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日曜・午前・11時

 

『麗音愛……』


 夢の中で誰かに呼ばれる……。


「椿……?」


『麗音愛……』


「誰だ……?」


 椿に似た声にも思えるが、違う……。

 霧の中に響く声。


『時が来たら……』


「……篝さん……?」


『時が来たら……麗音愛……』


 麗音愛にとっては実の母だった篝。


「篝さん!」


 ピピピピ……! とオフにするのを忘れていた携帯電話の目覚ましが鳴る。


「……れおん……ぬ」


 腕の中に椿がいる。

 此処は椿の家のリビングだ……。

 一体なんの夢だっただろう?


 床で眠ったせいで身体が痛いが深く眠れた。


「んにゅ……」


「椿……」


 しかし、また……可愛い恋人を抱き締めて眠りこけてしまった。

 疲れ果ててたとはいえ、自分の不甲斐なさを呪う。

 でも今、すやすや眠っている椿は自分に身体を密着させている。

 ちょっと……触ってしまったくらいなら許されるかもしれない。


 夢のことなどすっかり忘れた男子高校生はゴソ……と右手を動かした。


「やらしー玲央ぴ」


「わっ」


 台所から梨里の声がして焦る麗音愛。

 朝起きて、珈琲を淹れようとしていたらしい。

 気配に気が付かないとは! いや、多分二人が何かするのではないかと気配消しの結界を張ってたに違いない。


「お、俺は何も」


「今、姫のお尻触ろうとしたでしょ」


「そ、そんな事するわけないさ」


 もぞもぞと椿が目をこする。


「んん……? 麗音愛……おはよぉ」


「椿さん。おはようございます」


 焦ってつい敬語になる。


「んー? 麗音愛さんおはようございます。……ふふ、どうしたの?」


 今日はスケベ顔してるって言われなかった事に安堵する。


「姫おはよー。玲央ぴがさ今

「なんでもないよ!」

 んふふ……ムンバの新作フラペおねがーい」


「また……いつもの……」


「ムンバ行くの? 麗音愛」


「ん? う、うん……今度ね」


 頭の寝癖がまた凄いことになっている椿だったが、まだ眠たいのか梨里の前でも麗音愛にすり寄ってきたのでブランケットをかけた。


「おやおやぁ、姫はまだねむねむかぁ〜」


「もう少し寝てなよ」


「うん……」


 抱き上げてソファに横たわらせると椿はまた、くぅくぅ寝てしまう。

 度重なる心労で余程疲れていたんだろう。


「面倒見の良い、おかんぬじゃん」


「それ、みんなに言うなよ」


 カッツーが聞いたら大笑いして、喜んで皆に広めそうだ。

 駆け落ち騒動でやっとイトコンネームも収まったのに、と麗音愛は思う。


「あはは、まぁ起きるならこっち来たら?」


「あぁ」


 梨里の淹れてくれた珈琲を飲む。

 なにやらこだわりのブレンドらしく、実際にうまい。

 ブランチにとキッシュも出してもらった。


「雪春が来た事はまじビビリだけど、西野っちとマミっぺは~良かったよね」


「あぁ、そうだな。あの二人が結婚前提交際するとはね」


「マジでね~はぁ!? って思ったし。西野っちとかまじ眼中になかったし~」


 梨里は無防備にブラもせずキャミソールにふわふわのカーディガンを肩を出したまま着ている。

 豊満な胸元も見えているが、当然麗音愛は何も思わない。


「あたしも特定彼ぴ欲しくなっちゃったかも~。いっひっひ」


「鹿義も結構遊んでるっぽいけど、龍之介は許嫁なんじゃないのか?」


「まぁ家同士でそんな風に決めてるってだけぇ? お互いそんな気ないしー」


「そうなんだ」


「まぁ、お互いに相手がどうしても見つからなかったら……最後にはするかもだけどね」


「へぇー」


 梨里が結婚相手が見つからないなんて事はなさそうだが……。

 お互いに罵り合ってはいるものの、なんだかんだ二人で行動しているし、なんとなく二人の絆みたいなものは感じている。


「そういえば、伊予奈っちの結婚式行くんでしょ?」


「もちろん。椿も楽しみにしてるよ」


 伊予奈の結婚式は二週間後。

 雪春の裏切りなどもあり、混乱した白夜団の事を思い伊予奈は結婚式を中止しようと考えていた。

 しかし直美や当主幹部達も予定通り式を挙げる事を勧めたのだった。

 初めての結婚式参列を椿も楽しみにしている。


「早く平和な世界になればいいよねぇ」


「だな」


 ついつい椿の花嫁姿を思い浮かべてしまう。

 ドレスはもちろん白無垢も似合うだろう。


「またニヤけて~スケベな事考えてっしょ」


「どうしてそうなるんだよ」


 そのまま会話を続けていると、龍之介が寝起きのまま腹をかきながらリビングに起きてきた。


「お!? 椿が無防備にリビングで寝てるとかレアだべ! 襲えって事か!?」


「そんなわけあるか!」


「玲央お前、なに朝っぱらから来てんだよ! うぜぇ!」


「いや、もう11時だ! ソファから離れろ!」


 結局龍之介と揉め合いになり、アミューズメントセンターでボウリング対決をすることになったのであった。

 何故か合流した佐伯ヶ原の黄色い声援がボウリング場に響いたが、結局一番良い成績だったのは初めてボウリングをした椿だった。

 白夜団の子供たちがつかの間の平和を楽しんでいる時――。


 紅夜の城に怒声が響く。


「んだよ!? じゃあ姫様の護衛を摩美がやってるっていうのかよ!?」


「その通りです」


「てめぇ、嘘抜かしてんじゃねえぞ!」


 摩美の報告をした雪春に、闘真が激昂したのだった。 



 

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