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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
本編第1章 紅い夜に映り黒く墜つる刃

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無惨はじまりの刻

 

「騙されたのか……!」


 憎しみ――そんな自分の暗い感情が、無数の魂に見られているような感覚がある。


 少しでも湧き出せば、そいつらは血の涙を流して喜び

 少しでも足元を崩して、同じ屍の仲間になるように

 もっと憎めともっと苦しめと手招きしている……。


 自分の晒された首が見える……。


 また自分の左頬を打った。


「いてぇ!」

 

 左手の火傷も盛大に痛む。


 違う!


 憎んでどうする。

 信じて去ったのは自分だ。

 あの少女がもし騙していたとしても、憎んでどうする。


 感情がもっていかれやすくなっている。

 やはり便利に使える刀というわけにはいかないようだ……。


「美子!! どこにいる!!」


 美子の携帯電話に掛けてみるが、もちろん繋がるわけもない。

 階段を駆け下り玄関へ向かう。


「……っ!!」


 名前がないから呼べない!


「おい!! 何故戻らないんだ!?」


 ダン! と踏み込み刀を構え玄関に面した廊下へ踏み出す。


「……誰も……いない……」


 ゴクンと唾を飲み込む。


 また耳障りな……水槽の音……。


 麗音愛は深呼吸しながら、神経を研ぎ澄ます。


 こんな時の嫌な予感なんて絶対に外れない。


 人間だって動物なのだ。


 何がまた起きているのか……。


 静かに……動く……。


「!!」


 少女が錫杖を振るっていた場所に血の痕が残っている。


 恐怖心が一気に増殖していく。


 刀を構えながら、玄関の電気を付けた。


 敵がもしいるのならば、どちらが有利かわからない。

 ただ、恐怖心から少しでも逃れるために明かりをつけた。


 カチカチンと音を発し、まだ蛍光灯らしい玄関の明かりは次々についていく。


 心臓の音と呼吸がうるさく感じて、できるだけ呼吸を細く長く……

 辺りに異変はないか見渡した。


「……いないのか……」


 校舎玄関の先には中庭がある。

 ガラスの扉が複数あって、普段は玄関からも中庭が見渡せるのだが

 そこは少女の結界の中で黒い暗闇になっていた。


 #☆%$#$$#*#ーーーーー!!!!!


「!?」


 だが、何かを切り裂くような爆音のような音が響いたかと思うと

 外の景色は赤い模様のような、柘榴を擦り潰したような

 臓物をぶちまけたような、ぶくぶくと息をする心臓のような

 何かを生かす液体のような

 おどろおどろしい色が映し出される。


「なんなんだ……」


 寒気しかしない。

 自分の刀も吐き気がするおぞましさだが、これもそれと同等

 いや……。

 それ以上かもしれない……。


 晒首千ノ(さらしくびせんの)(かたな)は果てしない絶望の闇。


 この色は……狂喜。


 血を浴びる

 舐める啜る

 涙を流して喜び臓物に愛撫する……。


 血の歓喜


「!!」


 自分の足元に、コールタールのような闇が蠢く。

 生贄をとられまいとするかのように麗音愛の周りを動く。


 甘い匂いまでするようなその景色に動けなくなっていた。


 しっかりしろ!と思いながらも

 まだ17歳

 昨日まで、いや18時まで普通の生活にしていたのだ。

 動揺しても仕方ない、仕方ない……。


 か細い悲鳴が聞こえた気がした!!


「美子ーーー!!」


 叫び走り出す。

 体育館だ!!


 恐怖心はある、鬼が出るか蛇が出るかなら両方だろう。


 恐怖ゲームみたいに

 窓から飛びかかってくるかもしれない。


 でも、何より恐ろしいのは、大事な幼馴染が死ぬことだ!!!


 体育館の扉は開かれたままで、電灯もそのまま明かりが溢れている。

 走りを止めずにただ走る!!!


「美子っ!!」


 全速力で入った体育館。


 そこには、恐怖の表情のボロ布の少女が薙刀を構えている。


「!!」


「来るな! 来ないで!! いやああああああああ」


 攻撃をなんとかしようとしながら、震えるのか足元がふらついて悲鳴が上がった。


 赤いイソギンチャクのような物体が少女を取り囲んでいる。


 敵が何であれ関係ない!!!


 麗音愛は全身全霊を込めて走り込みながら己自身の全てに命ずる。


「うぉおおおおおおおおお!!!」


 呪いの闇は使わない。


 二度、三度、四度、刀を振りかざし、

 麗音愛の振りかざす斬撃が、襲いかかろうとする固体を液体に変えていく。


 ひとつが液体になって消えた瞬間

 他の赤い固体は咆哮し牙を剥き出しにする。


 それでも、その瞬間を覆い被すように

 また二度、三度、四度、刀を振りかざし、


 最後、液体になったものの飛沫は、かかる前に左手の呪怨で叩き落とした。


「……あ……」


 少女の薙刀が手を離れ、落ちそうになる。

 ガクンと膝がつく前に薙刀ごと抱きとめた。


 頭からも出血しているのがわかる。ボロ布がまた血で染まっている。


 それでも少女の身体から温もりが伝わってきた。

 まだ温かくて良かった。

 ただ単純に、心からそう思えた。


 麗音愛は少女を抱きしめる。

 今度はその温もりを、自分が欲しくなったから、抱きしめた。

 自分が生きている証も欲しくなったから。


「……ごめん……」


 そっと少女に呟く。

 何に謝ったのか、遅れたことか、自分の欲で抱きしめたからか。


 そして座らせた彼女の前に立ちはだかった。


「俺がやる」


 叫んだわけではなかったのに

 麗音愛から冷たく鋭い風が流れて、落ちた赤い屍が揺れて弾けた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] れおんぬの勝利!! けど何だか手放しで喜べる感じではなくて、ちょっとしんみりしてしまいました。
[良い点] 先の展開に夢中になります!消えた美子は無事なのか!?麗音愛は再び彼女と再会できるのか!?どきどきですねー!
[一言] 玲央くん、ボロ布少女を抱き締めて、自分欲で抱き締めたからゴメンだなんて、男を感じてしまった(*´艸`) なんだか文章から滲み出る艶やかさを感じ取れてしまうのは、玲央くんのその部分のせいかしら…
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