イトコンれおんぬ
あの椿を困らせた告白から数日
平和な日が続くある日の昼休み時間。
麗音愛は教室でパンを食べた後は机で読書をしていたが、
「玲央、お前
イトコンって呼ばれてるぞ」
カッツーがニヤニヤと話しかけてきた。
「いとこん? 糸こんにゃく?
なんだよ、それ」
「椿ちゃんの、、イトココンプレックス
シスコンみたいなさ」
「なっ!! 俺が!? なんで!!」
「周りウロチョロしてるもんなー
この前、椿ちゃんに告った男
ぶん殴ったんだって?」
「そんな事するかよ……」
西野と石田も話に加わる。
「でも、その男
椿ちゃんに襲い掛かったって聞いたぞ
殴って正解! 玲央が殴ってるとこ想像できないけど」
「うーん、話に
尾ヒレがつきまくってるって」
「玲央が殴るとかないよな、虫も殺さないような男だもんなお前」
西野は信じ切ったように笑う。
まぁ
裏ではバッサバッサと妖魔を斬りまくっているのだが。
「こんな注目されるなんて
人生初じゃないのか?」
「俺、玲央が同じ中学とか言われるまで
気付かなかったしな」
麗音愛とカッツーは同じ中学校出身なのだが
仲良くなったのは高校に入ってからで
同じ中学だと言う麗音愛の言葉をカッツーは疑いまくり
卒業アルバムを見てやっと納得をした。
咲楽紫千なんて名前が他にいるかよ! と周りには言われたが
カッツー自身全く麗音愛の存在を知らなかったので仕方ない。
でも本当は何度か挨拶くらいはしていたのであった。
もちろん麗音愛にかけられた呪いのせいである。
「言いたい放題かよ
俺は裏方、地味、でいいんだよ」
「椿ちゃんのイトコなんだから
もう裏方ではいられないよな~
いいよな~いいよな~
人生の幸運全部使ってるよな」
「そこまで??」
「しかも、美人藤堂美子図書部長が
幼なじみとか……なにそれ」
美子も美人図書部長と言われ憧れる男子も多い。
西野は美子に少し憧れを抱いているが秘密にしている。
「兄さんも伝説生徒会長だしな……
玲央って地味にすごくね?」
うんうん、と石田とカッツーが頷く。
「合コン! 合コン! か、い、さ、い! しろ!
兄ちゃんの威厳使ってでもいいから合コンしろー!!」
カッツーがうるさく喚く。
「お前の頭の中はそんな事ばっかりなのか!!」
「当たり前だろっ」
「玲央は最近枯れすぎだぞ!!どうした!?」
「か、枯れすぎ……」
まぁまぁと西野がカッツーに落ち着けと促す。
「図書部長とはどうなん? 俺ずっと片思いしてるんだと思ってたけど」
「なっ……友達だよ、幼馴染のね」
「じゃあ椿ちゃんは?」
「椿は親友」
「女の子と友情育めるって不健全じゃんかぁ」
ビシッと決めたつもりで麗音愛に指を差すカッツーの右手を
石田が苦笑いでその手を降ろさせる。
「変かな……」
「玲央は優しいからさ、俺はいいと思うけど
カッツーみたいんだったら、女子も警戒するしな無理だろ」
「女ぁあああああ! 女と喋りたいぃいいい!!」
暴走しだすカッツーに麗音愛、石田、西野の三人は顔を見合わせ苦笑いした。
「カッツーあんまり椿に近づくなよ」
「イトコン! 玲央のイトコン!!」
「イトコン言うな!!」
「麗音愛っ!!お待たせー」
放課後、教室に椿がやってきた。
麗音愛のクラスメイトも
椿に声をかけている。
「椿ちゃん今度遊ぼー」
「あ、機会があれば、あはは」
なんとなく上手い断り方を覚えた椿。
麗音愛の元に
ニコニコ
子供のように近付いてくる。
「麗音愛~美味しいチョコもらったの
2つもらったから麗音愛にも食べさせたくて
はい!」
「え、2個しかもらってないのに?俺に?」
「うん!」
キャンディのように可愛く包まれたチョコを麗音愛は受け取った。
「ありがとう」
ほわっと温かくなる心。
麗音愛の笑みを見て、椿も微笑む。
「椿ちゃんカワイイ~~~ぺろぺろぺろりーん」
にこにこ笑っていた椿の顔が引きつる。
「カッツー、やめろ」
「お話するだけだよぉ」
と麗音愛の後ろにいつつ、でへでへこんにちは~と挨拶するカッツーに
椿もこんにちは、と挨拶する。
「椿ちゃんは玲央とどんな関係なのぉ?」
「親友です!」
嬉しそうに椿が言う。
「本当にそうなんだぁ」
「そうですよ!!」
「安心した!!フリーダム椿ちゃーん!!
バイバーイ!! バイナラ玲央んふ」
ひひひと、ニヤけてカッツーは帰っていく。
あまりの気持ち悪さに麗音愛は引いていたが、椿はバイバイと手を振って
その後、麗音愛にニコッと微笑む。
「へぇ2人は親友なんだ」
ふいに美子が現れた。
「美子さん」
「こんにちは」
「どうした? 図書部手伝うことある?」
「ううん、今日はその御礼したいと思って
今日入るでしょお給料」
こそっと美子が耳打ちする。
そう、今日は白夜団の給料日だ。
麗音愛と椿は前回の仕事の給料が初めて入る日だった。
「お茶して帰らない?」
「え」
「あ……」
麗音愛は今日が給料日なことはもちろん知っていて
帰りにモールに椿を誘って行くつもりだったのだが……。
特別に約束してはいなかった。
そんな話を聞いてしまった椿は椿で自分は邪魔だと感じる。
「私、先に帰るね!!」
「え、椿」
「あら椿さんも時間あったら一緒に行こ?」
「あ、でも……」
そこへ佐伯ヶ原も教室のドアから声をかけてきた。
「おい! 椿! お前美術室に来い!」
「えっ!? な、なに佐伯ヶ原君キャラ変わり過ぎだし……」
「お前のデッサンが必要だ!! 仕方ないから頼んでやる!!」
可愛い顔をしているのに、飛び出す言葉は乱暴で
周りの生徒もぎょっとしているが、佐伯ヶ原は特に気にしていないらしい。
「はぁ!? もう、何~~それが頼む言い方……?? でも……
じゃ、じゃあ麗音愛、美子さんまたね」
「え! 行くの?」
佐伯ヶ原は麗音愛をじーっと観察すると拝んでいるようだ。
「困ってるみたいだし、麗音愛楽しんでね」
椿は駆け出して教室を出て行こうとする。
「夕飯には帰るんだよ! 俺も帰るから」
「うん!」
廊下で佐伯ヶ原と言い合いながら、歩いて行ってしまった。
突然の事で麗音愛はしばし停止してしまう。
「あの佐伯ヶ原って人、白夜団って知ってた?」
「……うん、でも仕事もしたことないし、なんだか苦手な雰囲気で……
ごめんね、先に話した方がよかったよね」
「いや……美子が謝ることじゃないよ」
「2人とも、可愛くて似合ってるよね」
「え?! そうかな……」
確かに佐伯ヶ原は女の子のような背格好の見た目は無毒な男子だが……
心配になってしまう。
「イトコン……」
ぼそっと美子が呟く。
「な、なんで美子まで」
「行こうっ!! モールの近くに素敵なカフェがあるんだよ」
「う、うん」




