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お茶会後、寒椿の前にて二人時間

 

 奇妙な3人での加正寺家サロンバスでの帰路お茶会。


「椿先輩、クッキーもありますよ」


「ありがとう。でも大丈夫。

 同化の事が聞きたいのって……?」


「はい」


 琴音は、傍らに置いてあった加正寺本家の明橙夜明集『骨研丸(ほねとぎまる)』を手に持った。


「この『骨研丸』とも同化をできればしたいと思っているんです」


「え!」


「そんな事できるのか」


「もちろん桃純家以外での複数同化は初めての試みです」


「そこまでする必要があるの?

 兄さんだって、同化せずとも綺羅紫乃を上手に使っている」


「剣一部長は天才ですから。

 私にとって力を強くするため、打倒紅夜のためです。玲央先輩にとっても悲願でしょう」


「……そうだけど」


 打倒紅夜は麗音愛と椿の悲願。

 白夜団の悲願。

 それに疑問を持つのはおかしいのだが……。


「晒首千ノ刀のようには黄蝶露は私を傷つけませんし……

 骨研丸もきっと大丈夫です。

 ねぇ椿先輩

 同化を複数する時ってどんな気持ちでやっているんですか……?」


「え?

 ええと……私の場合なんだけど……」


「はい」


 高速道路を走るサロンバスが少し揺れた。


「これから、よろしくね。とか

 みんなで仲良くしようね、みんなで頑張ろうねって……」


「……みんなで、なかよく……??」


 琴音のポカンとした声が響いた。


「ご、ごめんなさい。バカみたいなアドバイスで」


 麗音愛は椿らしくて、すごく良い! 可愛い! と思ったが口に出さないように口を閉じる事を努めた。


「あ、い~え~!

 すごく良いアドバイスありがとうございますー

 優しい椿先輩って感じですね」


「アドバイスになったかな……私は、舞意杖を持っているから

 また明橙夜明集達と通じ合いやすいのもあるかもしれなくて……」


「舞意杖……それって、紅夜会が椿先輩に渡したものなんですよね」


「うん、そう……」


「どうしてそんな椿先輩にとって有益なものを、わざわざ渡してきたんでしょうね」


「……どう、してだろう……」


「そんな事は、あいつらにしかわからないよ。

 複数同化の事についてだよね話は」


「そうですね。脱線してすみませ~ん」


 お互いに、あの雨の夜の事を思い出してしまった。

 そして絶大な威力を持つ舞意杖を何故、椿に渡したのか。

 あの地下の箱を手に入れるためだったのか。

 あの地下にあった箱についても白夜団でどこまで報告されているのかもわからない。 


「他に思い当たるコツとかありません?」


「……私は白夜神様が作った明橙夜明集にも心があるように思うの。

 まだ関わった事がある明橙夜明集も少ないんだけど。

 心がある相手として、自分の心もさらけ出してお互いに寄り添う気持ちで……」


「……へぇ……」


「ご、ごめんね。やっぱり人に教えるのって私は下手くそで」


「とんでもないですー!!

 桃純家の当主様のお話が聞けるなんてすごいことですよ!

 ありがとうございます!」


「すごく良い話だと思うよ」


 美子の同化剥がしの時に麗音愛も実感している。

 麗音愛の微笑みを見て、椿も安心したように微笑んだ。


「骨研丸がどんな様子なのか、椿に見てもらったら?」


「! それはいいです! 触らないでください!

 骨研丸は私のものですから!」


 サロンバス内に琴音の声が響いた。

 一瞬緊張が走ったかのように静まる。


「……ごめん、俺が余計な事を言った」


「……私こそ、大きな声を出しちゃってすみません……。

 あ、えーっと、御二人ともありがとうございましたー!

 黄蝶露と骨研丸が仲良くしてくれるように頑張りますし剣術の稽古も嬉しいです。

 あんし~んです☆

 さ、お茶のおかわりとクッキー食べましょう!」


 何事もなかったように琴音は笑い焼き菓子を並べる。

 その後は、他愛もない話が始まった。


「椿先輩、クリスマスに何をもらったんですかー?」


「……あの……素敵なネックレスをもらったの」


「へ~さすが玲央先輩ですね

 アクセサリーって難しいのに~

 玲央先輩って女心をよくわかってくれますよね!」


「そんな事ないよ」


「あ~あ、2人のラブラブっぷりを見せつけられちゃいましたぁ」


 なんだか無駄に珈琲とココアをがぶがぶ飲んでしまった2人はマンション前で降ろしてもらった。

 もう私服に着替えコート姿。

 サロンバスを見送って、麗音愛は椿を見た。

 お互いに疲れは隠せない――が。


「椿、屋上……行かない?」


「え?」


「疲れた? まだ椿と一緒にいたいと思って」


「……うん、私も」


 咲楽紫千家所有のマンションは屋上が庭になっており冬までは鍛錬場として使っていた。

 道場の頃の木々が植えられ小さな温室やベンチもある。

 大晦日に降った雪が少し残っていた。


 今まで親友として、稽古をしていた鍛錬場に密かに入り込む背徳感はある。


「寒い……? 寒いよね」


「大丈夫」


 深夜の暗いなか、祖母の好きだった寒椿の花が咲いている。

 その前で抱き寄せた。


「……い、いいのかな……鍛錬場で……」


「いいよ別に」


 椿が椿と名乗った時に脳裏に映ったイメージを思い出す。

 この椿の木の前で微笑む少女。

 こんなに愛しい存在になるなんて思わなかった。


「朔家の人と仲良くなったの?」


「仲良くって……当主としてだよ」


「連絡先とか、交換したの?」


「グループつくろうって琴音さんが言って、PLINでグループ作ったよ」


「へぇ」


「必要な時だけ……だよ」


「うん、わかってる」


 腕の中に抱きしめているのに、情けない嫉妬心が漏れ出してしまう。


「麗音愛だって……やっぱり琴音さんと仲良しでしょ」


「仲良しじゃないし、彼女が何を考えているのか俺にはわからないよ」


「うん……骨研丸が少し心配……」


「椿」


 今は、そんな話はいい――と唇を寄せた。

 軽く触れるキス。


 椿とキスできるのは恋人の自分だけ――。

 別に優越の為ではないのだが、そんな想いも湧き出る。


 幸せそうな笑顔を見せる椿。

 白い息。

 純粋無垢な恋人に、また口づけた。


 あの大晦日の酷い事件になる前の2人きりだった時の続き。

 切ない想いなんて言い訳の、ただの欲情。

 久しぶりの誰もいない2人きりに心が疼く。


「……椿……」


「麗音愛、大好き」


 可愛い声で、止まらなくなって軽いキスの一線を越えようとした。

  

「ん……だ、だめ!」


「いて……!」


 椿が声をあげて、突き飛ばされる。

 離れた2人の間に寒い風が吹く。


「あ……」


 突き飛ばした椿の方が戸惑う悲しい顔をする。

 瞬間、焦る心。


「ご……ごめん椿」


「ごめんなさい麗音愛」


「俺が悪い、びっくりさせて……ごめん」


 2人とも黙ってしまって、また強い風が吹いた。

 寒椿の花が揺れる。


「……あ、あの寒くなってきたね、梨里ちゃん達いても

 リビングなら大丈夫だよ。珈琲でも飲む?」


「……いや、珈琲はもう沢山飲んだから」


「えへへ私もお腹ジャブジャブなの……じゃあもう、帰ろっか」


 椿は笑ったが、その笑顔がなんだか胸を刺した。


「……うん」


 また寒椿の花が揺れた。

 椿が離れてく。

 麗音愛17歳男子。

 この件で、結構悩む事になる。




いつもありがとうございます!


少しタイトルが強い感じでしたが、れおつば回

また恋愛パートに入っていきます!

ミニ文化祭も絡んで楽しい回もつくっていきます


感想、ブクマ、評価、レビューが励みになっております!

気に入ってくださいましたら是非お願いしますm(_ _)m


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― 新着の感想 ―
[良い点] 琴音の話し方がめっちゃイラついて良いꉂꉂ(๑ノ∀˂)ʷʷʷ そう言う時は口を閉じるんじゃなくてクソデカボイスで叫ぶんだよ麗音愛!! 琴音がドン引きするくらいの叫びをかまして欲しい( ˘ω˘…
[良い点] >すごく良い! 可愛い! れおんぬのあほー でも良い!!
[良い点] 感想の度に書いてるけど 琴音こえぇ( ;∀;) 今回は明確に敵意を感じたァア 表向きにこやかなのがまたこわい 骨研丸なんで見せないんや… 大丈夫か…?
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