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第3次パワフル転生野球大戦ACE  作者: 青空顎門
第2章 雄飛の青少年期編
122/388

112 対照的な立ち上がり

 攻守交替。

 1回裏。東京プレスギガンテスジュニアユースチームの攻撃。

 エースで4番の磐城君が、満を持してマウンドに上がる。

 打席に立つ時は左だが、投げる時は右だ。大松君もそう。

 元々は2人共右利きだったが、バッティングに関しては左に矯正したのだ。


 出会った当初【経験ポイント】が割り振られていない【成長タイプ:マニュアル】だったこともあり、難易度はそこまで高くなかった。

 フォームを整えながらステータスを上げたことで補正がうまく効き、まるで元から左利きだったかのように自然なスイングができるようになっていた。

 本当は投げる方も左にしたかったが……。

 2人共内野を守ることもあるため、泣く泣く右投げのままだ。


 ちなみに昇二も複数の守備位置を守ることを考え、同じように右投げを維持。

 バッティングの方は両打ちができるように育成しているが、これは余談だな。


 投球練習のラスト1球を受け、ボール回しをして磐城君にボールが戻る。

 まずは相手の1番バッター、高橋幸助君が左バッターボックスに入った。

【戦績】を見る限り、ナチュラルボーン左バッターだ。

 言わば天然ものだな。

 そんな彼がバットを構えるのを、キャッチャースボックスから横目で流し見る。


 今回は、守備練習のために打たせて取るとかの舐めプはなしだ。

 勿論、状況によって打ち取る方向でリードをすることもあるだろうけれども。

 磐城君を神童としてより広く強く印象づけるためのパフォーマンスとして、基本的には全打者三振を狙っていくつもりだ。

 そのためにもバットに当てられたら負け、ぐらいの意識で臨もうと思っている。


「プレイッ!」


 審判のかけ声でボールインプレイとなり、それを受けて磐城君にサインを送る。

 1球目。まずは軽く、外角低めにストレートから。

 首を振った正樹とは対照的に、磐城君は素直に頷いて振りかぶった。

 1番バッターの高橋君は、初回の初球を高確率で見逃すことが【戦績】から分かっている。なので、多少は甘くなっても問題ない。

 キャッチャースボックスから実際に様子を見た感じ、振る意思もなさそうだしな。

 この試合最初の1球でもあるので、磐城君の調子を見極める意図も込めてボール1個分ぐらい甘いところに要求しておいた。

 さて。今日の制球力の程は……。


――パアンッ!


 構えたところピッタリにコントロールされたストレートが、いい音を鳴らす。

 うん。いい球だ。しっかりと腕が振れている。

 磐城君も落ち着いているな。

 いつも通り。調子は悪くなさそうだ。


 勿論、投球練習で確認してもいる。

 しかし、ピッチャーというものは投球練習の時と試合が始まってからとでビックリするぐらい変わってしまう時があるからな。

 実戦にならないと一安心できない。


「ストライクッ!」


 何はともあれ、結果は思惑通り。

 高橋君はピクリとも動かず1ストライク。

 次はここだ。

 サインを送り、内角高めにキャッチャーミットを動かす。

 磐城君は迷わず頷くと、振りかぶって2球目を投じた。


「うわっ!?」

「ストライクツーッ!」


 フロントドアのシュート。

 正樹のツーシームよりも明らかに変化量が大きく、ほとんどデッドボールになるかという軌道から急激に曲がってストライクゾーンに入った。

 プロ顔負けの変化球に、高橋君は仰け反って見逃す。

 これでノーボール2ストライクだ。


「次」


 キャッチャーミットを外角に構え、今度はバックドアのスライダーを要求する。

 外・内・外の単調なリードだが、磐城君の変化球のキレと精度なら問題ない。

 むしろ彼のピッチャーとしての能力の高さが際立つだろう。


 そうして投じられた3球目は、あからさまに外のボール球になりそうな軌道から大きく変化して外角低めにクイッと入ってきた。

 高橋君はそれに気づいて慌ててスイングするが、もはや後の祭り。

 半端に振られたバットは空を切り、1アウト。

 ボールを3塁に投げ、内野でボール回しをさせる。

 遊び球なし。危なげなく3球三振。

 立ち上がりいい感じだな。


「次のバッターは、と……」


 2番打者の後田智明君。

 彼はアウトコースが比較的得意で、内角は少し苦手。

 真ん中から内側の高めも打率が余りよくない。

 その中で空振りの率が最も高いのは、インコース高めだ。

 サクサク行こう。


 1球目。内角低めにストレート。見逃し。1ストライク。

 2球目。フロントドアのスライダー。低めの球を見逃し。

 3球目。インハイにストレート。

 内外はストライクゾーンにギリギリ入っているが、ボール1個半ぐらい高い。

 ボール球だが、2球苦手コースの低めに続いた後で急に吊り球が来たことで後田君は思わず手を出してしまった。

 途中でバットをとめはしたものの、スイングの判定で三振2アウト。


 続く3番打者の松内道弘君は、落ちる球に弱い傾向がある。

 2球内外の低めの球で追い込んで、勝負球はフォークボール。

 崩れたスイングで呆気なく空振る。

 キャッチャーミットに到達する前に鋭い落ち方をしてワンバウンドしたが、俺のステータスとスキルならそうそう逸らすことはない。

 捕球してバッターにタッチし、3アウト。

 テンポよく、3者連続スイングアウトの三振でチェンジだ。


「磐城君。調子がよさそうだな」

「うん。いい感覚だった」


 ベンチに戻る途中で声をかけると、磐城君はどこかホッとした様子。

 バッティングの方で三振に終わっただけに、0点で抑えられて安堵したようだ。

 ピッチングからリズムを作り、打つ方にもいい影響が出てくれるといいな。


 2回の表。こちらの攻撃は7番からの打順。

 9番まではいつもの4人組の内の3人が名を連ねている。

 スタメンから外れている仁科さんにはスコアラーをして貰っている。

 一応は選手としても登録はされているので、いざという時は出場する可能性もなきにしもあらず、と言ったところだ。

 野球部の部員は増えているが、【経験ポイント】増量系のスキルの恩恵を長く享受していたおかげか、後輩達よりはステータスが上なのだ。

 陸玖ちゃん先輩の、講義という名の野球教室も長く受けているしな。

 まあ、俺達と比べてしまうと、残念ながら見劣りしてしまうけれども。


 正樹から見てもそのようで、1回表とは違う軽快なピッチングで3人をいとも容易く切って取っていった。

 初回は大分対照的な立ち上がりとなってしまったが、2回の表は三者凡退。

 ここからが本番といったところか。


 そして2回の裏は4番バッターの正樹からスタート。

 攻守を入れ替えて、新旧神童対決再び、だな。

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