コント『授賞式』
ゲラゲラコンテスト3応募作です。
場所-映画賞の授賞式会場
ツッコミ-A(優秀主演男優賞受賞者・田村)
ボケ-B(最優秀主演男優賞受賞者・シン)
映画賞の授賞式会場でAがBに声をかける。
A:シン、最優秀主演男優賞、おめでとう。俺はまた優秀賞止まり。負けたよ、素晴らしい演技だった。
B:田村さん!そんな、めっそうもない。たまたまいい作品に巡り合えただけです。
A:そんな、けんそんするなよ、お前が一番だ!受賞スピーチも、期待してるぞ。
B:田村さん、俺、スピーチでカミングアウトしようと思ってるんです。
A:え?カミングアウト?何を?
B:実は俺の親父…、俳優なんです。
A:え?マジで?そうなの?
B:はい、俺、親の七光りだって言われたくなくて、ずっと黙ってたんですけど。
A:そうか、お前、プロ意識高いもんな。っで、俳優の誰なの?親父さん。
B:渡辺…ゼンです。
A:…ごめん、誰?渡辺ゼン誰?え?ゼンてどんな字?
B:T、h、e、n
A:そのThen!?渡辺Then!?芸名奇抜すぎるでしょ!
B:なんか、字画がすごく良かったらしいです。
A:いや、見栄えが悪いだろ!あの、その名前ちょっと聞いたことないんだけど、どんな作品に出てるの?
B:映画に結構出てるんですけど、代表作は『泥沼寿司屋さん』ですね。
A:ひどい、タイトルだね、それ!知らないな、その映画。
B:まあ隠れた名作ですね。DVDにもなってなくて、8センチCDで音声が残ってるだけですから。
A:いや、隠れすぎだろ!せめて映像あれよ、『泥沼寿司屋さん』よー。
B:あ、でも、この決めゼリフ聞いたらわかるんじゃないですか?「いけね、おいら、鉄火巻にマグロと間違えて、モグラ入れちゃった」。
A:…泥沼だな、おい!それ絶対、D級映画だろ!ちょっと、ゴメン、俺お前の親父さん見たことないかもしれない。
B:そうですよね。親父、天才肌だから、完璧な脚本じゃないと仕事受けないって言って、仕事のオファーをずっと受けてなくて。
A:気難しいんだな。
B:そうなんです。だから、最近は家で若い女の子の咀嚼音をただ聞くだけの動画を一日中見てます。
A:何やってんだ、一日中。
B:俺、親父、孤独なんじゃないかって、心配だから、バイト代でトイプードル買ってあげたんすよ。でも親父、咀嚼音の動画をもっと快適に見たいからって、ソファを買うために、あげたトイプードル転売しちゃったんすよ。
A:最低じゃねえか、お前の親父!
B:なんかソファのメーカーの字画がめっちゃ良かったらしいです。
A:どんだけ字画、好きなんだよ!
B:田村さん、でも親父の演技は本当に凄いんです。親父はあの世界の黒澤…
A:え!?
B:はい、あの黒澤ミツルにも絶賛されたんです!
A:なんだ、そのまぎらわしい名前は!…あー、どうせ字画がいいんだろ?
B:いや、それは調べてないみたいなんですけど。
A:なんだよそれ、つらぬけよ、キャラを!
B:田村さん、田村さんはそう言いますが、俺の中で親父の存在は凄く大きくて…
A:ああ、悪い言い過ぎた。
B:俺、今回の映画の役も、親父のコネでもらったと思われたくなくて!
A:コネねえよ!大丈夫だよ、断言するよ!
B:俺、いつか親父を超えたいんです!
A:もう今日、超えたよ!東京映画大賞の主演男優賞だぞ。『泥沼寿司屋さん』なんて、比較にもならねえよ!
B:どれだけ親父の背中追いかけても背中すら見えないんです!
A:追い越してるんだよ!見えないんじゃなくて、眼中にないんだよ!
B:だから俺、いつか自分が主演する映画に、親父に助演で出てもらうのが夢なんです!
A:ごりごりの息子の七光りじゃねえか。
B:親父が光るならそれはそれでいいじゃないですか!
A:お前、いい子すぎて逆にやべえよ!
B:俺もっと演技頑張って、いつか、親父に認めてもらいたいんです!
A:そうか、親父さんは、お前の演技のことどう言ってんの?
B:演技はともかく、字画が悪いって。
A:もういいよ!