1.はじめの一歩
『「Un autre monde」興行収入驚異の1兆円突破!』
朝、眠い目をこすりながらニュースを見る。
最近の話題はもっぱらこれだ。
VRゲーム関連器具の世界シェア堂々のNo.1の「Jeu」が5年の歳月を費やし作った「Un autre monde」略して入れ替えて「UMA」。β版から反響は大きかったがつい先日、ゲリラ的に公式リリースがあり、売れに売れまくっているのである。
俺は「駒場 玲央」都内のそこそこいい進学校に通っている高校1年生だ。去年まで受験勉強をしていたから、このゲームは一切やってない。そもそも俺は、ゲームより数学のほうが好きだし、、、
そんなことを言いつつ制服を着て学校へ向かう。
今日は夏休みが終わって初めの日、1年で最も嫌いな日だ。
ひとりで学校まで歩いているとよく知る人影が
「おは~」
「おはよう」
こいつは平沢 凪、女みたいな名前だが一応男だ。母親同士仲が良く、俺たちも波長が合うから小さいころからずっと一緒にいる。いわゆる幼馴染だ。
「お前、夏休みなにしてた?」
「特筆すべきことはしてない」
「ちぇっ。つまんねえなぁ。俺は例のUMAずっとやってたけどお前はこの話わかんないしなぁ」
こいつはあのえげつない倍率を突破しβテストプレイイヤーに選ばれてから、寝る間も惜しんでUMAをしているゲームヲタだ。
「始めるきっかけがなくてな」
「お前マジで人生の8割損してるぞ。まぁお前が始めたって言ったほうが驚きではあったが」
こんな軽口をたたきつつ俺たちは学校へ向かう
「じゃあ、また放課後な」
「あぁ、またあとで」
俺は1年A組、凪は1年F組で場所がだいぶ離れているから校内で会うことはそうそうない。まぁ今日は2学期の始業式だからすぐ学校が終わるしまた、すぐ会うことになるのだが
そう考えてるうちに、教室につく。クラスの話題ももっぱらUMAだ。
「第2エリアすぐいけたね~」
「第3エリアの神官可愛すぎ案件」
など俺には全くわからない話が続く。話す相手もいないので自分の席で本を読んでいた。
5分もしないうちに担任が来て、始業式はそこから放課まで続いた。
「やっと見つけた~」
「ごめん、少遅くなった」
俺は謝りながら、凪と合流して帰る。
「今日この後、お前の家行っていいか?」
「家にくるのか。昼飯はどうする?」
「ん~じゃお前の家でごちそうになろうかな。」
「わかった。お母さんに伝える」
そういってスマホを取り出し母に凪が家に来ることを伝える。
「てか、校長の話長すぎ」
「それより、生徒指導部の話のほうが長かったけどな」
「あいつマジでうるさかったな」
そんな他愛もない話をしながら帰路につく。
昼飯を食べ終わり急に凪が真剣な目で俺を見つめる。
「俺と一緒にUMAしないか?」
「何度も言ってるだろ。俺はしないって。そもそもなんで俺を誘うんだよ」
「いや、お前にこのゲームは向いてると思ってな。お前のその天才的な頭脳はここでも役立つと思う」
(天才的な頭脳、、、か。この頭はゲームと相性が悪いんだけどな)
俺は天才的な頭脳を持ってはいるものの、何でもできてしまうため誰も俺とゲームをはじめとする頭を使う遊びをしてくれなくなった。
(まぁ、凪を除いてだが)
「お前がそこまで言うなら、少しだけだぞ」
「お前ならそう言ってくれると思ってたぜ。」
そこからは、あまりにも早かった。凪は自分の部屋にいたはずの妹「駒場 美咲」を呼び出し、あっという間にゲームを始める態勢が整った。
「お兄、行ってらっしゃい。」
この言葉を最後におれはUMAへと旅立った。