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ドキドキミニ文化祭終了!~れおつばイチャラブ休み時間!~


 やっと2人の休み時間。

 荷物を持って出ようとした2人を梨里が止める。


「あー! 玲央ぴはこの看板背中に!

 姫! 今日はその格好のままだよ! ボタンは少し開けてバニガちょっとは見せてねぇ

 足寒かったらこの白いモフモフレッグウォーマー履いて!」


 梨里に麗音愛は『3年2組アリス喫茶!来てね♡』の看板を下げられ

 スカートを履こうと思ってた椿は、ぶかぶか学ラン白うさぎのまま

 足はモフモフレッグウォーマーを履かされ休み時間の1時間、外に出された。


 アリスに主要なメンバーは休みが短いのだ。


「はぁ。とりあえず行こうか……」


「うん」


 お互いにウサギの耳が揺れている。

 とりあえず、廊下にまで並んだ梨里達との撮影の行列を横目に2人で歩いた。


 勢いでしてしまった、このコスプレ。

 あのアリス喫茶にいるならばいいが、廊下に出た途端やっぱり恥ずかしい。

 チラリと椿を見ると、自分の学ランのボタンが開けられた隙間から白いバニースーツの胸元が見えた。

 ドキリとする。


「……麗音愛?」


「ん!? あ、お腹減ったね!」


「うん!!」


「食券買ったとこ行って、ご飯食べて

 椿が行きたかった泉に行く?」


「うん!」


「その格好寒くない?」


「うん、足のモフモフがあったかい」


「できるだけ、あったかいとこに行こう。胸元も締めちゃえばいいよ」


「そ、そうだね」


 そそくさと、椿は胸元を締めた。残念ではあるが、狼の群れに見られないだけ安心だ。


「外のベンチでも私は大丈夫だよ」


 それはつまり、人のいない場所だ。


 注目されて疲れたのかもしれない、と麗音愛は思う。

 実際歩いていても、椿はジロジロ見られっぱなしだ。

 隠すように歩く。


「何かあった?」


「え? ……なんでもないよ

 ごめんね、いつも迷惑かけて」


「……また、そういう事を言う」


「でも」


「俺は椿に迷惑かけられたなんて、思った事一度もないよ」


「……麗音愛」


「ないよ」


 麗音愛が椿に微笑むと、椿にぎゅっと腕を抱きしめられた。


「つ、椿……」


「……大好きっ」


 廊下の真ん中で歩きながらだったので、麗音愛もつい周りを見てしまう。

 案の定、見られているが椿は離さない。

 人前でいつも恥ずかしがるのは椿なのに、突然の行動に頬が熱くなるのを感じるがそのまま歩く。


 10歩くらいそのまま歩いたが、ふっと椿が離れて手を握られた。

 ドッキドッキしたままの動悸をごまかすように、胸元のポケットから食券を出す。


「まず、お腹に溜まるもの食べようか!」


「うん!! 今回楽しみにしてたのが焼き芋ーー!!」


「そうだ目玉だもんね」


「うんー!」


 またニコニコと椿が笑ったので安心する。

 ミニ文化祭で玄関前に1つだけ業者を呼ぶというアンケートで意外にも焼き芋屋さんが選ばれた。

 この冬に初めて焼き芋を食べた椿は感動し、それ以来焼き芋屋さんが通れば3階からダッシュで買いに行くようになったのだ。


「何個買ったの?」


「4個!」


 玄関に行けば、偶然にもいつも買う焼き芋屋さんだった。

 うさぎ耳を着けたバニガ椿に焼き芋屋のおじさんは大笑いして、大きな焼き芋をくれた。

 寒いけど大丈夫という椿の言う事を聞いて、誰もいない湿った裏庭で湯気のあがる焼き芋を食べる。

 普通では経験しない事を、ここ1年近くしているが

 学ランバニーガールと一緒に焼き芋を食べる経験も相当レアだなと思った。


「椿、口についてる」


「ん、やだ恥ずかしい」


「夏祭りの時、思い出す」


 そっと、指先で椿の口元を拭ってあげた。


「あ、ありがとう」


「あの時も楽しかったね」


 あの夏はまだ、親友だった。

 ずっと、この世で一番大切にしたい想いは変わっていない。


「うん、すごく楽しかった」


「椿がせっかく可愛い浴衣を着たのに、俺は何も言えなくて……

 言っちゃったけど、可愛かったから」


「え……」


「今も可愛い」


 隠れるようにして頬を染めた椿に、そっと口付けた。

 学校だから怒るかな? と思ったが椿はもっと赤くなったまま下を向いてモグモグと焼き芋を食べる。

 それを見ていたら麗音愛も自分の行為に恥ずかしさが増してきて、またこの前のスケベ心の話も思い出して、今更ながら白バニガにキスしてしまった事に気付いて色んな感情が湧き上がって……

 お互い無言で焼き芋を食べ続けた。


 それでも食べ終わる頃には、また笑い合う。

 焼き芋の皮の千切れ具合1つで2人で大笑いした。


「麗音愛……あの……」

「うん、はい」

 

 麗音愛から手を差し出すと、椿はそっと握った。

 

 それからテイクアウトしていたアリスの喫茶店のサンドイッチとドーナツを食べて

 タピオカミルクティーを飲んで、午後でもう溶けかかったカキ氷を食べた。


 そして椿御所望の泉に行くと

 本当にくだらない、子供用プールが飾り立ててあって『愛の泉』なんて書かれている。

 黄色のビニールテープで作られたかつらをかぶった太った男子生徒の愛の女神が立っていた。


「ひ……! つ、椿さん!? か、彼氏と……!?」


「えっ?」


 どうやら愛の女神は、椿のファンだったらしい。


「えー……2人は別れます」


「おい!」


 麗音愛が10円玉を、永遠の愛の穴に投げ入れ

 泣く女神から手書きの『永遠の愛証明書』を受け取った。

(なかなか渡さないので無理やり受け取った。)

 壁に貼られた模造紙に名前を書いただけでも、椿は嬉しそうだ。


 その後も戻ったアリス喫茶でドタバタと働き、閉店後の片付けをし梨里が荒稼ぎした金を数えていく。


「ヨシ!! これで衣装代ペイできたぁ! みんなぁお疲れーー!」


 わー! と2組全員が盛り上がる。この後はファミレスで打ち上げらしい。


「……えげつない商売は衣装代のためだったのかよ」


 佐伯ヶ原がヘトヘトに座り込みながら睨むが、梨里は全く気にせず金を集金ポーチに入れる。


「見栄えが重要じゃん? 今しかないんだから、あたしらには! 17歳! 今だけ!

 いつ死ぬかわかんないよぉ~?」


 周りの皆がそれに頷き、笑ったが『いつ死ぬか』なんて考えた者はいなかった。

 発言した梨里、麗音愛と椿、佐伯ヶ原。その4人はその言葉の重さをわかってる。

 それでも4人もそれぞれの表情で笑った。


 思い出がまた増えて、夜が更け1日が終わっていく――。


 ◇◇◇


「……ったく」


 夜の公園のベンチに座っているのは摩美。


「街の情報収集ったって

 闘真はアホ、紗妃はバカ、カリン達は雑務で忙しいって

 私1人でどうしろって言うのよ……コーディネーターのやつ……」


 また最近転校した先の制服を着たままコートを羽織っている。

 補導されそうになれば逃げればいいし、高校生の制服を着ていた方が

 何かしら情報は聞きやすいのだ。


「アホもバカもどっか勝手に行ったし……帰ろ……」


 暗い公園で、さっと立ち上がった摩美だが出口とは逆に公園の奥へと進んでいった。



いつもありがとうございます!

ラブラブでミニ文化祭も終了しました。

次回は少し珍しい紅夜会、摩美のお話です。


お読み頂けると嬉しいです。

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挿絵(By みてみん)


以前に描いたこの絵が今回の学ランバニガを描くキッカケになりました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 椿ちゃんそんなに焼き芋好きなんか…たくさん買ってあげたい…(*^^*) そうだよ〜例え妖魔とかそういうのがなくてもセブンティーン貴重な時間だよ〜 今を楽しんで生きるんやで。 みんな健やかに…
[良い点] なんだかんだで、梨里、いい奴ですよね。好き。 それにしても、れおんぬと椿の二人は見てるにやにやしてしまう。
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