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動きだしたとき

 

「うそっ?! 乙女ゲームの世界に転生してる?!」


 唐突に、前世を思い出した。


 私は前世では日本といわれる国に住んで、最後の記憶は向かってくるトラックのライト。乙女ゲームに夢中で、歩きスマホをしていて、近づいてくるトラックに気がついた時には、もうどうしようもなかったのだ。


(あの、絶望感ったらなかったよね)


 噂には聞いてた走馬灯があるってのが知れたのはよかったけど、あんなにあっけない終わり方は嫌だった。まだ、やりたいことは沢山あったし。


 とはいっても、日本にいたときの自分や家族の名前とか具体的なことはボヤけていて、思い出せそうにないから、心残りとかはない。今の人生をあっさり受け入れられてるし。





 考えが落ち着いてきたところで、ふと頭に感じる痛みに気がついた。脈を打つリズムにあわせて、何とも言えないズキズキとした痛みが襲ってくる。


(なんだろ?)


 頭をぶつけた記憶なんてない。


 耐えられないわけじゃないけど、無視もしにくい絶妙なイヤな痛さだ。


 恐る恐る触ってみると、幸いなことに血は出てなかった。


 それだけで、痛みは変わらないのに安心した。



「それにしても、まさか大好きな乙女ゲームの世界に来れるなんてね!」


 しかも、日本人だった()じゃなくて、この世界の私の記憶を辿ってみたら、なんという幸いなのか、私は()()乙女ゲームのヒロインだった!


 よくあるヒロインは、元々が平民で、ゲーム開始前に貴族だってことがわかるパターンが多かった。


 そんな私も類にもれず、ちょうど母が亡くなった日に、父親だと名乗る貴族に引き取られたばっかり。


 かなりツイてる!



 ――男爵令嬢、リリー・アクス



「ヒロインなんだし、この世界は私のためのものってことだよね!」


 あの乙女ゲームは大好きだったから、死ぬ直前までやりこんでいた。どの選択肢を選べか良いかなんて、私にとってはお手のものだ。


 キャラクターはみんな大好きだし、その中でもユリテウス王子はもろに()のタイプだった。


 好きな人には一途だし、どこまでも尽くしてくれるんだよ?そんなの……サイコーでしかないよね!


 今の私になっても、そうそう好みは変わってないようで。ユリテウス王子のことを考えるだけで胸がときめく。


「はぁ〜、幸せっ! 早くゲームが始まらないかな〜!」


 前世ではサークルで意図せず、すごくモテた。というか、元々私はモテるタイプだった。サークルでは、「姫」とか呼ばれることもあったし。


 けど、私の理想にたる男の人には全く出会えなかったんだよね。


(つまんない)


 しかも私に嫉妬した人達から、何の言いがかりか、私が人の彼氏にちょっかいをかけまくってるみたいに噂されちゃったし。


 ほんとありえない!


 若くて可愛い私に嫉妬しないでほしいってもんだよね。


 別に私は何もしてない。


 ただ、男の人がほっておいてくれなかっただけ。ただ()()()してただけじゃない!


 でも、噂って怖いよね。いつのまにか、私が浮気してるってことになってたときは、こっちが驚いた。


 ただ一緒にご飯食べたり、旅行に遊びに行ってただけなのに!



 言いがかりをつけられて無性にむしゃくしゃしてた帰り道。はまってた大好きな乙女ゲームをして気を紛らわせてた。


 ほんとにあのゲームは最高なの!


 あのゲームをしてるときだけはどんな時も幸せだった。


 だからなのかな?


 きっとこの世界にきたのも、ここで私に幸せになれ、ってことなんだって感じるの。


 しかも……


「私がその世界のヒロインだなんて……っ! ふふ」


 嬉しくってたまらない。


 ただ、どうしてこんな道端で気を失ってたのかはちょっと気になったけど。まぁ、でもそれ以上にこれから起こるゲームを考えるだけで、何もかももうどうでもいいや。




 私は軽い足取りで家に帰った。





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