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強制同化剥がし

 

 おぞましい計画『強制同化剥がし』

 先程闘い斬り伏せた、転がっている妖魔が可愛く思えるほどだ。


「あんたに利用されるくらいなら! 私は死を選ぶわよぉ!」


 可憐な花吹雪が舞うなか、拘束されたように身動きできず叫ぶ琴音。


「……そんな事は許されないのです。さぁ……強制同化剥がしを始めましょう。

 抵抗すればするほどお互いに苦痛が酷くなりますよ」


「雪春さん……今までのこと全部、嘘だったんですか?」


 椿の脳裏には今までの雪春との想いが桜吹雪のように流れ消えていく。

 勉強を教えてくれたこと、相談にのってくれたこと、料理屋で踊った記憶。

 思い出せば出すほど、心は切り刻まれていく。


「全てが嘘ではありません。貴女の事はとても好きです。

 白夜団も大切ですし、皆も好きですよ。えぇ琴音さんもね……?

 でも、それ以上に大切なのです」


 椿の瞳から涙が溢れる。

 炎が照らされて、美しい雫だった。


「母様のことですか……?」


「えぇ」


「でも、もう、母様は死んでいないんです」


 母が死んで、もう何もしてもらえない絶望を誰よりも知っている。

 遺骨を求めたことも、なかった。


 求めても無意味だと、骨は助けてくれないと――骨の髄まで理解していた、過酷な子供時代。


「今は……そうです」


「今は……? あなたは何を……」


 この男の考えている事は底が知れない。

 とんでもない邪悪。

 微笑む後ろに、見える気がした――紅夜の影を。


「絡繰門雪春ぅうううううううう!!」


 どうにか逃れようと琴音の怒号が響く。


「さぁ、その怒りを使ってください。憎しみをぶつけなさい

 椿さんの中の舞意杖を……身を切り裂き、ひき剥がすのです」


「いやよぉ!! 私の私の正義の力をお前なんかに汚されてたまるもんですかぁ!!」


 そう言いながらも、琴音の二刀のサーベルはゆっくりと……その切っ先を椿に向かって持ち上げていく。


「やめて! 雪春さん! 琴音さんを解放して!」


「そういうわけにはいかないのです……舞意杖は必要なものですからね。

 さぁ……椿さん動かないでください」


「罰姫……! 早く! 逃げなさいよぉ!」


「そういうわけにはいかないよ……!」


「この馬鹿女っ……!」


「口を慎みなさい、桃純家当主ですよ」


「お前が……言うな、この外道……必ず殺す……!」


 睨みつける琴音の口元からは、唇を噛み切り血が流れる。


「雪春さん、この舞意杖の力があれば沢山の人を救える!!

 沢山の人の命を救ってこれた、舞意杖を、この子を奪わないで!!

 もう私の心と一緒なの!!

 母様もそんな事望んでない! これはみんなのための力だもの!」


「沢山の人の命」


「……はい」


「そんなものはどうでもよいのです」


「……どうでもよい」


「はい」


 これまでの白夜団としての過去、思い出全てが割れていく。


「……嘘つき……」


「嘘をつくのは得意だと言ったはずです」


 微笑み……。

 最後の……訴えは最悪な言葉で終わった。


 椿の涙が落ちる。

 右の頬から、左の頬から……流れて落ちた。

 グイと拳で拭った。

 涙は振り切った。

 落とし、沈めた。

 動揺した心と共に、沈めた。

 裏切られて傷ついた心は、深く沈めた。


 動くなと言われても、そういうわけにはいかない。


 傷ついて泣いて、一方的に奪われるわけにはいかない――!!

 自分は桃純家当主、桃純家当主の桃純椿。


 強く、強く――!!

 怒りと哀しみを燃やし闘志が湧く。

 椿の周りにユラユラと陽炎が見える。


 花吹雪を焼き尽くすかのように――。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 大変な事になってもうた・・ [一言] おいどんの足の裏の角質剥がしとは比べ物にならない同化剥がしされてしまうのか  次号待つです!(*'▽')
[良い点] 琴音が必死に抗っている 罰姫と呼びながらも 椿ちゃんを逃そうとしている 雪春さん、良い人だと思っていたのに 信じてたのにー(;ω;)ブワッ
[良い点] 椿がもし告白をOKしてたら、舞意杖ごと篝さんに似た子が手に入ってたからこうはならなかったのかな でもそうならないと分かってたからこそ、琴音の椿に対する嫌悪感を煽り立てるなどして同化剥がし…
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