部長な剣一くん
裸で眠る剣一の携帯電話が鳴る。
「あ~~ふぁい、あーはいはい」
抱きしめてくる裸の女性にシーツをかけて、
しーっとジェスチャーすると自分は起き上がった。
「俺、出先だから……玲央の事は知らね。
報告ね、送ったけど
あ~~はいはい、事務所ね。あーはい、わかりました、行きます伺いますよ、はい」
電話を切って、はぁーとため息をしてベッドに座る。
「行っちゃうの~?」
「うん」
「大学?」
「いーや、野暮用」
「もう~久しぶりだったのに……」
「もっかいできる時間はあるから、許して☆」
そう言うと剣一は、抱きしめてくる女性に答えるように
抱きしめ押し倒す。
午後スーツ姿で、とある場所にやってきた剣一。
セキュリティを抜け
秘書と挨拶を交わす。
「佐野さん、お疲れ様です。今日もお綺麗ですね」
「剣一さん、旧稲多邸のお話聞きました。相変わらずの御活躍ですね」
「ん~もっと褒めてくださいよ~
団長なんて褒めてくれないんですから。今日も何言われるか……」
「お待ちですよ。さぁ」
ドアをノックする。
「どうぞ」
「特務統括部長の咲楽紫千剣一、馳せ参じましたぁ!」
ふぅ……と白夜団団長の咲楽紫千直美はため息をつく。
「いいから座りなさい、佐野さん珈琲2つお願いできるかしら
2つともブラックでいいわ」
「はい」
にこりと微笑み佐野は出て行き、剣一はドスッとソファに座る。
「電話じゃダメだったの?」
「ここでは、きちんとしなさい」
「はいはい」
白夜団の団員としては歴史に残る活躍を見せる剣一だが
母親から見ると問題児である。
もちろん、顔も頭も運動神経もよく人に愛され良くできた息子。
ただ奔放さと常識外れな行動に、直美はいつも心配ばかりだ。
「この後、報告会議があるのよ……」
「あぁ老人どもへの? くたばれって言っときゃいいんじゃないの?」
「剣一! ……はぁ私だってそう言いたいわ」
「愚痴なら今度聞くよ。んで?」
「玲央……どう?
あの子の事も報告しなきゃいけないわ
椿ちゃんの住居も本当なら少し離したいとこだけど、どうしても許可してもらえないのよ
咲楽紫千の息子が連れてきたなら最後まで責任をもって敷地内で管理しろと……」
「管理って……本当クソ野郎どもめ
でも、いいじゃん。うちのマンションにいて何か問題?」
佐野が珈琲を運んできた。
「玲央はそんな事あるわけないって言うけれど
やっぱり同じ年齢の男女が、近くにいすぎたら……」
「心配しすぎでしょ」
「あなたが言いますか!それを!!」
「あはは!」
笑いながら珈琲を飲む。
「玲央のやつ……」
「え?」
「やっぱ変わったよな」
「どんな影響を受けているかわかるの?」
直美の顔色が変わる。
「達観しちゃってる部分があるっていうかさ。
仕方ないんだろうけど……生きてても死んでてもいいみたいな……
表では普通に振る舞ってるけど、中身はもう無邪気な高校生じゃないよね」
「そんな……」
沢山の過去の文献を読んでいるが、今後麗音愛がどうなってしまうのか
何もわからない状況だ。
カウンセリングでは目立った変化は見えなかったが
精神面での影響がやはり気になっていた。
「女の子がどうとか、そういう興味もかなりなくなっちゃってる感じ
よっちゃんの事もどうでもよくなってるっぽいし」
「え!?あの子ずっと……そう、そう……今までどおりなわけないわよね……」
「でも椿ちゃんといる時は、楽しそうにしてるよ。
今までの玲央みたいだ。
今は同化したばっかりで影響を受けて麻痺してるのかもしれない。
これからまた慣れてきたら感覚も戻ってくるかもしれないよ
生きてる感覚がさ……」
「恋愛感情ではないのよね?」
「違うって玲央は言ったんだろ?
そんな事ばっか気にしてて、あの子を玲央から離したら
玲央は死体みたいに心を地獄に落として晒首千ノ刀と独りぼっちで生きていくことになると俺は思うよ」
「そんな……」
「それは望まないでしょ?」
一人で家にいる時
たまに消え去ってしまうような表情をするようになった弟を
剣一ももちろん案じていた。
「もちろんよ……」
「信じなよ」
「そうね……玲央はあなたと違って常識のある子ですからね」
「あいつ今、しなびた爺さんか母親みたいだからな、あはは
俺の方が椿ちゃん可愛くてドキドキしてんよ」
「剣一!!
さ、あなたにも報告会議に出席してもらいますから
昨日の旧稲多邸の件も含めて報告をまとめて、この1時間でしっかり気を引き締めて部長らしくしなさい!!」
「は、はぁーー!??!? 母さんまじかよ!?」
「団長と呼びなさい。咲楽紫千剣一部長」
がっくりと剣一がうなだれた。




