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会議の後は、3人お茶会ドライブへ


 新七当主会議が始まる。


「皆様、お待たせしました」


 団長の直美が戻り、皆が着席した。


「団長と七当主での会議という事ですが、咲楽紫千家ではまだ当主を決めかねていますので、私が代理当主として兼任で出席致します」


 会議の内容は特に難しいものでもなく、それぞれの一族での体制変化の報告と

 今後の当主特別待遇の撤廃だった。

 それについても新当主達は同意したが、琴音が声を上げる。


「機密情報開示の権限も無くなるのですか?」


「そうですね、情報開示を求める場合は申請許可をお願いする事になりますが……。

 団内でも不明瞭な情報は無くして共有していきたいと思っております」


「不明瞭な情報がなくなれば良いことだとは思います~でもぉ」


「何か、気になる事でもありますか?」


「ん~、紅夜の本当の目的ってなんなんでしょうか」


 皆が琴音を見た。

 その中で椿の心臓が音を立てる。


「紅夜は人間に災いをもたらし、それを喜び糧にする。今更そんな話……?」


 海里が言い、雪春も頷く。


「紅夜会は何か私利私欲のために紅夜と取引をし何かを企んでいるのでしょう。

 しかし情報調査管理部としてもそこまでの情報は残念ながらまだ掴んでいません」


「えぇ、絡繰門部長の言うとおりです」


 雪春の言葉に、直美も同意した。


「まぁ……それはそうですよね。

 私が知りたいのは……」


 琴音がチラと椿を見た。


 紅夜が椿を花嫁にするつもりだ、という話は実は団内で公にはしていない。

 それはもちろん麗音愛が椿の心情を察しての配慮だった。

 それを知れば、椿をそのまま紅夜に渡せという人間もいるだろう。

 ただ、この情報が白夜団に入っていないのかそれはわからない。


「うふ、大丈夫でーす。なんでもありません~」


 琴音はまた目が合ったままニコリ微笑んだが、何かゾッとする覇気に椿は下を向く。


 麗音愛をきっとまだ好きだろう琴音。

 その恋人でいる椿が、紅夜の花嫁になれば麗音愛の隣は空く。

 

 彼女はそれを、どう思うのだろうか――。


 ◇◇◇


 椿が会議室から出ると、麗音愛が待っていた。

 元々は加正寺家の別荘で豪華な壺や絵が飾ってあった廊下は今は何もない。


 麗音愛を見て、椿はホッとして頬が緩むのを感じたが

 周りにはまだ団長や当主がいる事を思い出しキリリと引き締めた。

 そんな椿の百面相を見て、麗音愛は少し笑う。


「な、何笑ってるの~」


「いやいや、お疲れ様、一緒に帰ろ」


 まだ直美は会議室の中だ。

 実際、何か言われればその場で麗音愛は暴露する覚悟もできている。

 まぁそれでも椿の気持ちを優先するんだろう、とそれもわかっているのだが。


「先輩方、うちのサロンバスでお送りしますよぉ」


 背後からの声。

 琴音だ。 

 笑っていた麗音愛の顔が引きつりそうになったのを椿は見た。

 が、すぐに笑顔を作り琴音の方を向く。

 笑えない百面相。


「あぁお疲れ様。でも佐野さんが俺ら送ってくれるって……」


「佐野さんには伝えておきましたよ~佐野さんも多忙ですから感謝されましたぁ。

 帰りながら、ゆっくりケーキでも食べて帰りましょう」


「え……いや」


「私、先輩とお話するの楽しみにしていたんですよ~

 ケーキは御礼のつもりでホテルヴィサンディアのスペシャルチョコケーキなんです!」


 ◯◯先輩、と琴音が言わなかったので

 麗音愛も椿も相手への御礼だとしたら……と考えてしまい

 流されるように加正寺家のサロンバスに乗り込まされてしまった。


「わぁ……すごい」


 豪華で広い車内に驚く椿。


「椿先輩は初めてでした? いつも玲央先輩はそこに座るので、その隣の席にどおぞ」


「あ、はい……」


 琴音はテーブルを挟んだ麗音愛の前に座る。

 久しぶりにモヤモヤ発作を感じる椿。

 今ではこの感情の正体がわかる。

 が、椿もそんな感情は『任務だ』と自分に言い聞かせた。


「早速~椿先輩、朔さんと仲良しになってましたね~」


 まだ温かい、ムーンバックスのテイクアウトを渡される。

 

「そうなんだ……良かったね椿」


 麗音愛は、先程の放課後に目の前でラブレターを渡してきた男子生徒のダメージがまだ残っていた。

 それに加えて朔海里はイケメンで朔家の御曹司だ。


「仲良しじゃなくて、その……怪我の治療の御礼を言われただけ」


「そっか」


「2人で照れ笑いして、可愛かったですよ椿先輩

 やっぱりモテモテですよね。

 さぁちょっとドライブしながらケーキ食べて帰りましょう~」


 椿が否定する間もなく、琴音はクーラーボックスから

 綺麗に飾り付けられたチョコケーキの皿を取り出し2人に並べる。


「すごいね」


「ホテルで出す仕様でそのままお持ち帰りにしたんですよぉ

 もちろん普通ではできません! 椿先輩への御礼です」


「何も気にする事ないのに……」


「両親も嫁入り前の娘がって言うんで本当に感謝です!」


「いえ……」


「実は言うと御二人に~刀の使い方でお伺いしたい事と同化の事でも聞きたくって」


「……刀の」


「同化の事で」


「はい~

 御二人と一緒の方が一度にお話できますので今回お誘いを」


 合理的な理由があったのか、とホッとする自分に気づく麗音愛。


「俺は呪怨にばかり頼らないようにしてるつもりだけど

 剣技はやっぱり兄さんが……雪春さんとか」


「ん~剣一さんって、聖騎士じゃないですかぁ

 私最近あんまり長くお話できないんですよね。辛くって」


「え、そうなんだ」


「玲央先輩は大丈夫ですか」


「普通に生活している分にはね。結界張られたらキツイだろうけど」


「そうですか、黄蝶露は特別なのかな~

 先輩みたいに呪怨でも戦えたらいいのに。やっぱり同じ呪怨系ですから

 先輩にコツを教わりたいんです。これからももっと強くなりたくて」


 琴音は真剣に強くなりたいと願っている気持ちは伝わってくる。

 今回の新当主を見ていても七当主が一族の経営や財産を守る事を第一に考えていた事がよくわかった。

 この状況で、戦力になる彼女を邪険にしてはいけないだろう。


 でも何より大事にしたい気持ちがある。

 つい、チラリと見てしまい椿と目が合う。


「あ~……椿先輩がやっぱり嫌ですよね」


「え! えっと、あの私は……」


「俺が、みんながいる稽古場で教えるよ。

 団長から新当主の修行も皆でサポートしてくれって事で兄さんと話をしてきたんだ。

 それにもとから椿は何も言ってない」


 椿は琴音といると心配だと伝えてくれた。

 それをわざわざ琴音に言う必要はないだろう。


「そうですね。それが一番ですね~

 修行旅行の時みたいに、またみんなで鍛錬しましょう」


 修行旅行。

 あの直後から琴音は変わった。

 この道に引きずりこんでしまったのかと、今でもたまに思ってしまうが当主にまでなったのは彼女の選択だ。

 そう、思おうとしている――麗音愛の気持ちを隣の椿も感じていた。


「で、椿先輩には同化の事が聞きたいんです」


 琴音がチョコケーキにフォークを刺すと、切断されたケーキはパタリと倒れた。




いつもありがとうございます!!


次回はまだ琴音もおりますが、れおつば回書きたいです!青春


皆様の感想、ブクマ、評価、レビューが宝物でいつも励みになっております。

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