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色の無い夜に・Colorless Night~最凶妖魔王を倒すため最強呪刀を継承した俺は、魔王に反旗を翻した妖魔姫とじれ恋学園生活しながら妖魔を討つ!  作者: 兎森りんこ
第2章 制服の笑み花の涙

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初給料でお買い物

 


 椿は、佐伯ヶ原のデッサンに付き合った後

 電話で御見張りさんに許可をもらい一人でモールに来ていた。


 椿も今日が給料日だったが、まだ口座が無いので手渡しでと言われている。


 しかしせっかくの初めての給料日なので

 今あるお小遣いで、咲楽紫千家の皆さんに何かプレゼントを買おうと考えたのだった。

 でも物を買うには、誰が何を好きなのかわからず

 とりあえず剣五郎が欲しがっていた事を知っていたCDとDVDを買ったあとは

 無難なお菓子を買って帰ろうとぶらぶらしていた。


「ケーキ屋さんに、チョコレート

 おせんべい……何がいいかな。」


 こんな場所に1人で来るのも初めてだ。

 皆で来ると楽しいのに、今日は寂しい気持ちになる。


 麗音愛もいない。ほんの数時間なのに、どうしてこんな気持ちになるのか。

 キラキラしたお店がいっぱいで、なのに寂しい。

 美子さんと楽しんでいるのかなと思うと、いつも自分で決めた事なのに哀しくなる。


 携帯電話が鳴った。


「麗音愛!」


 慌てて通話ボタンを押す。


『椿? 今どこ?』


「麗音愛……! あ、あのモールにいるよ」


『あ、本当に? 今、俺も向かってるから。合流しよう』


 モールの真ん中のオブジェ前のベンチを指定され

 わーいとピョンピョンで走り出す椿。


「なんでこんなに嬉しいんだろう」


 でももしかしたら、美子さんも一緒なのかな? と思った時

 麗音愛が1人で学ランのボタンを開けて走ってやってきた。


「麗音愛っ!!」


「モール来てたんだね」


「うん!」


「椿……髪どうしたの?」


「あ、これ……」


 椿の髪がとてもおしゃれな、編み込みハーフアップになっている。


「佐伯ヶ原君がやってくれたの。自分じゃ良く見えないんだけど」


「佐伯ヶ原が……」


 艶のある髪に大きなリボンが後ろで輝いて椿にとても似合っている。


「へ、変!? もしかして!! 嫌がらせされた!?」


「いや、いいと思うけど……」


「よ、良かった~綺麗にしてくれるって言うから」


「何もされなかった?」


「ん? うん。大丈夫だよ」


 それでも、椿の髪を鋤いて結って、そんな時間が確かにあったんだろう。

 リボンもビジューが付いていて結構高そうだ。


「麗音愛は楽しかった? あ、楽しいに決まってるよね」


「あ……うん」


「良かった」


 やけ食いじゃない慰めがいいと言われて、なんて言っていいのかわからず

 無言になってしまったが店員さんからのSNSアップで次回来店カフェラテサービスの話をされ有耶無耶に流れてしまった。

 それで食べ終わって『じゃあまた』と言われ別れた。


「……」


「麗音愛、どうしたの?」


「ごめん、なんでもないよ」


 今日は楽しく過ごそうと色々考えていたのに、なんだか、どうしてこうなってしまったのか。

 歯車が狂った気分。


 今日は初の給料日で椿とモールに来る予定で、楽しく過ごして、家にお土産を買って……そう思っていた。

 こんな風に思ってしまって美子に対しても罪悪感を覚える。

 でも、まだ取り戻せるかなと麗音愛は考えた。


「あのさ、モールにパジャマ売ってる店あるみたいだし、見よう?

 買ってあげたいって話しただろ」


「え!? いいんだよ

 私、もらったパジャマで十分!

 ジャージもあるし、別にあれ着なくてもジャージ好きだから洗濯で十分回るんだ」


 本来ならお嬢様なのに、育ちと今の環境で椿は超節約化倹約家になっている。


「そ、そう」


「でも、麗音愛が一緒に買うなら

 買ってもいい! 私も麗音愛の買う」


「いや、ふわふわとか俺が着てたら兄さんにどんだけ笑われるか……」


 ネットで見て、男物もあるのは知ったが

 あれを着て我が家を歩いていたら、きっとみんな『どうした!?』と思うことだろう。

 17歳男子はそんな事はできない。


「私、麗音愛に買ってもらうわけにはいかないよ」


「え」


 少しグサッとくる麗音愛。


「むしろ私の方が麗音愛に色んな御礼しないとだよっっ!!

 だから私が買う!

 あと、麗音愛のお家の皆様にも!! 何か買いたくて見に来たの!!」


 少しホッとする麗音愛。


「そう、母さん達にも初給料で何か買ってあげたいな

 今日帰るの早いって言ってたし、みんなで夕飯食べられるのも久々だ」


「うん!! あのね麗音愛にもあげた美味しかったチョコ屋さんがあったの!

 あそこのチョコがいいかな? 何にしよう!?」


 麗音愛は、いつもと同じ空気に戻ってすごくホッとしている自分に気付く。


 ぴょんっと楽しそうに歩く椿と一緒にモールを歩く。


「色んな物があって、すごいよね

 みんなキラキラしてる」


「うん、そう言われたらそうだね、

 こんなに沢山の物があるってすごい事だよな」


「うふふ、なんでも欲しくなっちゃう」


「さっき、俺に買ってもらうわけにはいかないって言われたけど……

 やっぱり、何かプレゼントしたい」


「えっあ、ごめんなさい、あの嫌な気持ちにさせちゃった?

 私また言葉足らずで……申し訳ないって思ったから……」


「嫌な気持ちになってはいない……けど

 じゃあプレゼントさせて?

 色んな人が椿にプレゼントしてるけど俺、した事ないだろ」


 たまたま宝石店の前だった。

 そんな場所で椿の歩みが止まる。


「えっ……麗音愛」


「え?」


「わ……」


「ん? わ? 椿?」


「……忘れちゃったの?

 誕生日プレゼント……もらったよ」


 哀しそうな顔をする椿。

 もちろん、あの日の事を

 麗音愛は何一つ忘れる事なく覚えている。


「え……あ、も、もしかしてボタン?」


「うん……ボタンも……花火も」


「あんなの……」


「あ、あんなのじゃないもん……っ!」


「えっ」


 椿が泣きそうな顔をしたのを見て麗音愛は焦り動揺するが、ガシッと椿の手を握る。


「!」


 またこの前のように逃げられる前に、痛くないように手を握った。


「ボタンまだ持ってたの?」


「う、うん……もちろん……」


「俺、あの時なにも持ってなかったから」


「私が欲しいって言ったんだよ……だから

 それなのに」


「俺の手、握って」


「えっ」


「握ってて」


「は、はい」


 椿からもぎゅっと麗音愛の手を握る。

 麗音愛は、きちんと説明しなければ、とそのつもりだった。


「俺はもっとちゃんとしたもの

 あげたかったんだけど、何も持ってなくて、

 俺としては、ボタンは……これでいいのかなって思ってたんだ。

 椿が、大事に持っていてくれるって知らなかったから」


「……」


「だから、誕生日プレゼント

 俺の自分で稼いだお金できちんとあげたかった。

 それを、わかってほしくて……」


 キラキラと星が輝き降り注ぐような

 麗音愛の瞳を椿は幸福感いっぱいで見つめていた。


 ハッとなって言葉を紡ぐ。


「わ、私もう、沢山もらってるよ。

 あのボタンは私の初めての誕生日プレゼントだし

 こんなに綺麗な世界を見せてもらってる」


 ぎゅっと温かい麗音愛の手を握る。


「ありがとう麗音愛」


 微笑む椿を見て、麗音愛も微笑む。


「傷つけたくて、言ったんじゃないんだ」


「うん……」


 2人とも、よくわからない感情で下を向く。


「お、俺のワガママでプレゼントしたいんだ。だ、ダメかな」


「じゃ、じゃあ、私も、したい

 麗音愛の誕生日1ヶ月前だったんだもんね!?」



「あれ、椿ちゃんじゃね?」

「手繋いでる???」


 どこかで声が聞こえて

 お互いパッと手を離す。


「ご、ごめん! わかってほしくて」


「謝らないで! わ、わかったよ、だから私もプレゼントしたい」


「俺の誕生日はもう過ぎちゃって結構経つし」


「私も買いたい!! ワガママで!! 生まれて初めてのお給料だもの!!」


 どうにも椿も譲らなさそうだ。


「じゃあお互い選ぼうか」


「うん!」


 でも、結局相手へのプレゼントを提案するばかりで

 決まることもなく、時間も迫り家族に買うスイーツを選ぶ方に意識がいって

 沢山のチョコレートとケーキと焼き菓子を買って帰った。


 それでもとても楽しい時間だった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 二人を中心に半径5mをがっちり結界でガードしておきたいんですがいいですか? 誰も入れない!誰も入れない!だ〜れも入れない!( ー̀֊ー́ )✧︎ 絶対に入れないから!
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