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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第2章 制服の笑み花の涙

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当主容認

 



 いかつい顔の老人達が、椿を見ると皆驚愕する。


「全くの別人ではないか!」


「おお……(かがり)さまに生き写し!!」


「なんということだ」


「信じられぬ……あの屋敷に住んでいたのか!?」


 絡繰門鐘山(からくもんしょうざん)は椿がスーツ姿なのを見て、顔をしかめた。


 今までのように、なじられ殴られるわけではないが

 視姦のような針が突き刺さり

 椿は逃げたい気持ちになる。


 だが麗音愛(れおんぬ)を見ると、麗音愛も殺気と心配の眼差しだ。


 此の場を望んだのは自分だ。

 グッと耐える。


「あの化け物娘は、何者だったんだ」


 今まで、顔を変える前の紗妃を見ていた者もいたようだ。


 月に1度

 面会日があったのだという。


 篝が死ぬまでは

 誰も椿の顔を見たことがなかった。


 しかし、亡き後

 罰姫(ばっき)だとお披露目された紗妃を見て

 その醜女(しこめ)っぷり

 まるで化け物のようだったと言う。


 二度と見たくもない、(おぞ)ましいと

 結局月に一度の面会日に誰も来る者など

 いなくなった。


 椿が見た姿は

 突然の来訪者がきても困らぬように

 あそこで1日

 来るわけもない客を待つ日だったのだ。


 山に行って自由に遊べる楽しい1日。


 ただジッとして

 己の存在の無意味さを考えさせられる1日。


 喜び歩く椿を睨む紗妃。


 あの紗妃の睨む顔を思い出す。

 憎しみの篭もった瞳。


 あの瞳孔は変わらなかった。


 醜いとか美しいとか

 そんな事でゴチャゴチャ何を言っているんだろうと、椿は老人達を見る。


 こちらの方がよっぽど化け物に見える。


「それでは正式に、桃純(とうじゅん)家当主として

 椿さんを白夜団にお迎えすることに

 異論はございませんね?」


 直美が、この会を早く終わらせようと話を進めようとするが

 老人達はまじまじと椿を見るばかり。


「しかし当主を名乗るには

 相当の力も必要だ」


同化剥(どうかはが)がしの許可……

 ふむ……しかし戦力の低下になる」


 配られた資料を適当に眺め、順番も無視して話始める。


「藤堂の娘か……情けないの……

 藤堂も、元々は桃純の流れの一族」


 そうなんだ! と椿は声を出しそうになった。


「そうだ。

 槍鏡翠湖(そうきょうすいこ)を操れるものがいなくなるのは惜しい」


「私が剥がして、使います!!」


「なに!!」


 老人達がざわつく。


 麗音愛も驚く。


「もっともっと強くなるために

 桃純家当主として

 武器をもっと操れるようになりたいのです!!」


 椿は立ち上がった。


「そのために

 余っている武器があるなら私が使いたい!

 槍鏡翠湖(そうきょうすいこ)

 結界系錫杖のなかでは最強で攻撃力もあります」


「椿……」


 あの紗妃との闘いの後

 確かに椿は今まで以上に鍛錬に励み

 『強くなりたい』と言うようになった。


「ふむ……検討しよう」


「しかし……篝様に生き写し……」


秋穂名(あきほな)め……たばかりおって。死んでせいせいするが……」


「美しい……」


「若いの……」


 老人達はなんと

 わざわざ立ち上がり

 椿の目の前にやってきた。


 まるで椿に魅了されるように。


 そして手を伸ばされる前に

 麗音愛が前に立ちはだかった。


「咲楽紫千のか……なにを生意気に」


 『お前らこそ何触れようとしているんだ』と

 怒鳴りつけたかったが睨み付ける。


「触れるなど許されませんよ!!」


 直美や雄剣もすぐに間に入り、椿を守る。

 どんな価値観なのか、この老人達は。


「どちらにしても、一代で終わっては意味もないだろう」


「なんですって?」


「ふん、まぁいい」


 前回、麗音愛に刀を向けられた絡繰門鐘山(からくもんしょうざん)だけが立ち上がらず

 それを眺めていた。

 雪春は後ろで立ち、見守ることしかしない。


 妖魔王の娘としての殺気が(ほとば)るのを椿は必死に抑えていた。

 今、この時間さえ過ぎればいい。


 目の前に立ってくれる、麗音愛のためにも。

 強くなるためには、当主になった方が都合がいい。


 耐えなければ!!


「さぁ! 席にお戻りください」


 麗音愛の祖父、剣五郎が一喝した。


「咲楽紫千、身の程をわきまえろ!!」


 それに恩心当主が激昂する。


「――いつでも!」


 麗音愛が叫んだ。


「いつでも、勝負お受け致します。咲楽紫千家(さらしせんけ)晒首千ノ(さらしくびせんの)(かたな)の継承者として。

 ――力が全てのはずです、妖魔王を滅するための白夜団ですから」


 あとの言葉は静かに発された。

 刀は抜かない。呪怨も見せない。

 だけれども、そこにいた五当主全てが息を飲む。


 次の瞬間、首が切られたと思ったのか首を撫でる者もいた。


 雪春は、どんな気持ちなのかそれを見て微笑した。


 皆、ぞろぞろと情けなく椅子に座る。

 そしてそれぞれ当主容認の判を押した。


 そしてこの日、椿は正式に

 桃純家当主になったのだった。


 ◇◇◇


「乾杯!!」


 剣一と剣五郎が料亭を予約してくれていたので、珍しく直美や雄剣も

 佐伯ヶ原、そして美子も呼ばれた。


「おめでとうで、いいんだろ?」


 乾杯をした後に佐伯ヶ原が椿に話す。


「うん、ホッとした」


「椿ちゃん、同化剥がしのこと……」


「絶対認めさせるから!! 任せてね!!」


 Tシャツとジーンズに着替えた椿が笑う。


 それでは編み込みは釣り合わないので解いてまた佐伯ヶ原が

 ハーフツインにしてくれた。ふわふわになって愛らしい。


 屈託のない笑顔に、美子もつい見惚れてしまう。


「ありがとう……」


「玲央、お前もお疲れ」


 改めて、剣一が麗音愛に乾杯をする。


「兄さんもお疲れ」


「かっこよかったじゃん」


 キヒヒと笑う剣一に、そっぽを向いて麗音愛は前髪をいじった。


 大盤振る舞いの御馳走に椿は喜び、笑顔でパクパクと食べていく。

 それを皆も微笑みながら見守っていたが


 ポロポロと、また椿の瞳から涙が溢れる。


「椿――!?」


 隣の麗音愛が慌てた。

 やはり昼間の事が、また傷に。


 周りの皆も、不安そうに見守る。


 ご飯を椿がごっくんと飲み込んだ。


「みんな優しくて……美味しくて

 ……幸せだなって思ったの……」


「椿……」


「そう、思ったら……」


 ゴシゴシと顔を無造作に拭く椿。

 直美が麗音愛に渡したハンカチを椿に握らせる。


「そう、思ったら……嬉しくて……涙が」


 また溢れてくる綺麗な涙。


「……これが続くよ。この幸せが、ずっと」


「ずっと……」


「絶対に」


 麗音愛は、優しく力強く微笑む。

 皆も、うんと頷いた。

 未来への言葉で、確かなものなど何もない。


 ――それでも麗音愛は、あの紅の空の下、約束を果たしてくれた。


 続かせたい。

 この夢のような幸せを。


 そして、それには麗音愛に守られてばかりではいけない。


 麗音愛の手を冷たくしないために。

 妖魔王・紅夜、紅夜会

 そしてあの天海紗妃に、自分が勝てるくらいに。


 強くなりたい――!!


 涙を拭いたあとの椿は、力強く笑った。


 一気に皆が安心し、また宴会は笑い声に包まれた。


 椿も麗音愛とまた笑い合う。

 久しぶりの賑わう夜だ。


「そういえば、加正寺(かしょうじ)家の分家の娘さんが入団されるんですって?」


 直美が雄剣に話す。


「あぁ」


 雄剣は『この人手が足りない時にありがたい』と言いそうになって

 美子がいる事に気付き言うのをやめた。


「なんだか、力の強いお嬢さんらしくてね。

 きっかけは偶然にも公園で妖魔に襲われて運ばれたことだったんだが――。

 玲央、覚えていないか?」


「え?」


「麗音愛も知ってる人なの?」


 天ぷらを食べていた途中だったので、しばし噛み飲み込む。


「覚えてないけど――あ、あぁ……なんかあったかも」


 なんとなく……思い出す。


「私はいない時だよね?」


「うん、気配がしたから1人で行った時。公園で襲われてて、救急車呼んだ」


「そうだ。その子だよ」


「へぇ!可愛かったか!?」


「顔も覚えてない……」


「まぁ新しい子が来るから、その時が来たら色々と仲良くな」


 そう言うと、雄剣と直美は遅い時間なのに

 仕事に戻ると席を立つ。


「あ、椿ちゃん。これごめんなさいね」


 直美は封筒を渡す。


「赤ちゃんの頃の写真。少しね年代を調べさせてもらったの

 椿ちゃんに間違いないわね」


「わぁ、ありがとうございます!」


「良かったね」


「麗音愛のおかげだよ、ありがとう」


 微笑み合う2人を見て、直美は少し困ったような顔をして

 雄剣と出て行った。


 お腹一杯になった麗音愛と椿は

 タクシーには乗らず夜道を歩いていた。


 あんなに蒸し暑い夜だったのに、もう少し冷たい秋の風が頬を撫でる。


「麗音愛」


「うん」


「私、もう泣かないよ」


 グッと両の拳を握る椿。


「でも、辛い時や嬉しい時は泣いていいんだよ」


「でも心配かけちゃう」


「いいんだよ、俺も泣くような状況にならないように努力する」


 片手で刀を握るように

 麗音愛もグッと拳を握った。


 そして椿に微笑んだ。


 キュン……と椿の心臓がいつもと違う音を立てる。

 勝手に出てしまう笑顔。


「よーし! 麗音愛!! 家まで競争!!」


「えぇ!? 食べたばっかなのに」


 そう言いながらも麗音愛は椿の後を追った。

 また秋の風が吹いて、木々の葉を揺らす。





いつもありがとうございます!


今回、後半に出てきた公園での事件は

七夕用に書きましたお話です。

シリーズ化にしましたので、辿って是非お読みいただけたらと思います。

もちろんお読み頂けなくとも問題はございませんので

ご安心くださいませ。


評価、ブクマ、感想いつもありがとうございます!

最近は有り難い事に

読んで頂ける機会も増えてきました。

それでもお客様お一人お一人への感謝の気持ちは

お客様が3人だった頃とひとつも変わりありません。


これからも頑張りますので

どうぞまたお読みいただければと思います!!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 椿ちゃんのせいではないんだけど、紗妃ちゃんはどうしてもかわいそうだと思ってしまいますね…(´・ω・`) 憎むのも歪むのもやむなし てかなんなんだあのエロ老人たちは
[良い点] わああ気になる!!七夕も読まなくっちゃ…!! 頑張る椿ちゃんも麗音愛も格好良い! 二人の絆がずっと変わりませんように。 途中あった海の漫画もキュンキュンでした。 麗音愛いい男や…。 身代わ…
[良い点] 彼氏の見せ場すぎて、眩しいわ……
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