隠し味
素朴な疑問だが、我に従う者を導く術を与えたのは誰だろう。存在が非存在へと変貌する瞬間、意識の変革を計らう者は誰だろう。
君との会話には僕は多少癒されていた。誰かに自分の心のありさまを明かすのは、救いでもあり恐怖でもあった。拒絶される恐れと、自分の精神状態の悪化を確認する恐怖。ただ、君が無口で真剣で、そしてある意味、他人に対して無関心であったことに僕は感謝している。自分の話していることをあまり真に受けず、流してくれることを僕は分かっていた。僕は純粋に会話の枠組みでどれほどの意思疎通が可能なのか、分かり合う概念自体に興味があった。不思議だよね、他人を理解しようとする試み。だって、自分自身すらろくに理解していないのに、なぜ他者が理解可能だと思うのだろうね。それでも、自分に関心がなければ、自然と他者に興味を持つものだと思う。少なくとも僕はそうだった。ただ、僕は他者を理解することで、最終的には自分を理解したかった。遠回りしているようだし、他人を目的達成の道具扱いしているようでもある。恐ろしい、自己満足の欲望は。君はある意味、僕のこのような愚かさを見抜いていたのかもしれない。それで僕の茶番に付き合ってくれていたのかも知れない。君は寛容な性格だったからね。なぜか僕は君と会うたびに、自分が少し楽になり、生に対して楽観的になる気分だった。僕は酒も飲まないし、外部的刺激も求めていない。自分の内側から自分を解放したいの。ただ、もしかしたら君との会話が僕にもたらした刺激は酒より強力だったかもしれない。
今日はスパゲッティを作った。トマトソースのやつ。隠し味に醤油を使うの。美味しくなる。それから、僕はやはりおかしくなっていると思う。闇に包まれながら、抵抗もせずに、やみと一体化するみたいなおかしさ。だけど、今日はスパゲッティの味と食後のアイスクリームに救われた日だった。単純で素朴な一日だった。君との会話が可能でないから、こうやって自分を誤魔化すしかない。




