第二話
その「牧場」というところは。
周囲をぐるりと、フェンスが取り囲んでいて。
フェンスの内側の広大な敷地は、
よく手入れがされた芝生地になっていて。
牛舎(のように見える建物)も、
朽ちることなく、整備されていて。
時折、人影が動いているのを遠目に見ることもあり。
・・・まあ、つまり、廃墟というわけではない。
何かしら、人は常時出入りをしている、
きちんと管理も入っている筈の土地。
でも、町の人も、学校の先生も、
「あそこは、なんの施設なのか、
よくわかんないんだよねえ」と
首を傾げているばかり。
そんな場所であった。
そんな場所であったから。
夏のヒマな夜なんかには、
男子生徒の一部が、
心霊スポット探検と称して、
こっそり潜り込むことが多々あった。
そしてそういうときは、
「なぜか迷彩服を着たおっさんが
懐中電灯を持って追いかけてきた」とか、
「窓からじっとこちらを見ている
髪の長い女がいて、
それが気味悪いから帰ってきた」とか。
そんな、ウソかホントかよくわからないハナシが
後日談として学校に広まるものだったが。
その事件が起こった、ある夏の夜は、
そんなのとは、まるで様子が、違った。