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第11話 パラ・グランザ

 嵐の中に身を置いているようだった。

 窓の先に見えるのは真っ黒な槍の雨。

 雷の代わりに鳴り響くのは刺し穿たれ、或いは叩き砕かれた機械の爆発音。だがその現象は十秒も持たずに崩れ始めた。


「形が保てない……? 今までこんなことなかったのに、どういうことよ……ッ!」


 明確だった形が段々と曖昧になり、幻だったかのように消えていく。動揺する間にも仕留め損ねた円盤型が迫っていた。


『前言撤回! ソウ! 援護お願い!』


 傘を開いて銃撃を防いだ後、リロードのタイミングを狙って槍を投げる。機能を停止した円盤型が落下を始め、そこへと飛びついたユティが突き刺さった槍を掴んで更に勢いよく飛んだ。


 逆さの状態で体を捻り、すぐ近くの標的目掛けて刺さりっぱなしの警備機を叩き込む。全ての警備機が空中で無防備になるユティに釘付けとなった。


「一体どこに隠れてたってのッ……!」


 白く巨大なタワーより、三機の円盤型が橋の方へと向かってきていた。それらが発砲を始める予兆はない。その代わりとしてユティの足場になるようにと動く。


「これって――スエンッ!」

『聞えてるよ、遅れてごめん姉さん』


 着地と同時に名前を怒鳴りつけるように呼ぶと応答があった。


「ソウから話は聞いた! あんたどういうつもり!?」

『まだ詳しくは話せないけど、僕らの任務は同じだよ』

「なら援護して! 私に合わせなさいッ……!」


 ユティの動きに合わせて先回りを始める三機を足場に、厄介な円盤型の処理を優先する。飛び乗っては突き刺し、その隙を埋めるようにスエンの操る一機が盾となる。


「ホログラムが上手く生成できない――もう、傷がついたらどうしてくれるってのよ……ッ!」


 車の窓を開けたソウが近くの車輪型に向かって引き金を引いた。一発目で命中したのを見て即座に通信を入れる。


「ユティ、下の一機を確保した」

『――あと一機! そしたら先に行きなさい!』


 追加を発注されたソウは窓から体を乗り出して片手をハンドルに、もう片方で狙いを定めた。


「ソウさん!? う、運転! 運転っ……!?」


 それなりの速度が出ている状態でのその行動に好晴は車内で右往左往する。更には窓に張り付いてバンバン叩き、集中するソウの視界に入ろうと半泣きで試みた。


 狙いづらい角度、当てるべき中央の球体は車輪が邪魔をして僅かにしか見えない。一つ息を吐いたソウが引き金を引くと再び一発で命中する。運転席に戻ると後部座席から上半身だけ乗り出す形で好晴がハンドルに手を伸ばしていた。


「何をしてるんだ?」

「だってソウさんが運転しないからあ……!」


 運転に戻るとすぐにアクセルを踏み込んで加速する。その場から離れる車両を確認したユティが最後の円盤型の真上から槍を投げた。


 今度の槍の形状は傘を閉じたような状態だ。

 ランスと言うに相応しい見た目になると貫通力を失うかわりに一撃の重さが増されている。


 地面を砕いて突き刺さった槍の元へ。遅れてユティが落下、重力制御により静かに着地した。残された地上の車輪型は彼女を囲うように走り続ける。


「調子戻ってきた……ッ!」


 誤射を想定し射撃を中断した車輪型が突っ込んできた。追突する間際、ようやく黒い層が生成されたのを確認して傘を開く。


 一度正面から車輪を受け止め、そこから傘を振るうように回転すると半円型に高重力場指定生成ホログラムが生み出された。


 それに向かって次々と車輪型が衝突するがそう簡単には突破できない。それどころか拡大するホログラムに押し戻されていく。


「ポンコツ共が、少しはデータベースで私のことを調べなさい――!」


 ある程度の距離を確保した後、傘を握る手を横になぎ払うようにして伸ばすと形状が再び傘を閉じた状態へと変化した。


 それに合わせて周辺のホログラムも形を変えて各車輪型はその勢いのまま自ら突き刺さっていく。すぐさま握る槍を振り上げて掲げれば、同様に機体は持ち上げられた。


「バン――」


 吐き捨てた言葉と共に傘が開かれ、彼女を護るように黒い層が生まれる。無理矢理開かれたホログラムの傘が車輪型を内側から粉砕し爆散させた。


 炎と煙の中からは傘を差したユティが現れる。

 彼女を狙う敵性存在は一機残らず破壊された。


「さ、追いかけるわよ」


 待機していた二機の車輪型。その内一機の真ん中辺りにユティが細長い状態の槍を突き刺す。すると当然のように機能を停止させコテンとその場に倒れてしまった。


『姉さん、アドバイスだけど』

「――いや、いいから」


『槍で二つを繋げて移動しようとしたのかもしれないけどさ、機械って精密だから突き刺しただけでも簡単に壊れるんだ』


「聞いてなかったの? 別に試そうとしたんじゃなくてやっぱ一機だけで充分って思っただけ」


 そう言いながらもむっとするユティは槍の形状を指輪に戻して薬指にはめ直す。残る一機に近づいて中心にある球体に掴まると八つ当たりするように二度叩いた。それを合図に車輪型は動き出し、ソウたちの後を追いかける。


『まあでも、自爆機構をピンポイントで停止させたのは偶然とはいえ凄いから――』


「――うっさいわね……! さっさと合流しなさいこのバカスエン!」


 憤るユティはその罵倒を最後に通信を切断した。

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