表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第2章 制服の笑み花の涙

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/472

椿、帰る~舞意杖同化、高い高い~

 


福火渡(ふくびわたし)しが始まるぞーーー!!」


 みんなガヤガヤとし始めて

 提灯の用意が始まる。


 祭りの最後に神社から、その年に選ばれた若者達が増やした炎の

 松明を持って降りてきた。

 それをまた、隣の人から人へと

 優しさを分け与えるように火を渡し伝えていく。


「今年は桃純(とうじゅん)様の火だよ~~」


 と、どこから伝わったのか言う人もいる。


「わーい」


「美しいねぇ~ありがたやありがたや~~~」


緋那鳥(ひなどり)様のおかげで1年また無事に過ごせるといいな」


「綺麗~~」


 お年寄りから子どもまで

 この暑さの中なのに炎の提灯で照らされた、人々の顔は笑顔だ。


 少し離れたところから様子を見ていた椿の瞳から、涙が溢れる。


「椿……?」


「こんなに母様が、みんなに慕われている人だとも知らなかった……。


 みんな私の火を喜んでくれてる……」


「そうだね……みんな椿の火を大事に持って帰るんだね」


「……嬉しい……あんなに出すなって怒鳴られてたのに」


 視界が涙で滲むけど、火の明るさは変わらない。


 みんなの笑顔を見ると心が温かくなる……。


 その瞬間

 心臓がドクンと鳴り、感じる強い力の鼓動。


「あ……!?」


「椿!?」


「んっ……あっ……」


 倒れそうになる椿を抱きとめる。

 浴衣の胸元でなにか光っている。


「ま、舞意杖(まいづえ)が…」


「同化!?」


「わ、わからないけど…多分……」


 ここで、何かあれば大変だ。

 麗音愛は荷物を適当に置き、椿を抱き上げ、飛んだ。




 苦しむような椿の表情を見て、また不安が心を支配していく。


 民家や森ばかりのなか、湖があるのが見えた!


 少し開けた湖のほとり

 人気のいない湖畔に、ゆっくり椿を降ろす。


「椿! 大丈夫か?!」


「うん……」


 椿は胸元から震える手で、舞意杖を取り出し

 発光している舞意杖を両手で握りしめる。


「お願い……お願いします……

 私を認めて……紅夜の血が入ってる汚い私だけど……」


 跪いて、祈るように舞意杖に語りかける。


「うっ……」


 干渉され辛いのか椿は苦しそうに顔を歪める。


 すべての身体の細胞が一つ一つ切り離され

 すべてスキャンされているような、皮膚が泡立つ感覚。

 続く歴史の波に、落とされ、飲み込まれそう。


 恨んだり呪ったり憎んだり

 汚れた自分が見透かされる!!!


 汚い、いらない、必要ない私

 愛してくれてた母様の事も忘れてた私


 紅夜の子ども、罰姫!!


 怖い!!!


 舞意杖を前に、立っていられない!!


 震えが、止めようとしても、震えが、止まらない。


「椿」


 ぎゅっと、麗音愛も椿の両手に手を重ね握った。


「麗音愛…」


「汚くなんかない! しっかり桃純家の当主だって思うんだ」


 舞意杖の光で、麗音愛の顔も見えた。


 麗音愛も

 108の武器の頂点・晒首千ノ刀を継承して

 きっと想像以上の辛さと闘ってるのに、優しくて強い。


 私もそうなりたい、と椿は思う。でも


「……でも、私、紅夜の…」


「桃純椿だろ! 椿は強くて綺麗だよ!! 自信をもて!!」


「麗音愛……でも」


「紅夜なんて関係ない、俺は最初から知ってる、それでも親友だろう!?」


「……麗音愛……うん!!」


 ぎゅっとまた舞意杖を握りしめる。


 麗音愛も不安な心をどうにか静めるように、椿を見守る。


 どうなるのか、わからない……。


 これで飲み込まれてしまったら?と思うと

 引き剥がしたくもなるけど、それを椿は望んでいない。


 麗音愛もまた椿の手をぎゅっと握りしめた。



 椿は目を閉じて深くまた沈んでいく。



 そうだ……。


 こんな私を緋那鳥(ひなどり)は、優しく守ってくれるように同化してくれたけど、普通なら自信のない主人なんて嫌だよね。


 何も知らなくて、桃純家、母様の事……。


 わかってしまうと思うけど、恨んだ事も呪った事もあったんです。


 紅夜もあいつらも憎くて殺したい気持ちもある。


 死んだと聞いても憎いのは消せなくて。


 母様への気持ちも、正直わからなくて……。


 でも……できるなら

 母様、お祖母様の気高い心を引き継ぎたい。


 桃純家の当主として

 自信は本当は、まだない。


 未来はわからないから。

 怖い、未来が怖い、これも正直な気持ちです。


 でもこの、今の、みんなの為に、当主になりたいという気持ちは絶対に忘れない。


 確かなもの。


 麗音愛の為に強くなりたい。


 自分のために強くなりたい。


 みんなの為に強くなりたい。


 もっと強くなる!!


 舞意杖……あなたと一緒に出した炎がみんなを照らして笑顔にできた。 


 あなたと共に戦いたい。


 だから、主人として命じます……桃純家当主の私の元に、還ってきてください……。





 パァ!!と強く光が発したと思ったら

 一瞬で飛散した。


 ふらっと椿は意識を失い、麗音愛が抱き留めた。

 もう手元に、舞意杖はない。


 うまくいったのか、どういう状況なのか麗音愛の額に冷たい汗が流れる。


 でも、すぐに椿は目を覚ました。


「……麗音愛」


「椿……大丈夫? ……すっごく心配した……」


 はぁーーっと安心した息を吐く。


「心配ばっかりかけて、ごめんなさい……」


 麗音愛は首を振る。


「痛いとことかない?」


「うん、元気」


 ふわふわと2人の回りを沢山の炎が揺らめく。

 まるで生きてるかのように椿と麗音愛に頬ずりしては、くるくる回る。


「……よかった」


「ありがとう麗音愛」


「何もしてないよ」


 浴衣も着崩れすることなく、麗音愛が支えて椿は立ち上がった。


「携帯も電波ないや。飛んで帰ろうか」


「なんかごめんね

 ずっと迷惑かけっぱなしだ……」


 まだ足が震えるのを、椿は必死に隠した。


「さっき

 自信をもつ話したよね」


「うん……」


「俺は迷惑だったり嫌だったりしたらここにいないよ」


 そう、迷惑だったらあの時に戻ったりしていない。


「麗音愛」


 椿の炎で照らされた麗音愛の瞳が本心だと伝えている。

 あの絶望のなか助け出してくれた、親友。


「椿はもっと俺を信用して」


「し、してるよ……ごめん」


「謝らなくていいから、ほら行こう」


 いつものように、ふわりと抱き上げ、飛び立つ。

 暑いなか、ひんやりと風が心地よい。


「わぁ……見て! 麗音愛」


「星が……」


 キラキラと満点の星空。月の光。

 静かな湖畔にも鏡のように映っている。

 足元は真っ暗な森、民家の光もお祭りの光も見えない。


 世界に2人きりのような、美しい星空。

 月も新月で星明かりの邪魔をしない。

 天の川もはっきりと見える。


 しばし、浮きながら2人で見惚れた。


「綺麗、星空なんて見上げたことなかった」


「そうなの?」


「湖に来て。夜に帰る事はたまにあったけど

 帰りたくなくて、いつも下を向いて泣いちゃったりしてね」


「椿……」


「えへ、こんなふうに星空が見えるんだよって

 こんなに今幸せだよって、その時の私に教えてあげたい」


「悔しいよ。過去に戻って椿を助けられたら……いいのに」


「ありがとう……でもね

 いいの、今が幸せだから、今に続くことなら……

 今までの事も頑張ったって思える

 無駄じゃなかった……って」


 そんな風に言える椿を、麗音愛は素直にまた強くて綺麗な心だと思う。


「……頑張りすぎなほど、ずっと一人でよく頑張ったね」


「麗音愛」


 キュンっと椿の胸が締め付けられる。


 辛さじゃなくて、なんだろう。

 小さい泣いてる自分が、麗音愛に褒められてちょっと笑った……。

 そんな気がして涙が出てきて

 お姫様抱っこされていた椿は麗音愛の首元に抱きついた。


「わっ」


「麗音愛いっぱい飛ばして!!」


「! わかった!!」


 麗音愛の頬に椿の涙が触れる。

 いつもは、見張られててこんな風に飛べないから

 泣いてるのに気付いたうえで、思い切り高く飛んでいく。


「あはっ! すごい!!」


 椿が喜ぶように、くるくる回って急降下する。


「麗音愛すごーい!!!」


 椿がバタバタして大喜びするので、また飛び上がった。

 涙は空に散っていく。


 最悪な呪怨の力に今は感謝して黒い翼を広げる。


 高い高いするように、ちょっと放り投げてみたら

 大笑いしてまた腕のなかに戻ってきた。


「きゃはは! もう一回!!」


「よっしゃ!! 行くぞー!!」


 笑顔の椿が、幼い頃の椿に見える。

 無邪気に笑って両手を開いて落ちてくるので、強く抱き留めた。


 星空に2人の笑い声が響く。




 楽しく笑った2人だったが

 椿の浴衣は随分乱れてしまった。


 少し祭り会場から離れた場所に降りてバタバタと2人で戻る。

 もう祭りは撤収が始まったようで

 剣一が椿の荷物を持って麗音愛達を探していた。


「椿ちゃん! 玲央! 2人とも無事で良かった~~何があった?

 って!! 椿ちゃん、浴衣! えぇ乱れ過ぎじゃん! 玲央お前まさか!」


「違う!!!」


 麗音愛が正拳突きをくらわせる。


「髪もぐちゃぐちゃだぞ、サラ、なにがあったんです」


「同化できたんです!!」


「いって、息止まるわって!! え!? ホント!?」


「浴衣は悪いと思ってるけど、色々あって……」


「また泣いたのか? 顔がきったないぞ」


 それぞれ、ぐちゃぐっちゃな会話。

 雪春が4人の真ん中に立つ。


「とりあえず帰ろう。ここで浴衣を直すわけにもいかないでしょう

 椿さん、怪我は?」


「大丈夫です」



 帰り道の車の中でも、同化したという話は雪春に話したが

 とりあえず着替えて、詳しく事情を聞くのは落ち着いた後に、ということになった。


 シャワーを浴びて髪を乾かし、もふもふ君を抱っこしながら

 干してる浴衣を見つめる椿。


「麗音愛のお祖母様の浴衣、破ったりしなくて良かった」


「ごめん、調子乗りすぎて……やりすぎて……」


「ええ!? 私がしてって言ったんだもん!」


 何!? 何をやったの!? お前ら!! とその会話を聞いて

 またビールを飲みながら気になりまくる剣一。


 気付けば剣一の携帯電話には小夏からメールが来ている。どうやら気に入られたらしい。


「飲み物とってくるよ」


「ありがとう」


 麗音愛がサイダーを取ってくると

 くぅーくぅ……と、そのまま畳の上で

 もふもふ君を抱いて小さく丸まり椿は眠っていた。


 その寝顔は苦痛ではなく、安心した幼子のようで

 麗音愛もホッとする。


「……お疲れ様、おやすみ」


 長い、長い長い1日が終わる。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ここも王子様度、高いわ……
[一言] 優しい展開でよかった!ちゃんとお母さんが持っていたもの、やっていたことを引き継げてよかったですね。展開も書き方もきれいで、星空を見て過去の自分を振り返れるのって素敵だなって思っています。
[一言] 二人の会話を聞きながら気になりまくる剣一が見えた気がした夏の日の夜(  ̄- ̄)トオイメ あ……今冬だった……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ