無意識に鍵をかけて
椿は一度スーツを脱いでから、咲楽紫千家にお邪魔した。
もう18時だ。
血まみれのシーツにタオルに、2人で洗濯。
タオルも敷いていたのでベッドマットは無事だった事に椿は安堵する。
「それでは……どうぞ、プレゼントです!!」
「はい、ありがとうございます!!」
ラッピングもできずだったが、家に戻った時
可愛いシールを包装フィルムの上に貼って渡した。
そこからの真剣勝負で大盛りあがりの麗音愛と椿
今朝のあんな事があって、お互いに照れていた部分が
またいつものワイワイな親友2人に戻っていく。
大笑いして、最高に楽しい時間。
「あそこのドリフトどうやったのーーー!?」
「あれはさー」
サイダーを飲んで一休みの椿が、いつものように麗音愛の肩にもたれる。
「こうやって、ここでボタンを押す」
「なるほど! よし! 再戦だよ!!」
「次も俺の勝ち!!」
「負けないーー!!」
一段落ついて21時過ぎ
2人でリビングでカップラーメンをすする。
「あんなに食べたのにお腹すくもんだね」
「だね。冷凍ご飯もあるよ」
「さすがに大丈夫、このカップ麺美味しい! 洗濯時間無駄にさせちゃってごめんね」
「もう乾燥機から出せば終わりだよ。もう休んだ方がいいね
明日から学校だし」
もふもふ君も一緒に連れてきていた椿は、抱きしめながら頷く。
「あの、プレゼントありがとう。他にも迎えに来てくれたり怒ってくれたり
いつもありがとう」
「……いや、そんな。……俺こそ楽しいプレゼントありがとう、またやろうね」
「うん! 私、麗音愛が親友で良かった……!」
ぬいぐるみを抱き締めながら
にっこり笑った椿が可愛くてドキッとしてしまった麗音愛。
「ん」
自分でドクンとした違和感に、変な声が出た。
「ん?麗音愛どうしたの?」
「いや、なんでも……俺も椿が親友で良かった」
「えへ」
「……昨日、もし椿が紅夜の元に連れて行かれてたらと思うと、死ぬほど怖くなった」
素直な気持ちだった。
あの時、四肢が千切れても構わないと思いあの世界に戻って
一緒に戻ってこれたのに
一瞬の判断で失ったかもしれないと思うと恐怖しかなかった。
「私も……怖かった」
紅夜の元へ行く恐怖もあるが
麗音愛にもう会えなくなったら、とは言えなかった。
「もう絶対そんな思いさせない」
椿への誓いと共に、自分への誓い。
麗音愛の強い意志の瞳に見つめられ
親友だから、と思いながらも椿はぽーっとなってしまう。
「椿?」
「あっ麗音愛……!わ、私も麗音愛に何かあったら絶対助けに行く!」
「おう!」
「おう!」
コツンと拳を合わせる。
「ただいま~~お、椿ちゃん、今日はお疲れ様~」
「お疲れ様でした。もう帰ります」
「なに、そのぬいぐるみ~~可愛い~~」
もふもふ君を剣一に見せると、剣一は可愛い可愛いと、椿の頭をなでなでする。
「可愛いですよね!!私大好きで、麗音愛がプレゼントしてくれたんです!!!」
「へ~~~~ぇへ~~~~え」
ニヤニヤと見てくる剣一に蹴りをいれたくなる麗音愛だったが
もう何も言わずに椿を送った。
玄関でいいと椿は言って、もふもふ君を抱いて帰っていった。
麗音愛は乾燥機から出した後
自分の部屋に行って色々と取り替えたベッドに倒れ込む。
勉強もしなければ……と思うが、さすがに疲れた。
ふんわりと、椿の香りがした。
椿がお友達と一緒に買ったって、すごく喜んでいたコロンの香り。
死んだ心が、脈打つ。
抱き締めて感じていた、温もり。
目を開けた時の頬を染めていた椿の瞳。
椿がもし連れ去られたらと感じた恐怖。
さっきの眩しい笑顔
ドクン……心が熱くなる。
「……っ、なんだ……これ……」
でも麗音愛は無意識に鍵をかける。
キリキリと近づいてくる死人、死肉、骸骨、呪魂に
ふーーーっと整列の吐息をかける。
椿を守るために、今日も呪怨のカーテンをかける。
「ようやるな……玲央……」
剣一はもちろん弟の毎日の作業に気付いていた。
ビールを飲みながら窓の外を眺める。
椿はもふもふ君を抱き締めながら、寝る準備をして
ベッドにダイブする。
あんな風に抱き締められながら眠れて、今日は寂しくて眠れない不安があった。
でも
もふもふくんがいる。一緒にお布団に入って抱き締めると安心できた。
椿は、麗音愛に『おやすみ・机の上見て! 触れるよ』とメールすると
いたずらで、距離と角度を計算し
ふわぁっと小指の先ほどの炎を麗音愛の勉強机の上にチラチラと出現させた。
麗音愛が、その炎に触れると飛散して
ふわっと暖かさが麗音愛を包み、あの子守唄を思い出しながら麗音愛も眠った。
お互いが、またお互いの温もりを感じて眠る。
残業を続ける直美のオフィスにまだ、雪春はいた。
「団長、何をそんなに怯えてらっしゃるんです?」
「私が? 何もご心配なく……今回はご協力感謝します」
「椿さんと玲央君の御関係ってどういったものかご存知ですか?」
「……友人関係と伺っていますし、椿ちゃんはうちで引き取っているようなものですから
兄妹みたいなものですよ。
早く自分のお屋敷に戻って地元の学校へ通えるようにしてあげてくださいな」
「それは良かった……」
「え?」
「いえ、僕の個人的な感想ですよ、この桃純家の家宝はこちらで厳重に管理させてもらいますね」
そういうと、雪春は部屋から出て行った。
「彼女、本当に篝さんにそっくりですよね……それではおやすみなさい団長
僕にできることがあればなんでも言ってくださいね」
「……お疲れ様」
バタンとドアは静かに閉じる。
はぁーっと深い溜息をついて机に倒れ込む。
「……篝……」
直美はどこか宙を見て、その名を呟いた。




