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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第2章 制服の笑み花の涙

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初めての海~ホワッツ!?水着~

 

 夏休み間近のある日。

 冷たい缶ジュースを昼休みに飲む麗音愛。(れおんぬ)


 テストも終わり、平和な時間も続いている。

 窓際で日差しは強いが、エアコンの効いた教室は居心地が良い。

 昼寝でもしようかと思っていたが……。


「おい、玲央れおこれ見ろよぉ~~!! わおわおわお~!」


 バサリと雑誌を麗音愛の机に置くカッツー。


「お……週刊ウィッス最新号かー! コネクトサスペンスネクストの続き気になる!」


「バカか! 漫画なんかいーんだよっっ!! 今回のグラビア、レロレナちゃん~! めっちゃエロいんだよぉーレロレロ!!」


「相変わらずだなぁ……カッツー」


「いいから、見てみろって」


 カッツーが机の上に、巻頭グラビアページをドン! と広げた。

 大胆ビキニ姿の女の子が笑顔でポーズをとっている。


「へぇ……」


「へぇってなんだよ! この、むっつりスケベ!」


「むっつりじゃないっつーの!」


「そうかぁ? 最近枯れてっぞ~~~!!」


「なんだよ、俺の何を知ってんだよ!?」


 麗音愛とカッツーが言い合っていると

 わらわらと、いつもの二人、西野と石田も集まってきた。


「俺にも見せてーお、すげー」


「袋とじあるじゃん開けろよ、カッツー」


「ふざけんなよ石田! これは俺だけのものだ! 手を離せ! 下民がっっ! クエッペッ!」


「きたねっ!」

 

 石田が恐怖で飛んだ。


「袋とじは開けたらダメだろ」


「悪かったって~でもすっげーレロレナいいなやっぱ」


 ワイワイと男子同士で笑い合っていると、後ろに影が。


「へーやっぱみんな男子なんだね」


「えっ!? わっ」


 何故か麗音愛のクラスに、椿フレンズの女子たちが勢ぞろい。

 そして後ろにはぴょこっと椿もいる。


「なぁに? それ」


 椿がキョトンとした顔で聞いてきた。


「椿~みんなでエッチな雑誌読んでたよ」


「椿ちゃん~~!! ち、ちがうよぉおお! これはぁ漫画! だよ!」


 カッツーが大げさに身振り手振りで言う。

 パッとみーちゃんが取り上げると、椿に見せた。

 あぁっ!と麗音愛も思う。


「綺麗な人だね、素敵」


 よくわかってないらしい。


「麗音愛、水着ってえっちなの?」


「えっ!! えぇっ!?」


 何故そんな質問をみんなの前でわざわざ自分に!? と麗音愛は焦る。


「だってみんな、海で着るんでしょ?」


「え? 海?」


「そうそう、夏休み入ったらすぐに、みんなで海水浴行こーって話になっててさ~~椿に聞いたら玲央くんに聞かないと、って言うんだもん」


「玲央くん、椿のこと~~束縛してんのー??」


「えっ俺が?」


 ぎょっとする麗音愛に慌てる椿。


「れ、麗音愛はそんなことしないよ!! 一緒の習い事とかあるから! 麗音愛に聞かないとって言ってるだけだよ」


 実際には、白夜団からの命令で有名観光地や沢山の人が集まる場所には行ってはいけない事になっているので許可が必要だからだ。


「海ー!? うはっいいなー! 俺も! 俺も行きたいーっうみうみうみうみーっっ!」


「ごめーんカッツくーん! 今回は玲央くんだけお誘いで」


「ええええっおげぇええ!!」


 残酷な言葉に灰化するカッツー。


「え、俺も?」


「うん、行けたら一緒に行こう! 麗音愛」


「場所は……?」


「小さい海水浴場なの、うちのおじさんが海の家やってるんだけど~人が全然来ないから遊びに来てってさ」


 と、みーちゃんが言う。


「えーじゃあ俺ら行ってもいーじゃーん! 焼きそばめっちゃ食うよ!? 俺」


 椿フレンズが苦笑いする。


「私達、一緒に遊べないよー?」


「ちょっと今回バスケ部男子と行くことになってるの、ごめんね!」


 ゆーちゃんが笑って手を合わせた。


「ガーーン」


 カッツー完全敗北。


「玲央くんは、つばちん御指名だし」


「椿ちゃん、水着持ってないんだって」


「あぁ……そういえば」


 走ったりばかりでスイミングをした事はなかったか……。


「ねぇ! 行っても大丈夫だよね? お願い~! 椿、海行ったことないってさー海見せてあげたいんだもん」


「とりあえず場所、教えて?」


 みーちゃんがPLINで、麗音愛に場所を送った。


「なんで行っちゃダメなとこあるのー?」


 これだけ元気な椿だ。

 体が弱いなんて言い訳ももうできないだろう。


「えーと、アレルギーとかあってさ! 地域の群生している生物と、水質とか、でね。先生に聞かないとわかんないんだよね?椿」


「うんうんそうなの」


「いつわかるの?」


「早めに教えるようにするよ」


「くそーーー! 俺も行きたかったぁぁぁぁぁぁ女子の水着姿ぁぁぁぁあ!! 玲央絶対写真撮りまくってこいよ!」


 ぎゃあーー! と女子の悲鳴があがる。


 ◇◇◇


 その日の帰り道、麗音愛と椿は一緒だ。

 白夜団からは海水浴の許可が降りた。


「行けて良かったね」


「うん!! ねぇ、麗音愛は明日塾ないよね?」


「あぁ~そだね」


「水着、選ぶの付き合って?」


「えっ!?」


「えっ!?」


「お、俺は無理だよ」


「えっ!?ダメなの!? スポーツ用品店よく行くじゃない」


 断られた事に驚く椿。


「あ、え、え?あー競泳用買うわけじゃないだろ」


「競泳用でいいかなって思ってるよ? 鍛錬でも使える方がお得じゃない?」


「え、うーん……俺にはなんとも……でも、みんな多分そういうの着ないよ」


「ほら! やっぱり詳しい~今日も水着の写真見てたし」


「だからー! それは誤解…… 友達と買いに行きなよ俺は無理だよ」


 余計な誤解を受けた。カッツーへの恨みが湧き上がる。


「なんで!?」


「女の人の水着いっぱいあるとこは、男は行かないよ」


 大人なカップルは行くのかもしれないが、麗音愛にとっては 女性下着店と同じくらいハードルが高い。


「そうなんだ……私も男だったら良かった」


「んー?」


「男だったらもっと楽しかったと思う」


「そうだなー椿が男だったら……どうだろ、あんまり変わらないような気もするけど」


「そう?」


「こうやって一緒に帰ったりゲームしたりとか、鍛錬したり……」


「私も教室でワイワイしたかったし」


「それは男女関係ないよ。三年で同じクラスなれるといいな。特進目指そう」


「うん! じゃあ明日水着買いに行くのは、詩織ちゃんに手伝ってもらおっと」


 水着の話はそこで終わったので、内心麗音愛はホッとしていた。


 ◇◇◇


 二日後の夜。

 塾から帰宅すると、椿が家にいた。


「麗音愛、おかえりなさい」


 剣一と一緒に夕飯を食べ、そのままテレビを見ながら話をしていたらしい。

 麗音愛も着替えてソファに座る。


「おー海水浴かぁ俺も行きてー」


「剣一さん来たら、みんな喜びそうです」


「兄さんなんて呼んだら男達から大顰蹙だよ」


「まぁ否めないな、それは。あはははは!」


 夜なのに酒ではなく、アイスコーヒーを飲む剣一。


「椿ちゃん、水着買ったの?」


「あ、はい買わせてもらいました」


 自分が受け取るべきお金なのに、椿はいつもこういう言い方をする。


「何着でも買っていいんだよぉ〜俺も買ってあげたい! 今度俺とも行こうねープールも楽しいよ」


「は、はい」


「結局、水着ってどんなやつ買ったの?」


 なんとなく聞いてみた。


「内緒なの、みんな…… 当日まで言わないって約束」


「へー? 女子の考えることはよくわからないなぁ」


「お前には、わからんだろうなぁ」


「なんだよ」


 やはり剣一はその後車の鍵を持ってすぐどこかに出かけていった。

 二人でお茶を飲みながらテレビを見ている。


「あのね」


「ん?」


「本当は水着、麗音愛に変じゃないか見てもらおうと思ったんだ。 約束破ってしまうけど……」


「あ、うん」


「でも、恥ずかしくて……」


「え」


 なんだかいつもより距離も離れてて、急に恥じらう椿。

 麗音愛も、急にドキドキ動悸がしてきた。


「なっ……ど、どんな水着選んだの? そんな変なの?」


「わ、わかんないよぉ、普通がわかんない! だって変なのもあったし紐みたいなのもあったし」


「ひ、紐って……わかんないって……」


 頭にレロレナのセクシー水着写真が浮かぶ……のを必死にかき消す。


「あれで本当に大丈夫なのかな」


「あ、明後日なんだよ? 海」


「う、うん、いや、なんでもない!! さ、そろそろ寝る時間〜おやすみー!ごめんね!!」


 そう言うと、バタバタと帰っていく椿。


「おやすみ……なんなんだ……」


 確かに、初めて出会った日。

 萌え袖や素肌ジャージにドキドキした事もあったけど……今はそんな事はない……親友だし!!


「椿は俺の、親友だぁあああああ!!」


 麗音愛は正気を取り戻すため

 部屋で腕立てを100回して寝た。


 ◇◇◇


 そして終業式を迎え、夏休みが始まった次の日。

 素晴らしい晴天!

 みんなで電車に揺られワイワイと移動する。


「おーサラ! よろしくなぁ!」


 同じクラスのバスケ部員が爽やかな笑顔で笑う。


「悪いな、俺まで参加して」


「悪いなんて、言うなよ。楽しもうぜーいいよな~~椿ちゃんのいとこなんてーそんでこんなレベルの高い女子と海で遊べるとかサイコー」


「そ、そうだね」


「椿ちゃんの水着とか見慣れてんの? 小さい頃も可愛かった?」


 よく聞かれる椿の質問ナンバーワンだ。

 小さい頃も可愛かった?何度聞かれたか。


「いとこでも、すごく遠くにいたから~遊んだりとかしてないんだよね」


 はは、と誤魔化して笑う。

 ふーんそっかと、他の女子に絡んでいった。


 すぐに気付いた椿が席を移動して、麗音愛の隣に座る。


「麗音愛、隣いい?」


「うん」


「ごめんね、なんか私のせいで一緒に来させちゃったけど、バスケ部の人知らないよね」


「椿が楽しいなら、いいさ」


 にっこりと本心で笑う。


「麗音愛……ありがとう」


「海、初めてだよね。沢山遊ぼう」


「うん!」


 子供のように無邪気に笑う椿。

 いつもはハーフツインだが今日はツインテールで一層元気さアップに見えて

 短いショートパンツにTシャツが良く似合ってる。


「椿ー! こっちおいでよー」


「ううん! 私、ここにいるー!」


 そう返事すると、麗音愛が気遣う前にすぐ二人の好きなサスペンス海外ドラマの話をし始める椿。


 その考察が始まるとついつい麗音愛も真剣に聞いてしまう。

 結局目的地まで二人でずっとお喋りをしていた。



「わーい! 海だー」


 海が目前の駅に着くと、みんな歓声を挙げる。


 晴天の光に海が輝いている。


 潮風の匂い。


 ザーン……と遠くに聴こえる波の音。


 楽しそうに海で遊ぶ人の声。


 椿は動かない。


「……」


 隣で見ていた麗音愛には椿の気持ちがわかって、何も言わず、見守る。


「あれー椿ぃお気に召さない?」


 大人しい椿に、みんなが注目する


 椿は声が出ない程感動していた。


「すごい!! すごーい! 大きいー! 麗音愛! すごい!海 だー!!」


 大ジャンプして麗音愛の肩を叩く。


「あは! 良かったな!」


「きゃほーー!! 麗音愛行こう!!」


「おう!」


 二人で海へ向かって走り出すのを

 椿フレンズやバスケ部達が眺める。


「まじで見たことないんだー」


「可愛い! 連れてきてよかったね」


 遠目でもきゃっきゃっと、ちょこまかはしゃぐ椿。


「わーいー大きいー!」


「大きいなー!!」


「きゃーーー!! 冷たい~~!!」


「あはは!!」


 スニーカーを脱ぎ捨て海に入る後を追って、麗音愛も靴を脱いで海に入っていく。


「二人とも可愛いね、玲央くんまで」


「確かに、玲央くん意外」


「微笑ましいよぉ、めっちゃ動いてる」


「意外だわ、サラキンってあんなキャラなんだな」


 二人で波を蹴り上げて、舞い上がる水しぶきがキラキラと輝く。




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― 新着の感想 ―
[一言] あれあれ?みんなが本当の麗音愛に気づき始めた? 本当の麗音愛が見えたら、とんでもないことになるんだろうなぁ。
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