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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第2章 制服の笑み花の涙

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もうひとりの娘

 


 麗音愛(れおんぬ)もかなりの力を椿の結界に使っているので

 呪怨の力を最大に発揮できない。


 片手だと、大ぶりの鎌に力負けしてしまう。


「麗音愛――!!結界解いて闘って!!」


「――っ! ダメだ!!」


「解け!!」


 解けばすぐにでも、紗妃は椿を殺しに行くだろう。


「お前が俺に命令するな!!!」


 麗音愛が叫んだ瞬間

 一気に呪怨の力が膨れ上がり、一瞬で左腕は復元され

 屋上の床全てが呪怨の黒に染まる!!


 残されていた妖魔はすぐに、真っ黒な腕に引き込まれ

 喰われていく。


「ひっ!!」


 紗妃も怯み、バッと離れてフェンスの上に立つ。


 しかし麗音愛はその距離を、許さない。

 今度こそ両手で、晒首千ノ刀を握りしめ。


 一刀――!!


 フェンスが一瞬で横一筋で分かれ、落下していく。


 飛んだ紗妃は数珠と聖水を繰り出しながらなんとか

 狭い結界スペースを作るが

 そんな事も許すはずはない。


 麗音愛が睨みつけると、呪怨が膨れ上がり

 滅する存在へ向けて全てが動き出す。


 ドン! 


 踏み込み一気に、殺す!!!!


 しかし

 その一筋は空振りに終わる。


 そして麗音愛には聖水が浴びせられた。


「ぐっ!!」


「紗妃、バカヤロウが!!」


 飛ぶ妖魔に乗った闘真が、紗妃を引っ張り上げたのだ。


「お前! 姫様になにやった!?」


「殺すって言っただろう!!」


 内輪揉めか。


「麗音愛!!」


 聖水がかかり、溶けていく麗音愛の身体と呪怨。


 強く呪怨の力を引き出した事と、今までで一番強い聖水の力が

 最悪の相性で麗音愛を襲うが、麗音愛はそのまま飛んで飛ぶ妖魔に斬りかかる。


「お前がこいつの相手をして!!」


「おい!! お前を先に殺すぞ!!」


「紅夜様の許可はある!! それに従え!!」


「!」


 その言葉を聞きながら、飛び降りて椿の元へ向かう紗妃の方を

 麗音愛は追うか迷うがすぐに闘真が突っ込んでくる。


「お前はまじでクソムカつくから殺してぇ!!」


「あいつは何者だ!!」


「うるせぇ!!」


 斬り合いながら、椿を確認する。

 呪怨の結界で守っている。

 大丈夫なはずだ。


 紗妃は、ここから呪怨で攻撃する。

 あの結界は絶対に破らせない。


 麗音愛が離れたことで少し薄まった呪怨の上に聖水を撒いて降り立つ紗妃。


「殺す、罰姫」


「あなた……誰なの?」


 また睨まれる。

 さっきより近距離で睨まれ、背筋が凍る。


 でも覚えがある。


 この殺気。この憎しみ。


「――!! あなた……」


 もしかして、と思うが顔は全然違う。


「……もしかして、あの屋敷で……」


「! ――言うな」


 気付かれた事に紗妃も動揺した。

 それが答えだった。


「外でも、ぬくぬくお姫様してんのか」


「そ、そんな事ない――!」


「私があそこでどんな気持ちでいたかわかっているのか」


「わ、私だって!! ずっと虐げられてきた!!」


「嘘をつけ!! お前の身代わりをさせられてきたんだぞ!!」


「!!」


 そう、椿が覚えているのは

 たまに山へ行けと言われる日。


 自分と同じ年頃の女の子が綺麗な服を着せられ

 大広間でいつも正座をしていた。

 縁側から山へ行く道に抜けるので、その子を必ず見かけたが

 話す事はなかった。


 山へ行く事が楽しみだった椿は

 ついニコニコしてしまうが、その子は無言で

 通り過ぎる椿を睨みつける。


 ゾクッとしてしまうほど、殺意、憎しみ。


「あなたも、あそこに住んでいたの……?」


 まさか暮らしていたとは思わなかった。

 客だと思いこんでいた。

 そう言われていた気もする。


「私は和屋敷の方の女中部屋に鍵をかけられて

 軟禁されていたんだよ!? それのどこがいいの!?」


「私は、洋館のせっまい部屋で飼われてた!!

 嘘をつくな!! お前のせいだと私はずっと言われてきた」


「嘘じゃない!! いつも殴られたり、召使いみたいなことだって

 させられてたんだよ!?」


「じゃあ、あいつにお前はやらせてたのか!?」


「!?」


「お前が股を開かないから、ずっと私がやられてた!!」


「……な、なにそれ……」


「私の身体があいつにいいように遊ばれてた

 罰姫のせいだぞ、と罰姫のせいだと耳元で言われ続けてた」


 おぞましい話。

 ぶるぶると椿の手が震えだす。


「あれは死んだんだよ」


「……知ってるよ。その時一緒にいた」


「!!」


「紅夜様が私を救ってくださったの。

 美しい顔と美しい名前、

 あの屋敷で私はいつも醜女醜女と呼ばれていたからね……

 お前は若奥様気取りで、遊びに行ってただろう!!」


「ち、違う!!!」


「うるさい!! お前だけは殺す!!!」


 紗妃が華織月を一振りすると、先程までと違う強い芳香がする。


 麗音愛の結界術は香を防ぐ力はない。


 まずい!! と思ったがもう遅い。


「死ね――!」


 硬直した身体。


 緋那鳥(ひなどり)を持つ手がゆっくりと勝手に動き出す。


 華織月(かおりづき)の別名

 自害鎌、切腹鎌


 最後の香りを嗅いだものは自動的に自害へ向かう。


 キラリと緋那鳥の刃が椿の瞳に入った、その時。


 バリィインと一気に結界を解呪して

 麗音愛が椿を抱き上げる。

 そしてそのまま、紗妃に斬りつけた。


「ぐっ!」


 片手刀で鎌を振らし、紗妃の横腹を蹴り上げる。

 女相手でも容赦はできない。


 追撃で呪怨の矢を放つ!


 これで終わりだ!!


 紗妃の集中が切れたため、椿の身体も動き

 震える手で麗音愛の首元に抱きつく。


 しかし、呪怨の薄煙が晴れると

 紗妃の前に立った闘真が血結界で壁を作って回避していた。


「姫様を殺そうとするやつを、なんで俺が助けなきゃいけない」


「お前はそう命令されている。黙って助けておけ」


「もう、帰るぞ。俺は姫様の顔を見に来ただけだ

 てめぇ!! 馴れ馴れしく姫様に触るんじゃねー!!」


 麗音愛は辺りを見回す。

 妖魔は一体もいない。

 今日の討伐作業はこれで終いだ。


 麗音愛は椿を抱いたまま、闘真に斬りかかる。


 腹の立つ言葉には刀で返す。


 そう、二度、三度、斬り込む。


 横から鎌を振り上げようとした紗妃をギン! と睨みつける。


 その圧倒的な殺気。

 美しい顔、黒曜石の瞳からは想像もできないほどの憎悪。

 瞳のなかから無数の亡者が飛びかかり殺しに来たかと思うような。


 冷や汗が吹き出し、紗妃の手が止まる。


 そして、麗音愛はそのまま翼で椿を抱いたまま飛び去った。



 震えている椿が心配になったのだ。


「椿、大丈夫?」


「う、うん……ちょっと具合悪いかも……吐き気がする」


「すぐ帰ろう」


 椿も、今までで一番冷え切った麗音愛の身体をまた抱き締める。


「ごめんなさい……私のせいで」


 最近少しよくなってきたのに、また椿の自分を責める癖が出てきてしまった。


「椿のせいじゃないさ。1人にしてしまって、ごめん。

 あいつになにか言われた?」


「……うん……」


「そのせい? 震えてる」


「……うん……」


 それきり黙ってしまった椿に、聞き入る事はせず

 直接、椿の部屋の玄関前に飛び降りた。


 座り込んでしまった椿を支えて部屋に入る。


「ごめんなさい」


「謝らないで、水持ってくる」


「うん……」


 ソファに座らせ

 水を椿に渡すと、麗音愛はとりあえずフェンスを壊した事と報告を

 剣一に電話で告げた。


「うん、椿のとこにいる。心配だから……うん、わかった」


 蒼白な顔で硬直したまま座っている椿。


 一体何を言われたのか。


「……椿」


 そっと隣に座る。


「麗音愛」


「話せる時が来たらでいいよ」


「……麗音愛」


 椿は優しい麗音愛の微笑みを見て

 抱きつきたくなるけれど、やっぱり自分が汚く思えて

 触れたらいけない気がして、その気持ちが胸を切り裂いていく。


 ぎゅっと、椿の手を麗音愛が握った。

 冷たい、冷たい、冷え切った手。


 でもそれが椿にはとても温かく思えて

 ホッとしたように涙が溢れ出す。


 また泣いている。


 酷い傷が、やっと治ったと思えばまた涙。

 あの時に

 話す隙など与えなければ良かった。


 椿が泣いてしまったら、強さなんて意味がない。


「椿、ごめんね……」


「……麗音愛が謝ることなんて――」


 ぎゅっと椿がもう片方の手を添えた。

 後悔が襲うけれど、またあの地獄から戻ってこられた生きた実感が湧く。


 温かい椿の手。

 冷たい麗音愛の手。


 温度差があっても、お互いを癒やしていく。


 椿は、ぽつりぽつりと紗妃に言われた事を話し始めた。




いつもお読み頂きありがとうございます!!


皆様の応援がとても励みになっております。

アクセス、評価、ブクマありがとうございます!

頂ける喜びは私の宝物です。


またどうぞよろしくおねがいします

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― 新着の感想 ―
[一言] 乗っ取ったあの男は、悍ましいほどのクズだった事をここでまた知る事になるとは…… 紗妃の憎しみもわかるけど、お互いにどんな扱いだったのかを知らなかったから、仕方ないとはいえ、これはあまりに理不…
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