子犬系男子?佐伯ヶ原登場
夕焼けの教室に1人ぽっちの椿。
1人とか、そんなのは平気だった。
ずーっと平気だったのに……何故か哀しいような気がしてきた。
恋……ってなに? と椿はぼーっと考える。
婚姻関係とはまた違う……。
さっきの男子生徒……。
ああいう顔して近付いて来る男は怖い。
いつもああいうギラギラした目をして息を荒くして、腕を掴んできたり身体に触ってこようとする男達。
紅夜にされた事も思いだす。
殴りつけるチカラはあるけど、嫌悪感は消えない。
男と女で
恋で……男女交際?
麗音愛と美子さん……
と、またぼんやり考え、胸がモヤモヤする。
「あ……渡辺さん?」
机に突っ伏していた椿が顔を上げると、学ランの男子生徒が教室の扉付近に立っていた。
でも可愛らしい顔をして背も低いので女子のようだ。
「……あなた誰?」
「あ、同じクラスの佐伯ヶ原です」
「あ、ごめんなさい。ぼーっとしてたから、嫌な感じに……」
「急に話しかけちゃったから、僕が悪いんです」
「あ、謝らないでください」
何故かカバンを持っても動こうとしない佐伯ヶ原。
「渡辺さん、これ、あげる」
「ん?」
掌にチョコレートとキャラメルと飴がふいに手渡された。
「わ、こんなにいっぱい!」
「甘いもの食べると、ちょっと癒されるでしょ?」
「えへへ、ありがとう。でもどうして私に……?」
「ちょっと哀しそうに見えたから、どうぞ食べて」
「お腹空いてたからかな、お友達待ってるんだけど、まだ来なくて……美味しい!ありがとう!」
「お友達って咲楽紫千君ですか?」
「ん?うん」
もぐもぐ頬張る椿。
佐伯ヶ原の瞳は夕陽が当たって不思議な色に見える。
「椿さんって咲楽紫千くんの従妹さんなんですってね」
「うん、そうだよ」
「咲楽紫千くんって、すごくカッコいいですよね」
「え?」
唐突に言われ、よく聞き取れなかった。
「僕、あんなにカッコいい人他にいないなって思うくらい……常人レベル超えてるんじゃないかなって 思うんです」
「え……」
この人、麗音愛の姿を見られる?
よほどの能力者じゃないと麗音愛の呪いを超えて見れるはずないのに、と少し椿は警戒し、いつでも細剣と炎を発動させられるように気を張り詰める。
「あ、ごめんなさい。変な話しちゃいました。
他の人にはわかってもらえないけど、渡辺さんならわかってもらえるのかなって」
「うん……わかります」
「やっぱり!? ものすごく綺麗でかっこいい人だよね!?」
頬を染めて麗音愛を褒める佐伯ヶ原に、邪気は見えないような気がしてきた。
「うん! とっても綺麗でかっこいい!」
「なんか、嬉しいです」
「麗音愛のお友達なの?」
「いえ! そんな違います」
ドタドタと廊下を走る音が聞こえてきた。
「椿! ごめん!! 図書室の棚作ってたらこんな時間に!」
「咲楽紫千君……!」
佐伯ヶ原が頬を染める。
「ん……?」
椿と二人で教室に男がいるので、先程の事もありついジロっと見てしまった。
「あっ僕、帰ります」
「佐伯ヶ原くんはクラスメイトなんだよ」
「あ、すみません。ちょっとさっき色々あって……つい」
「いえ! お邪魔しました!」
「麗音愛の事話してたんだよ」
「え? 俺?」
「わ! 渡辺さん!しーっ」
『?』と怪訝な顔で麗音愛に見つめられ
佐伯ヶ原はわーっと慌てる。
「あ、あの
あのあのあの僕、美術部なんです」
「は、はぁ……」
「お、お友達になってくれませんか!?」
「え?」
「私ともお友達になってくれたら嬉しいな」
ぴょんと麗音愛の隣に来る椿。
「椿?」
「咲楽紫千君、ダメでしょうか」
「麗音愛……」
二人に子犬のような目で見られ、麗音愛もタジタジになるが頷く。
「俺なんかでよければ……」
「嬉しいですっ!!」
「良かったね~~」
佐伯ヶ原はペコペコと礼をして帰っていった。




