第21話 ホワイトカラー
時間遡行は成され、缶詰の外へと出る二人は現在時刻の確認から入った。
「清掃員さんが来て、皆さんが隠れて、スエンくんとお勉強会してた頃ですかね?」
「俺たちが最初の遡行をしてから四十分――そろそろ好晴のマンションを出た辺りか」
二人で記憶を辿る中、好晴は勉強会の内容を思い出そうとするも、何も浮かばない様子でぽかんとしている。ソウは自分の行動、そして大橋前での通信の内容を鮮明に思い出そうとしていた。
「スカルは白装備を島の西側で見たと……管理施設で工作をしていたのは――スカルか……」
信じたくはなかったその事実に再びソウは直面していた。世界システム七号機が置かれたあの場では確証を持てずにいたが、過去の行動を振り返ればスカルが望眞幸を殺し、工作したとしか考えられない。
チームの中でも信頼を最も置いていた存在だったからこそ、共に任務を熟し続けてきた仲間だったからこその戸惑い。
ソウにとって、その感覚は未経験のものだった。
「……この有利を活かさなければならない」
敵がスカルの一人だけだと判明したことで今ならば大胆な策を取ることができる。言ってしまえばスカルの周辺以外は安全だと、この島の状態からもそう判断できるだろう。
「君はこの場所で待機していてくれ。また後で必ず迎えに来る」
「ここで待ってれば良いんですか? 本当に?」
「ああ、その格好は目立つからな。それにここは君以外の人間が通るとは思えない」
それはつまり、悪いことをするのは好晴だけと言っているようなものだ。
「違うんですっ! ちょっとした冒険といいますかねっ……!? 通ったのだって、初めてだったんですからっ!?」
「まあ、それはいいんだ」
「誤解なんですっ……!」
「今はとにかく時間が惜しい。それに、与えられたこの猶予で出来る限りを尽くしたい……だから、上手な言い訳は迎えに来た後で聞かせてもらうよ」
冗談を言ったソウは刀型の武装と自動小銃やらを入れたバッグを肩に掛けてその場を後にする。
好晴は両手で装置の入ったケースを持ちながら近くの階段に腰掛けて、早速と課題を片付ける為に思考を巡らし、そして諦めるのであった。
◇◆◆◆◇
白いフルフェイスの誰かが歩いていれば、人は目で追ってしまうだろう。それも何の変哲もない街中で。悪目立ちするのは当然だ。
その人物は肩に大きな荷物を掛け、そこからは刀の柄がはみ出ている。存在感を放ちながら歩道を行くソウは駐車場へと迷わず向かい、そこでバイクを探した。
白いバイクが良いだろうと、望みの車両を見つけて跨がり一発拳銃を発砲する。バイクを走らせて向かうのは島の西方、娯楽施設の集合する場所だ。島の外側は勿論の事、大量の水で満たされてはいるが塩の香りはしない。
その先には見えない壁があり、この海には果てがあるのだと。悪性を極限まで削ぎ落とされたのだから、決められた範囲へと出ようなんて発想はあらず。
唯一海へと挑む漁師たちですら知らないのだから、笑顔を浮かべる人々には知る由もないだろう。
遊園地の近辺にあるその管理施設は金網で囲まれ広々とした芝生で埋められる土地にあった。巨大なアンテナが五つあり、それらが中央の建物を囲うように配置されている。
立ち入り禁止と看板が置かれただけで警備はいないし、監視カメラも性能が高いとは言えない代物ばかりだ。
金網にはこじ開けられた痕が見受けられる。
既にスカルが侵入済み、そう判断していいだろう。
バッグから刀を取り出して背中に添えれば自動で固定された。自動小銃を取り出して弾倉の数を確認。その他様々な装備のチェックを終え、ソウは侵入者の痕跡を探した。
「監視カメラが破壊されていない……」
先に侵入者が入っているわりにこれといって痕跡がない。監視カメラに不審な人物が映ればいくら古い機器だとはいえ警報がなるはずだ。
何せここは人工島の完全な隔離状態を維持する施設。今までの平穏を確固たるモノとしてきた、技術の進化によって成される現代的な鎖国手段の要だ。
タワー程までとはいかなくても警備に力を入れていないわけがない。
「向かうのはコントロール室。アンテナの動作を停止させ、操作パネルを破壊する。ノーアラートの完璧な工作だな」
見た限りではまだアンテナは稼働している。それでも停止までは時間の問題だ。異変を察知してセキュリティが駆けつける頃には手遅れ、ならば事が起きる前にするべきことがある。
「お先に一暴れさせてもらおうか――」




