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バニガになっちゃう?椿さん

 


「そうなの、みんなで色んな衣装を着るらしいんだ」


 放課後、伊予奈が迎えに来てくれるというので2人で玄関付近で温かい珈琲とココアを飲みながらベンチに座り待っている。

 コスプレ喫茶の事を尋ねると椿も微妙な顔で答えた。


「椿はどんな衣装を着るの……?」


「ん~、みんなに色々提案されたんだけど、メイドさんとか」


「メイドさんっ……」


 容易に想像できてしまう。絶対可愛い。

 絶対可愛いだろう、けど……。


「あとねバニーガールって、言われて……」


「バ、バニーガール!?」


「う、うん」


 バニーガール!?

 とまた心の中で叫ぶ。


 さすがに高校生の文化祭で許可は降りないだろうが

 なんでも自由な校風なので絶対とは言えない。

 バニーガールの椿……。

 まずは動揺を抑え、呪怨を抑える。

 死にそう。


「……着るの?」


「恥ずかしくて無理だよ」


「よかった」


「チンチクリンだし、みっともないよね」


「まさか、逆だし。そういう意味じゃないよ」


 椿は背は低いが、手足も長くスタイルは良い。

 

「みんな面白半分で、言ってくるんだもん」


「面白いというか……」


『高校生男子がどれだけ性欲まみれか椿はわかっていない』

『狼の群れに可愛い兎を置くようなもの』

『カッツーの餌食に、いや男子全員の餌食になってしまいますよ椿さん』

 と一気に言いたくなるが……。

 自己紹介になりかねない。

 実際心の中にバニガ姿の椿が飛び跳ねている。


「こんな事言ったら束縛かもしれないけど……

 俺は、エロい……いや可愛い格好した椿を他のやつに見せたくない」


「……束縛じゃないよ嬉しい」


「椿」


「だ、だって彼氏だもん」


 照れたように笑う可愛い笑顔。

 嬉しさが滲み出る。

 そうだ、他の誰が信用しなくても椿が彼氏だと言ってくれるだけでいい。


「それでね、文化祭の日バレンタインが近いから……」


「失礼しまぁす!! あの!! 椿さん!!」


「ふえ!?」


 急に2人に割り込んできた男子生徒。


「これ! 読んでください! お願いします!

 冬休み中もやっぱり忘れられなかったんですぅ!!!」


 手紙を押し付けると去っていく。

 気弱そうな男子生徒だった。


「なんなんだ今の……」


 とは言っても明らかにラブレター。


「びっくりした……困っちゃう」


「か、彼氏の目の前でラブレター渡すかな普通」


「うん、そうだよね……ごめんね麗音愛」


「いや、椿は悪くないよ」


「いつもすぐ断るんだけど、今はびっくりしちゃって……」


「え、やっぱり今も告白されてる?」


「あ、うん……もう彼氏がいますってお話も聞かないでお断りしてるんだけど」


 それは嬉しいと思ったが、やはり恋人がいるという事が周りには全く通じていない。

 普通は恋人がいれば諦めるものではないのだろうか。


「あの、川見先輩って……」


「誘われてもお断りしてる!」


「やっぱりか……」


「あ……遊びとかサッカーとかね、たまに」


 自分の呪いのせいなのか……。

 さっきは椿にさえ思ってくれればいいと思っていたはずなのに、結局モヤモヤだ。

 麗音愛はそう思い、椿もまた下を向く。

 椿も魅了の呪いのせいなのか、と気にしてしまう。


「ごめんなさい……」


「俺が存在感無いせいだよ、謝る事ない

 どうあっても釣り合ってないように見られてしまうし」


「私の魅了の呪いのせい……かな」


「魅了の呪いじゃないよ。

 椿には本当に魅力があるんだよ。

 椿は可愛いから。

 俺が……」


「麗音愛もかっこいいもん!」


「ふふ、椿と玲央君。なにバカップルしてるのぉ?」


「み、みーちゃん!」


 現れたのは、椿の友人みーちゃんである。

 確かに今の会話はバカップルだ。麗音愛と椿の頬が赤くなる。

 

 そういうみーちゃんの隣にも彼氏がいて、しっかり手を握り合っていた。

 彼氏にペコリとされ、麗音愛も挨拶する。


 赤くなった椿が簡単に説明すると、みーちゃんはキラリと薬指に光る指輪を見せてくれた。


「椿も玲央君に指輪貰っちゃえば~??」


「指輪……」


「あ、みーちゃん、クリスマスに貰ったって言ってたね」


「そうそう、彼氏いますって証拠になるよ!」


「「指輪が証拠に」」


 お互いに目が合うと、椿は慌てたように目を逸した。


「私もクリスマスに麗音愛にプレゼントもらったばっかりなんだよ」


「あ~そうだ、素敵なネックレスだったね。玲央君センスある~。

 まぁ、提案の1つだったよ、じゃあね!」


 そう言うと、みーちゃんは彼氏の腕に抱きつき手を振って帰っていった。

 麗音愛が椿の顔を見る。


「……指輪欲しい?」


「い、いらない! いらない!」 


「いらないのか……」


「ち、違う違う〜そうじゃなくて」


「ふふ、わかってるよ。椿が遠慮しいだって、前からわかってる」


「んもう」


 ぽかぽか叩いてくる椿の手を笑って握った。

 小さくて、この手で剣を握って闘ったり手を血に染めて皆のために結界を張っただなんて思えない。

 細い指。


「えへへ、麗音愛くすぐったい」


 この指に似合う指輪をつい考えてしまった。

 麗音愛の携帯電話が鳴る。

 伊予奈からの呼び出しだろう。


「行かなきゃね」


「うん」


「あ、腕時計外さないと……」


 本部に行く時に、お揃いの腕時計は外す椿。

 相手が誰だか分からなくとも

 彼氏がいる証拠があるのはいいかもしれない、と麗音愛は少し考えたのだった。

 


いつもありがとうございます!

れおつば回でした!


ただ今夏休み中でして

不定期更新でございます。


次回の更新は11日以降になりそうです。

また是非読んで頂けると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自己紹介になりかねない。 ↑↑↑ わろた( ´∀`) 椿のバニガ姿 何故だろう すんなり目に浮かぶ…( ˘ω˘ )
[良い点] 彼氏の前で堂々と告白…… れおんぬは気が休まらんですね
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