表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

ドーナツ

私は何かに目覚めた記憶がある。自分の行動と理性が釣り合わない原因を探り、一体この現象をどのように説明できるのかと自分に問いかけた時だった。私は理解したのだ、自分の中の何かがスッと消えた。そして私は己の精神にかけられた鎖から解放された。それは心地よい感覚であり、悪夢の終焉でもあった。現実をはっきり見直す機会だったが、もう後戻りできない重みを持つ悟りでもあった。

次に自分の行動に異変を感じたのは、朝ごはんのドーナツを食べているときだった。私は相変わらず、いつも通りのコーヒーとドーナツの朝食を、ニュウースを聞きながら食べていた。味は覚えていないが、いつもの感覚だったことは記憶にある。そしてちょうど最後の一口を食べようとしたとき、私はまたも己の意識の変化に気が付く。突然現れた鮮明な記憶、景色、人々、そして私でない私が対応していた現実。私の中に眠っていた何かが目覚めたのだと、私は理解した。私は自分の異変を何とものないとは思はない。かと言って誰かに相談することもできない。別に理解を求めているわけではないが、己の状況を客観的に分析することが出来ないだけである。これはある種の精神病なのか、それとも別の物なのか。この世には現実も非現実も存在るするように、次元という概念も存在する。セミが住んでいる次元と、ネコが住んでいる次元は違う。同様に人が住んでいる次元も違う。ただ、同じ人間だとしても世の中の人は違う次元に住んでいる。年齢も文化も場所も関わりなく、生きる経験の濃さによる違う次元だといえばよいのだろうか。私はこの説明をずっと前から信じている。無論このような話は証明できないし、他人を見下すために作ったものではない。ただ、純粋に自分と回りを観測して辿り着いた答えだ。もしかしたらこの答は、私が住んでいる次元では通用するかもしれないが、またさらに上の次元に存在するものには幼稚な考え方かもしれない。ただ、ドーナツを食べていた私は、己の精神はある違う次元に辿り着いたことを理解した。それは突然ではあったが、歓迎にも値する出来事でもあった。私はいつも進化に対して肯定的である。進化はある種のゴールに近づく現象である。そのゴールというものが何かは分からない。

「それで、君は誰を憎んでいるのかい。誰を救いたいのかい。この世で何を変えたいのかい。答えてもらおうか」

「恐縮ですが、私は誰も憎んでいないのです。誰も救いたくもありません。世の中はこのままでいいのだと思います。特に私が関与しても何も良いことは起こりません。私は自分が非力な存在であることを十分に承知しています。その上で、自分の立場も十分に理解しています。私は在りのままの現状維持が世界のためだと思います。」

「非力でありながらよく語るね、君」

博士は相変わらず意地悪な質問をし、私を悩ませた。今朝、私の身に起きたドーナツ事件について、博士の意見を聞こうとしたのだが、これはまたなぜか博士の都合の通り会話が進んでしまった。そして博士は私の目を少し見つめた後に、ゆっくりと落ち着いた声で私に質問した。

「君は瞑想に興味があるかい」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ