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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第2章 制服の笑み花の涙

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椿、帰る~どこにいってもヤツはいる~

 

 高速道路おのサービスエリア

 それぞれ好きな物を頼み、呼び出しベルを渡される。


 いつもモールのフードコートで椿(つばき)が驚いてアワワワした事を思い出す。

 麗音愛(れおんぬ)が笑うと椿は『もう~!!』とバシバシ攻撃する。


 でもまた呼び出しベルが鳴ると椿はビクッとなって、麗音愛は笑う。


 混み合うサービスエリアの食堂で4人で名物を食べるなんて信じられない光景だ。


「ほら、椿ちゃん。写真撮ってあげるよ。はい名物丼見せて~~」


「え? あ、はい」


「はい、撮るよ。ん~~~可愛い」


 剣一が椿の写真を撮り終え、すぐ椿に送る。

 いつの間にかすっかりメール交換する仲になっていたようだ。


 学校でも、みんなすぐ写真を撮るので椿もやっと慣れてきた。

 とは言っても早く食べたいのに、みんなで写真を撮る間に食べたい気持ちを我慢するのは

 今でもちょっと辛い。


「思い出沢山作らないとね、玲央ももっと写真撮ってやれよ」


「あ……ごめん気付かなくて」


「いいんだよ~! 自分の写真が沢山てあっても仕方ないし」


 それを聞いている佐伯ヶ原。麗音愛を見つめる。


「玲央様も是非1枚」


「……様はやめてほしいけど……呼び捨ても嫌だし……困るな……

 ていうか、俺は写真は写れないから」


「俺なら撮れますから」


「え!」


 その言葉に反応したのは椿だった。


 麗音愛の写真欲しい……と心の中で思う。


 いつも麗音愛は写真に写りたがらないし、ブレているしで

 椿は自分でも理由はわからないけど、麗音愛の写真が欲しくなる。


「本当に?」


「嘘つくかよ」


 携帯電話を向けられると反射的に顔を隠す麗音愛。


「麗音愛、顔隠さないでよ」


 麗音愛は遊ばれていると思ってる。


「やだよ、写真は嫌いだ。ほら、ご飯の時間だぞ、行儀悪い。携帯置いて、きちんと前向いて」


 お母さん麗音愛発動。

 そうだ! ご馳走が目の前にあるのに!! と椿も正気に戻る。


「いただきます! ……美味しいっ!!!!」


「うん、美味しい」


 皆が舌鼓を打ちあっという間に平らげる。

 剣一と麗音愛は出店でアイスコーヒーを買って車に向かった。

 車内で食べてもいいよと言われたので椿は牛串を買っていると

 ジュースを迷っていた佐伯ヶ原に椿が話しかける。


「ねぇ、どうせ隠れて麗音愛の写真撮ったりしてるんでしょ?」


「ん? あぁ」


「私にも見せて」


「なんでだよ」


 怪訝な顔をして、ミルクティーのボタンを押す。


「そ、それは……」


 一瞬怯んでしまう。


「と、盗撮だし」


「なんだよ、お前だって見たいんだろ??

 ってか

 お前が玲央様に一緒に写真撮ってもいいって気にさせればいいだろ」


「どうやって……?」


「アンポンタン、記念に撮りたいなと思わせろよ、お前がねだるんだよ。

 あの人はお前の言うことなら聞くだろ」


 アンポンタンってなに?! と思いながらも記念に撮りたいと思う部分は同意した。


「じゃあ、その時は撮ってくれる??」


「仕方ない、その代わり俺も貰う」


「やったー! ありがとう!! 嬉しい!!」


「!」


 にっこにこの椿に佐伯ヶ原も珍しく、少し照れたようだ。


「単純小猿め」


「私が小猿なら、佐伯ヶ原君だって同じだよ!」


「なんだぁ!? 口が悪いぞ」


「そっちこそ!」


 お互い、キーっっと睨み合う。


「おーい!! もう行くぞ~あーあっちーな!!」


「あ、すみませーん!」


 2人を待っていた剣一と麗音愛だが……。

 麗音愛がふっと辺りを見回す、


「兄さん、少し待ってて」


「あ?」


「妖魔がいる」


 アイスコーヒーを置いて、車から降りた。


「麗音愛? どこ行くの?」


「妖魔を斬ってくる。すぐに戻るから」


 椿は一緒に行きたいが、多分この山の中では邪魔になってしまうと躊躇した。

 この前の詩織の言葉もあって気にしてしまう。


「すぐ戻る」


 でも、雪春の言葉も蘇る。

 もし麗音愛が1人の時に呪怨のせいで何かあったら……。


「私も行く!!」


「椿、すぐだから」


「でも、だって」


 不安そうな心配してる顔。

 麗音愛はできるなら、椿を戦いになんて巻き込みたくない。

 ほんの少しだって痛い思いをさせたくない。


「玲央、椿ちゃんと行ってこい。俺もその方が安心だからさ」


 命令、ではない。


「……わかった」


 うん、と頷いて椿に手を伸ばす。


「行こう椿」


「麗音愛……っ!」


 椿は、牛串を佐伯ヶ原に押し付けると、飛びつくように手を握った。

 麗音愛は一瞬で呪怨を巻きつけ飛び立つ。


 周りの人はカラスが飛び去っただけに見えただろう。


「美しい…………」


「…………え、えぇ? そうか?」


 剣一としても、弟のこの状況は心配で不安だ。

 今となっては

 白夜団トップの術剣士なんて、全く霞んでしまう。


 自分のできる範囲で、できることをする。


 それしかできない。

 わかってはいるが、やはり悔しくて情けなくなる。


 自分が継承できたら、良かった。

 でも、そんな勇気も力も、なかったんだ、それを弟の呪怨を見るたび思い知る。




 麗音愛は暑い森の上空をハイスピードで飛ぶ。


「怖くない?」


「全然!!」


 2人の間に呪怨は渦巻いているけど、手は繋いだまま。

 呪怨に巻かれていると、なんだかひんやりすると椿は思う。


「あと15秒で着く。準備して……!!」


「はい!」


 ゾクッと椿も妖魔の気を感じる。

 椿は緋那鳥を具現化させた。


「離れるなよ」


「はいっ!」


 茂った木には申し訳ないが降り立つ為に晒首千ノ刀を振り下ろす。

 開けた場所に椿と降り立った。


 ギィエエエエエ……!!


 無数の数の足が生えたムカデのような、3メートルはある妖魔だ。

 木の幹を伝って牙を向き麗音愛に襲いかかる!!


「まだ生まれたばかりのようだな」


「気持ち悪い!! えぇい!!」


 妖魔の後ろから、椿が緋那鳥で斬りつける!

 手応えあり!もう終わりと思ったが


 ブシャー!!! と切った部分から体液が迸る。


「!!」


 瞬間、椿を囲んで呪怨を発動させたが緑の体液は椿に軽くかかり服を溶かしていく。


「早く脱げ!!」


 慌ててかかった薄いパーカーを脱ぎ捨て、青い炎で身を包む。


「大丈夫か!?」


「うん!! 焦った」


 体液が毒ならば斬り捨てるのは無理か? どうすると2人顔を見合わせるが、


「よしじゃあ!」


 椿は緋那鳥を仕舞い、タンクトップの胸元から舞意杖を取り出す。


 斬られ、のたうち回るムカデが2人を襲いかかるが


「浄化焼き!!!」


 椿は、青い炎でムカデを包む。いつもの炎に比べて格段に大きく威力も強い。

 椿を守るように前に立つ麗音愛も、その威力に驚いた。


 グォオオオオオオオオオオ!!


「すごいな!」


「えっへん!」


 暴れまわりながらも、弱っていくようにどんどん動きがなくなっていく。


「よし!」


「でも、ムカデって一匹いたら……」


「!」


 椿を抱き上げて飛ぶと、もう一匹飛びかかってきた。

 先のムカデもまだ生きていて、燃えながらも2人に襲いかかる。


「やっぱり!」


「椿、頼む!! 二匹は無理か!?」


「やれるけど、同時だと動き回られると辛い!」


「俺が引きつける」


 椿を枝の上に降ろすと、麗音愛は二匹のムカデに向かって突っ込んでいく。

 燃えるムカデは晒首千ノ刀の背で払い、もう一匹には向かって走り飛び込む。


「麗音愛!?」


 不気味な妖魔の触覚を、麗音愛は素手で掴むとムカデの腹を思い切り蹴り上げた。

 叫び宙に浮いたムカデをまた蹴り上げて木に叩きつける。


「ワイルド……」


「椿!!」


「はいっ!!」


 先に燃えていたムカデの火力もキープしつつ、木に叩きつけたムカデに一気に炎をまとわせる。


 ギェエエエエエエエエエ!!


 麗音愛が椿の元に戻って抱き上げる。


「集中して大丈夫だよ」


 その言葉に頷く椿。

 麗音愛が守ってくれるなら、何も心配なく集中できる。


 舞意杖……私だよ……椿だよ……もっと……力を貸してほしい……!!!


 ブワッと椿の力が膨らむのを麗音愛も感じた。

 青い炎は瞬間的に白く、白く輝き

 ムカデ二匹は灰になって消えていく。


「やった……!!」


 臭いすら残らない、消滅。


「やった!!」


 降り立ち椿を降ろすと、いつものハイタッチ。


「すごいよ椿!!」


「えへへ……麗音愛もすごいワイルドだったね」


 あはは、と麗音愛は手をジーンズで拭った。


「俺だけじゃ無理だった……これから浄化が必要だったら困るな」


 呪怨をまとう麗音愛にとって浄化は自分にもダメージになるので使うことはできない。


「私がいつもいればいいんだから、大丈夫だよ!!」


 椿はにっこり笑う。


「……そうだね」


 麗音愛も微笑んだ。


「あ」


「?」


 麗音愛は自分のパーカーを脱ぐと、椿に渡す。


「あ……」


 パーカーが溶けてしまって、タンクトップになってしまった椿。

 新生活から身につけるようになったブラの紐が肩からずり落ちている。


 目をそらす麗音愛に気付き、パーカーを受け取ると後ろを向いた。


「でかいけど……くさくは、ないと思いたい……けど汗かいたから……どうだろ」


 ホッとすると2人とも、この夏の暑さで一気に汗が吹き出る。

 椿は麗音愛のパーカーをぎゅっと抱きしめた。

 ふわりと麗音愛の香り。


「ぜ、全然大丈夫だけど、い、いいの……?」


「うん」


 そんな格好で剣一の前に出られたらどうなることか。


「ありがとう」


「さ、帰ろう!」


 椿がパーカーを羽織ると、抱き上げた。

 やっぱり手を繋ぐより、こっちのほうが飛びやすい。


 エヘッ! と椿が微笑むのを見て麗音愛はドン!! と勢いよく飛び立った。


「やっぱり数が増えてるね……」

「あぁ……こんな事が各地で起きているのなら心配だよ……」



 アイスコーヒーの氷が溶け切った40分後に2人は戻ってきた。

 さすがに近くの山の中で降りて走ってくる。


 わっ! と転びそうになる椿を、麗音愛が抱きとめた。

 戦いの後なのに、麗音愛が着てたはずのパーカーを着てニコニコと椿が走ってくる。


「ニッコニコだなぁ」


 そんな2人を見て剣一もつい笑ってしまう。


「ごめん兄さん! 遅れた」


「気にするな、怪我はないか?」


「椿のパーカーが溶けた、でも怪我はなかったよ」


 あはは、と椿は笑う。


「なにそのサービスイベント、とと、怪我がなくて良かった!!

 お前も大丈夫か?」


「大丈夫、手洗ってくる、戻ったら車のなかで報告書書くよ」


 特別な緊急対応報告書の報告ページがある。


 妖魔を見つけたから始末したよ、という報告書だが

 命令なしでこれをできるのは許可を受けた団員だけだ。


 椿には伝えていない。


「じゃあ急ごう、夜になっちまう」


 剣一は椿に着替えを出すか聞こうかと思ったが萌え袖で嬉しそうにしているので、そのまま乗り込んだ。

 手を洗い終えた2人も車に乗り込もうとするが、麗音愛が佐伯ヶ原に声をかける。


「あの、佐伯ヶ原……後ろで椿の横、座ってもいいかな?」


「はい、玲央様」


「サラキンとかサラって呼ぶのはどうかな?」


「サラ様いいですね」


「様なし」


「それは無理ですよ」


「……頼むから」


「はいぃ!! それでは……サラ……うっ感激…………」


 うぇーと思いながら麗音愛は椿の隣に座る。

 えへへと椿は冷えた牛串を頬張り、車は出発した。



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― 新着の感想 ―
[一言] 佐伯ヶ原……意外と良い味出してるな、ふむ。 そうそうタンクトップ姿でケンイチの前に出たらあーた、運転中によそ見ばかりする事になるからね!危険だから!事故るから! 出てくる妖魔が変化しつつ…
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