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最悪の再会

 

 歓楽街を抜け出た西野は、大きな公園に向かって走った。

 自分に嫌気がさして出て行ったのに、出会った公園にはいないだろう。

 あれから二人でも行ってない。

 もしかしたら……と思い逆方向にある大きな公園に来た。


「はぁ……っはぁ……」


 あの日の夜に見た化け物。

 あれについては禁句のような気がして、一言も話していない。

 彼女は化け物を殺して……自分と猫を助けた。


 あんな力を持った彼女は一体何者なんだろうか?


 化け物を退治する正義の味方?

 そして彼女は……自分の友人『咲楽紫千玲央』を敵視している。


「いいっ! 今はそんな事考えるなっ」


 西野は広い公園の敷地へ入っていく。

 また……異様な空気に気が付いた。


 なにやら黒い霧……。誰もいない公園。

 野良猫が走って逃げていった。


 この先に行ってはいけないと――直感が告げる。

 でも、その先に彼女がいる気がする……どうしてそんな事を思うのか。


 禁止された呪いの歌を聴く彼女。

 それを配り歩く彼女……。


「……行ってみよう」


 西野は、この生ぬるい夜に寒気がするのを我慢しながら、公園の奥へと歩いて行く。

 月もない夜。

 どうしてか園内の街灯もチカチカと点滅し暗い。


 こんな不気味なところに女の子が来るわけはない。

 でも、それでも彼女なら此処に来るような気がしてしまう。


 一緒に過ごした時間、たまに見せる笑顔、柔らかい温かい肌のぬくもりを思い出す。

 彼女がどんな存在でもかまわない……傍にいてほしい。


 不気味な沼が見えた。


「……なんだ……?」


 生臭さが鼻を突く。

 何か白い物が見えて、小さな橋を渡って沼の中央にある小島に行ってみた。

 生肉のトレイやラップが何故か散乱している。


「う……」


 つい此処まで来てしまった事を後悔した。

 すぐにまた橋を渡って、戻ろう。

 彼女は此処にはいなかった。


 ボチャ!


「ひ!?」


 水音がする。

 いや、鯉だろう。

 早く走って……と思うと足元にカランと生肉のトレイが転がってきた。


「……え……」


 誰かが投げてきたとしか思えない。

 飛んできた方向を見ると……そこに有り得ない物を見た。





「あー重い……」


 近くのスーパーで買ってきた生肉。


「こういうのは……馬鹿闘真の仕事だって……」


 そうは言っても摩美が自分で勝手にやっている事だ。

 沢山の数を増やして過去に自分が殺してしまった妖魔をどうにか忘れたい……。


「なんで、あんな事しちゃったんだろ……」


 スーパーのビニール袋が指に食い込む。


「あの子達が育ったら、ビィフォに言って迎えに来てもらわなきゃ……」


 ふと、自分がまたあの部屋に帰るつもりだったという事に気付く。

 何も今すぐ迎えに来てもらえば良かったのだ。


「馬鹿みたい……」


 それでも、また公園の沼に向かう摩美。

 何か奥から悲鳴が聞こえた。


「……まさか!」


 走り出す。

 妖魔が複数、沼から出てきている!?

 そして真ん中の島にうずくまる人影が見えた。


「まだ時期は早い! 戻りなさい! あんた達!」


 人間を勝手に襲ったのか……!

 見られたからには生きていれば殺す!

 そう思い摩美は縄をビィン! と両手で張り走る。


 妖魔はまだ人間を食い殺してはいなかった。

 まだ襲う前だったようだ。

 何故!? 疑問を浮かべながらもその人間の様子を伺う。

 恐怖でへたり込んだ人間は……男……!


「え……栄太えいた!?」


「! 君……!」


 驚く事に妖魔に襲われかけていたのは西野だった。


 西野は名前を呼ばれ驚いた。

 初めて、名を呼ばれた。下の名前を覚えていた事にも驚いた。


 摩美は駆け寄る――が、その背中を妖魔が襲いかかる!


「危ない!」


 西野が摩美の手を強く引いて抱き寄せ、避ける事ができた。

 

「なっ!? あんた達! 沼に帰れ!」


 しかし、妖魔は摩美達を取り囲む。


「ど、どういう事なの……なんで……」


 西野の腕の中で摩美は驚愕し、青ざめた。

 西野は今の言葉で全てを悟る。

 やはり……この子は……。


「も、戻りなさい! 私に歯向かうなんて!」


 摩美の言葉は一瞬だけ妖魔に届きはするようだが……すぐに獲物を見るように牙から涎をボタボタと垂れ流す。

 ジリジリ……と中央の肉の塊二つを狙うように動く。

 その数は十匹以上。


 取り囲まれているが、二人の背後には生け垣があり、まだ背後は守れる。

 西野は摩美を背中に隠すように立った。


「はぁ!? あ、あんたに守られるようなヤワじゃないよ!」


「でっでも」


 その時、西野に妖魔が牙を向いた。

 襲いかかる妖魔。


「くそっ!」


 摩美が縄術で妖魔を叩き落とす。

 それを合図かのように、一斉に妖魔が二人を襲いかかった――!



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