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直美語る~団欒で語り始める~


 夜の任務。

 朔海里と麗音愛と椿は、菊華聖流加護結界の強化計画で近めの各地を回る事になった。

 祠の前で、強化の術を結ぶ椿を見守っている男子二人。


「咲楽紫千君のオーラってやっぱすごいね」


 年上だが、人懐っこい笑顔で海里が話す。


「え? そんな事はないですよ」


「さっき、でかいのが空から来た時も

 冷静に斬り落として、椿さんが即浄化。

 二人のバディ感すごいし、咲楽紫千君のツワモノ感すごい」


「そうですか? あ、ありがとうございます」


 急に褒められ、麗音愛は慌ててしまう。


「椿さんに彼氏いるってわかって、くっそ~って思ったけど

 あ~君なら……ふさわさしいなってわかった」


「え……」


「えへへ、まぁこれからもよろしくね。

 僕はショボい当主だけど、頑張るよ」


「いえ、今日も朔さんのおかげでスムーズに進んでいます。

 さっきみたいな予定外な事が起きても

 指揮をしてくれる人がいるって……俺にとってはありがたいんです。

 俺は闘う事しかできないから……」


「……君って……」


「すみません、ガキが生意気言って」


「めっちゃ良い子!!モテるのわかったわ。

 加正寺さんも君に夢中っぽいしね

 強くて謙虚……なるほど僕も見習おう~っと」


「えっ」


 まさかの琴音の名に驚く、どこで何を言っているのか……。


「あはは、って……椿さん最終締めだね」


 式服を着た椿が、カッと紫の炎で呪符を燃やし尽くして結界の脈を補強する。


 妖魔単体の威力が増してきた。

 人を殺す妖魔が増えてきた。

 それに伴い、今の増強作業になっている。


 増強した分、結界の目は荒くなる。

 が、より強い妖魔は現れないようにを最優先に考えての事だった。


「ふぅ」


 ホッとした顔をして椿が二人の元へ戻る。


「お疲れ様」


「うんっ麗音愛も」


 麗音愛が駆け寄ると花が咲いたように、椿が微笑む。

 それを見た海里が椿に見惚れた後、仲良く微笑み合う二人を見て苦笑する。

 間に入る隙はない。


「あー羨まし……僕も彼女つくろ……」


 白夜団の対策も少しずつだが進んでいってはいる。

 パニックにならないよう、隠蔽はされているが人々は何かを悟り恐怖を感じ始めていた。


 ◇◇◇


「よく来てくれたね」


「父さん、具合どう?」


 雄剣の病室に、麗音愛と椿、そして剣一が見舞いに来た。

 もちろん直美もいて、麗音愛から人数分の弁当を受け取る。

 いつもの小料理屋で雄剣の好きな物を作ってもらった。


「かなり回復が早いと言われてね。

 椿ちゃんのおかげだよ。何度も紫の炎で癒やしに来てくれたから

 ありがとう」


「紫の炎が、回復の役に立つかはわからなかったのですが」


「絶対に効いてるわ、本当にありがとう。義手のリハビリ計画も決まってきたの」


 雄剣と直美に御礼を言われ、照れる椿。

 人を助けられる紫の炎は、椿のなかでも大切なものになっていた。


「まぁ、まずは弁当食おうぜ!」


 剣五郎は家でマナと過ごしているが、久々の家族団欒だ。

 雄剣もまだ片腕の無い生活は不便そうではあるが一番心配だった精神的な面も安定している様子だ。

 椿も笑顔で弁当を食べ、食後のお茶を皆で味わう。

 ひとしきり皆で笑った後、直美がふぅと息を吐く。


「さぁ……お話をしなくちゃね。

 あなた達のお母さんの篝との約束……」


 麗音愛と椿は顔を見合わせ、頷く。


「はい、お願いします」


 直美は一枚の写真を取り出した。

 新生児の赤ん坊が写っている。


「これは、あなたなの。椿ちゃん

 これだけ……玲央を引き取って手紙のやり取りをしている間に

 これだけ篝から送られてきたの、あなただと……」


「私の……」


「可愛い我が子だと手紙には書いていたわ。持っていてちょうだい」


「ありがとうございます」


 篝のブローチが光る胸元に、母の想いを感じるようにそっと写真を抱いた。


「篝とは……とても仲が良かったの。

 家族がいなかった私のひとりぼっちだった私の初めての友達で

 親友で……家族のような存在だった……」


「母さんが?」


 それには麗音愛も剣一も驚いた顔をする。


「旧姓は蛇願へびねがい……剣一なら知ってるかしら」


「まじかよ……」


 剣一もさすがの事に言葉を失う。


「母さん、俺はわかんない……一体どういう家だったの?」


「紅夜のたたりによって、血族は病死や事故死など相次いで死に絶えた

 私が最後の生き残りなのよ」


「母さんがそんな生まれだったなんて……」


 子供の頃、田舎の祖父母の家に行く話が羨ましく

 直美に祖父母の存在を聞いたが、もう昔に亡くなっている、とだけ聞いて墓参りもした事がない。

 剣五郎に聞いても、お墓がないけれど心で安らかにと祈ろうと言われた事があり、それから口に出した事はなかった。


「母は、おばあちゃんはね、私を産んで亡くなったと施設で聞いたの」


「施設……」


 直美の誕生日には、雄剣は必ず花束を買ってくるが

 直美も自分で花を買って生けていたのを思い出す。


「当時は知る由もなかったのだけど、身寄りの無い子供というだけではなく祟りが周りに影響するのを懸念された白夜団の隔離施設だったのね。研究員の団員だけの小さな村でずっと暮らしていたの」


「そんな……!

 酷い事をされていたの?」


 麗音愛の問いに、直美は少し切なそうに微笑む。


「そんなに酷い事はされていないわ。

 研究的な事はあったけれど、研究員さん達はまぁ……普通だったのかしら。

 でも子供が私以外にいなかったし……優しいお姉さんも結婚すると言って

 いなくなっちゃったり、寂しかったわね……いつも寂しい気持ちだった

 ずっとあの村で生きていくのかと、絶望していたわ」


 雄剣がベッドに置かれた直美の手を優しく握った。

 しかし、施設にいた直美が今こうした生活を送っているのは何故なのか。


「ある日、14歳の秋に届いたの。一通の手紙が。

 桃純篝から……私に」



いつもありがとうございます。

皆様の感想、ブクマ、評価、レビューがいつも励みになっております。

気に入ってくださいましたら是非お願い致します。


次回から、直美・少女時代編が少しの間始まります。

どうぞよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[一言] 14歳の直美いいですね^^ キャラの過去ってドキドキしてしまいます。どんな少女時代を過ごしたのか楽しみにしてます。
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