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ドキドキミニ文化祭~あなたは何を着る人か?~

 

 紅い空の下。

 巨大な、妖魔王紅夜の城。

 一体どこにこんな世界と城があるのかと思うような紅い光に染まる、白い広い階段。


 生きているものが何もいないかのように錯覚する世界。

 いや、本当にそうなのだろう。


 静かだ。


 階段に腰掛ける紅い軍服姿の紗妃は、1枚のハガキを見ていた。


「なんだこれ」


 ヒョイと闘真がそのハガキを奪い去る。

 それは絵ハガキだった。


「てめぇ! 闘真ぁ! 返せ!!」


 紗妃の容赦ない鎌の攻撃もさっとかわしたが、裏側の文字を読める程の余裕はない。


「てめぇええ!!」


 しかし闘真は薔薇の妖魔を間に入らせ、紗妃から距離をとった。


「手紙ってやつか、誰からだ?」


「クソ野郎!」


 絵ハガキを裏返そうとしたその時。


「やめな闘真!」


 摩美の縄が闘真の手首を拘束し、絵ハガキを奪い去る。


「……摩美」


 その手に絵ハガキを持ったが、摩美は紗妃を見つめた。


「誰からの手紙か知らないけど裏切り行為じゃないわよね」


「昔の手紙だ。気に入らないなら燃やせ」


「そんなの後味悪い。返すよ」


 見る事もせず、摩美は絵ハガキを突き返す。


「おい! 誰からの手紙か教えろよ 怪しいぞ!」


「闘真! お前のその無神経さ

 いつも姫様からも嫌厭されているのがわからないの」


「あぁ!? なんの話だよ」


「クソうぜー闘真……」


「いいから。紗妃はもう行きな。人間に未練なんてないんでしょ」


「当然」


 紗妃はビリビリとハガキを破っていく。


「あ……紗妃あんた」


「なんだよ、ただのゴミなんじゃねーか」


「うるせぇよ」


 そのまま風に乗って散っていくハガキ。

 紗妃が去って、摩美が拾った欠片には桜の花が描いてあった。

 屋敷にいた頃の紗妃に絵葉書を送る相手などいたのだろうか。


 後味の悪さを摩美は感じため息をついた。


「なぁ、摩美。バレンタインデーに姫様

 俺にチョコくれるかな?」


「頭沸いてんの、あんた」


「新しい薔薇また咲いたし、会いに行こうかなぁ~」


「……はぁ」


 摩美のため息は紅い空に消えていく。


 ◇◇◇


 ミニ文化祭当日。

 喫茶店をやる2組は集合時間が早いため1人で登校した麗音愛。


「お、玲央。おはよう

 椿ちゃんは? 1人かよ」


 玄関で西野に会う。


「おはよう、準備があるからって鹿義と先に行ったんだ」


 当然ながら龍之介と2人で登校する事はない。


「2組、アリスの喫茶店なんだってなぁ

 鹿義さんプロデュースとかって話題になってる」


「あ~言ってたかも」


 西野と階段を上り、椿の教室でも軽く覗いて行くかなと思えば怒声と叫び声が聞こえてきた。


「ざけんなよぉおおおおおお!!」


 この声は、と思えばやはり佐伯ヶ原だ。

 教室で叫んでる。


「なん! で! 俺が!! アリスなんだよぉ!」


「それをみんなが望んでるし~あんた顔は可愛いんだから」


 怒鳴る佐伯ヶ原の前に、ロングコートを羽織った梨里が

 なんとも可愛らしい水色メイドさんのようなフリフリ衣装を持って立っていた。


「ふざけんなぁ!!」


 かなりブチ切れているが、梨里は慣れたように笑っている。


「大人気になれるよー

 今、流行ってるっしょ~知らない?? 女装男子みたいなの」


「知るか!!」


 教室の入口でつい棒立ちになってしまった麗音愛に梨里が気付いた。


「あ、玲央ぴ、ちょいちょい来てよぉ」


「え……俺?」


「……!! サラ……!!」


 麗音愛に気付いた佐伯ヶ原は少し動揺したように声が小さくなる。


「亜門のアリス見たくない~??」


「え? お、俺が……??

 いや、なんていうか……その」


 教室内の視線が集まる。

 何故俺に聞くんだ、という思いしか浮かばない。


「スカートじゃないんだしぃ

 ほら下にスパッツあるんだから、これはズボンの装飾じゃん☆」


「ざけんな!! そういう問題か!!


 ……でサラはどう思いますか」


 そういう問題か!と麗音愛も思ったのに、佐伯ヶ原にまで尋ねられ一歩下がってしまう。


「えぇ……俺は……見た……」


「「「見た……??」」」


 周りの目は完全に『見たい』と言えと言っている。

 実際見たくはない。

 見たいと言ったら何かが終わる気がする。


 無意識に助けを求めるように椿を探す。

 しかし、椿の姿が見つからない。


「そ、その前に椿は……??」


「小猿なら、そこのカーテンの影ですよ

 もう餌食になってます」


「餌食……?」


 確かに変にねじれたカーテンが……。

 そしてそこから見える白い耳。


「……麗音愛……」


 か細い声。

 確かにシルエットは椿だ。


「椿、どうした!?」


 慌ててカーテンに近寄ると、椿はカーテンを更に巻きつけサナギのようになる。

 傍にいたみーちゃんが麗音愛に場所を譲った。


「ごめんなさい……」


「どうして、ごめんなんて……一体……」


「ダメって言われたのに……」


「鹿義に何を着せられた!?」


「うう……」


 椿は更にぐるりとカーテンを巻きつけた。

 一体、何を着せられたんだ……!?

 カーテンから飛び出た耳がピコピコ揺れた。


 なんだか変な胸の高鳴りも感じた。



いつもありがとうございます!

楽しいミニ文化祭が始まりました。

続きもお読み頂けると嬉しいです。


いつも皆様の感想、ブクマ、評価、レビューを励みに頑張れております。

ありがとうございます!

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