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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第2章 制服の笑み花の涙

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椿、帰る~サービスエリアの名物はうまい~

 

 白夜団本部


「どういうつもりなんです!?」


 白夜団団長・咲楽紫千直美(なおみ)が雪春に怒鳴る。


桃純(とうじゅん)椿さんを、生家へ戻せと団長からもお話があったはずですが」


「それは確かに言いましたけど、

 準備が整って、生活を保証して学校の手はずも整えて……もちろん見守る世話人も見つけて

 という意味で……今回のような視察という意味ではないですし

 どうして玲央と剣一まで!?」


 直美の剣幕と対照的に、雪春は微笑すらしている。


「彼らが望んだ事です」


「それでは私は許可しません。何故わざわざ空き家に?何をしに行くの?」


 椿を遠距離移動させる許可書を、

 直美は机に放り出した。


「行ってはいけない理由でも?

 彼女の生家ですし、何か重大な資料があるかも……」


「屋敷の資料的な物はもう全て、回収しています。

 ただの帰省でしたら

 あなた達2人……佐伯ヶ原家(さえきがはら)の方と3人で行ってちょうだい。

 玲央も剣一も行かせません」


「……それでは団長の許可が下りずと彼に伝えましょう」


「それは…………」


「若者は、否定されればされる程に欲しがり固執しますよ。

 仲の良い2人を引き離そうとすれば、より求め合う。

 団長にもそんな思い出はありませんか?」


「……ありませんよ、それに……私は」


「僕は彼に嫌われているようですから、団長から2人に行かぬよう

 説得してください。出発は明後日ですからお早めに。

 それでは失礼いたします」


「同化剥がしだって私は反対なんですよ!! 絡繰門(からくもん)さん!」


 聞く耳持たず。雪春はバタンとそのままドアを閉め出て行った。


 結局は絡繰門雪春も、自分の思い通りになどならない。

 名ばかりのこんな団長……目眩を感じてイスに座り込む。


 携帯電話を出して麗音愛に電話を掛けようとするが、躊躇してやめた。


 その代わり、東支部の2人の資料を机から出す。


釘差龍之介(くぎさしりゅうのすけ)」「鹿義梨里(かぎりり)


「もしもし……えぇ東支部の2人、そうです異動の件……」




 椿の家へ行く日の早朝。

 支度をしている麗音愛に、直美が話しかける。


「玲央おはよう」


「母さんおはよう、なんか久しぶりだね。身体大丈夫?」


 ふらふらしている直美に、麗音愛はインスタントコーヒーを淹れる。


「えぇ、疲れてるけどね。ありがとう。あなたは?」


「めっちゃ元気だよ」


 そう笑う麗音愛は、母親の前の子どもの笑顔。


「テスト7位も本当に頑張ったわね……。ごめんね、こんなに日が経ってから」


「電話くれたし、俺もう子どもじゃないよ」


「……子どもよ……まだまだ」


「はは、母さんからしてみたらね」


 寝坊してバタバタと部屋を走り回りながら用意する剣一と対称的に

 最後のチェックをしてバシン! とスーツケースを閉めた。

 椿は大丈夫かな、とメールをする。


「玲央」


「ん?」


「白夜団の一族には、それぞれの掟や規律が色々とあるものなの」


 母親から急に白夜団団長になったように重々しく語りだす直美。


「あ、うん……なに……? 急に」


「お互いがお互いを見張り、深く介入せず、一定の距離で付き合うものよ」


「…………」


「桃純家は白夜団でも中枢の名門中の名門なの、そこらの者が気安く立ち入る場所でもないし」


「行くなって言うの?今から出発なのに」


「行くな、なんて言いません。

 でも桃純家の問題にたやすく首を突っ込まないようにしてちょうだい」


「わかってるよ」


 椿から『おはよう、準備オッケーです』とメールの返信がきた。


「椿さんも桃純家の御当主としての立場を受け継ぐのだったら

 あなたは咲楽紫千家の刀継承者としての立場も考えて行動しないと」


「そんな身分違いみたいな……」


「そうなのよ。

 咲楽紫千家は最強の刀を保有していても受け継げる者がおらずに没落したようなものなのよ」


「じゃあなんで団長なのさ」


「母さんみてればわかるでしょ? 誰もやりたがらない立場なの」


 直美は、ため息をついてコーヒーを飲むが、腕時計で時間を気にしている。


「……それはよくわからないけどさ、一族だの、そんなのこの時代に何か関係あるの??」


「どんなに時代が進んでも、立場というものは絶対にあるの……わかったわね?」


「わかんないけど……俺だって常識ぐらいあるし」


「お屋敷探索なんて遊び半分で絶対にしないでちょうだい」


 寝かせていたスーツケースをよっと立てて、リュックを背負った。


「わかってるって、椿が心配だから一緒に行くだけだよ」


「椿さんも御当主としての、咲楽紫千として」


「はいはい、わかったって! 兄さん! 時間だぞ!!」







「よっしー行くぞーー!」


 雪春は現地で集合ということになったので、剣一の運転で行くことになり

 麗音愛、椿を乗せ佐伯ヶ原を迎えに行く。


「おはよう」


「おはよう麗音愛」


 椿の荷物をトランクに乗せ、元気な顔を見て少し安心する。


「麗音愛、前に座って、佐伯ヶ原君苦手でしょ?」


「でも、いいの?」


「うん」


「じゃあ、近くになるまで……」


 途中で乗り込んだ、佐伯ヶ原は麗音愛を恍惚の表情で見ている。

 丁度、後部座席の右側に座ったので、助手席に座った麗音愛の横顔を見て

 スケッチを始めた。


 それに気付いた麗音愛は

 うえ~~と顔に出るが、佐伯ヶ原は気にしていないようだ。


「やはり美しい……」


 うえ~~と椿も思ったので

 携帯電話で麗音愛をオンラインゲームに誘う。


 ピコンと鳴った音で麗音愛も気が付き、すぐにゲームを開く。


 麗音愛と椿はオンラインゲーム。

 佐伯ヶ原は麗音愛の写生に夢中になった。


「いや……いいけど、えぇ……? 今の高校生って何? 俺めっちゃ孤独……えぇ……いいけど……」


「一回したらやめるから」


「いいけどさ」


 剣一はもう構わず、音楽のボリュームをあげて車を走らせた。


 ゲームをしながら2人はお互いのプレーを見てクククと笑いを我慢する。


 その麗音愛の楽しそうな顔を、佐伯ヶ原は見て、

 後部座席の椿の笑いを堪える椿の幸せそうな顔。


 気付かれないように、椿の顔も写生する。





 ある程度、満足すると麗音愛達もゲームをやめ

 ワイワイ剣一と話をしながらドライブを続け

 高速道路のサービスエリアに入る剣一。


「あ~まだかかるぞ、ここで昼休憩しよう」


 うーーんと伸びをする剣一に椿が駆け寄る。


「すみません、疲れますよね」


「全然、運転好きだから」


 サービスエリアの周りは山の中で森が鬱蒼(うっそう)と茂っている。


「すごい遠いんだね、よく学校まで来たよ」


 まだ途中とはいえ、ここからでも果てしなく遠く感じる。


「いっぱい野宿したって言ったでしょ。」


 2人はあの日の出逢いを思いだす。


 汚れて髪も切り捨てて少年のようだった椿。


 椿としては、脅して殺す殺すと追いかけ回して

 弁解の余地もないのに……。


「大変だったよね、もっと早くに気付いてあげれたら

 俺も何かしてあげられて助けてあげられたのに……」


 そんな風に言う麗音愛。


 椿はズキズキとは違う、キュッとなるような心臓。

 心臓が痺れるような、むずがゆさを感じる。


「麗音愛……あの時、ごめ……」


「椿、いいんだよ。もう謝る事ないんだから」


「…………うん」


「あれ、美味そう。タレがかかってるカツ」


 わざと食堂のパネルを指差す麗音愛。


「うん!あ、ラーメンセットもあるよ」


「いいね」


「相変わらず食うな~……」


「さすが玲央様、この辺りの名物らしいですね」


「いや、書いてあるし、人気ナンバーワンって」


「ご当地メニューってラーメンもなんだね。

 色んな場所のラーメンって違うんだ」


 麗音愛に連れていってもらい、初めてラーメンを食べたので

 ここのラーメンはもちろん初めてだ。


「わー楽しみだな」


「俺も、初めて」


 そういえば、麗音愛も両親が忙しく

 こんな遠出は……記憶にない。


 お互いが、お互いに出逢えた事で

 こんな風に新しい体験ができていると思う。


「ラーメンセットにする?麗音愛」


「うん、しよう」


 微笑む2人。

 サービスエリアでのご飯、旅の始まり。





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― 新着の感想 ―
[一言] 組織が絡むと二人だけの世界ではなくなる。 確かにそうだけど、何だかなぁと思ってしまう。 紅夜を倒さなければこの二人の未来はないの? 何だかなぁ…… いつか何の心配もなく二人でいられる時がくれ…
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