こんな混沌とした状態を作為的に作るなど、そもそも無理な話だろう。

 実際、各球団の起用法を見ても全力以外の何ものでもなかったからな。

 昨日まではどの球団もプレーオフ進出の可能性があったのだから当然だけど。


「イベントが終わったら速報を見ないとな」

「ん」


 そして翌日の夜。真の意味でレギュラーシーズンの全日程が完了し……。

 遂にプレーオフ進出チームが全て出揃ったのだった。

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