平凡な日常、それでも彼女はやってくる
世間的には大雪の影響や、交通障害が多数発生し
傷害や殺人事件が急増したが、一般市民で『明けの無い夜に』の影響だと思うものはいない。
寧ろ動画配信サイトでは再生数は跳ね上がっていた。
「あぁああん♪ 明けのぉ~明けぇぇええのぉ♪」
「やめろ、カッツー」
新学期の始まった麗音愛達。
教室で大声で歌うカッツーの携帯電話の動画を停止させた。
「な! 何するんだよぉ!! このムッツリスケベの嘘つきイトコンがぁ!」
「なんでそうなる!? 音量でかいし言い過ぎだろうが! 嘘つきってなんなんだよ」
「椿ちゃんとの交際、俺は信じてないんだよ!」
「……まだ言ってるのかよ」
「気にするなって玲央。少女漫画にもよくあるだろ
人気のある子と付き合ってたら僻み妬みの標的だよ」
西野がポンと麗音愛の肩を叩く。
石田は今日も彼女と昼休みデートだ。
「やっぱり、椿はまだ人気があるんだな」
気にはしていないが、実際通りすがりに暴言を吐かれる事もある。
「当たり前だろうがぁ! 頼むから合コンしてくれよぉ~」
「本音はそこかよ……」
「玲央せんぱ~い、こんにちは~」
琴音が急に現れ教室中がざわめく。
「琴音ちゅあ~~ん!!
SNS復帰おめでとぉーん」
「近寄らないでください」
「ひぎぃ!!」
カッツーの言うように、琴音はSNSをする許可が降りたという。
白夜団での活動が今後公になった場合の広告塔に、という話だった気がするが
正直麗音愛にはどうでもいい事だった。
前は悪戯猫のような雰囲気だったが、最近は凄みのある女王のような雰囲気も出て
ドM男子からも人気が出てきている。
麗音愛は大晦日に連絡がなかったというメールに、どう返信すればいいかわからず
『申し訳ない』というスタンプ表記だけで終わらせてしまった。
「な、何か用かな」
「はーい、みんなでお疲れ様会どうですかー?」
「……ん~~みんな忙しいんじゃないかなぁ」
新年会で佐伯ヶ原も絵のコンクールの話をしていたし
この学園ではミニ文化祭のようなものが2月にあるのだ。
その準備で美子も忙しいと言っていた。
龍之介達は知らないが田舎から戻ってきてなんだか遊びには忙しそうだ。
「じゃあ椿先輩と3人で」
「い、いや……それはいいよ」
「え~ダメですかぁ?
ま、今日の夜には会えますしね」
「え?」
「連絡が来ると思いますよ。その時に珈琲でも☆」
麗音愛の携帯電話が振動する。
これは白夜団からの連絡だ。
夜に会議があるらしい。
「時間、あるかな」
「だって~先輩、あんなスタンプ1つじゃ詫びにはなりませんよぉ~」
「いや、だってあの時は……」
皆が聞き耳を立てている。
これ以上は此処では話はできない。
「椿先輩にもしっかり御礼したいんです」
「……わかった、夜に……」
椿が嫌がる事はしたくない。
皆のいる場所で話せばいいだろうか。
「玲央……お前……
琴音ちゃんと話してると、なんか違うよな」
急にカッツーが顔を寄せてくる。
不思議そうにクネクネする姿が気味が悪い。
「なんかな~イケてる感じになるよな」
西野も頷く。
「玲央先輩は元からかっこいいんですよ
でももしかしたら、お互いを引き立て合う関係っていう可能性もありますよね」
琴音がふふっと悪戯な猫のように笑う。
皆は可愛いと思ったが、麗音愛は琴音に感じていた違和感が一層濃くなったように寒気がした。
「そ、そういうのいいから……じゃあまた!」
「はぁい玲央先輩、じゃあ夜に」
麗音愛には琴音がどうして自分に絡んでくるのか一体目的はなんなのかわからない。
椿との交際は応援してくれているようだし、ただの団員同士として交流がほしいのだろうか。
今まで年下に『先輩』なんて慕われる経験などなかったのでわからない。
「う~~ん」
「玲央、琴音ちゃんってお前の事どう思ってるの?」
西野が当然のように疑問を伝えてくる。
「……それは俺が今一番思ってる事だって……うーん」
唸る麗音愛だった。
「おい!!
2組の出し物コスプレ喫茶だってよ!」
1人の男子の叫び声に一斉に教室の男子も反応する。
「すげぇえええ!!」「2組女子レベル高ぇえから最高!!」
「椿ちゃん何着るんだろう」「みーちゃんもな」「やっべ! 俺ら展示にして正解だったな!」
「……コスプレ……?」
コスプレと『椿』の名に反応する麗音愛。
すぐに教室内は願望と予想大会に変わる。
「コ、コスプレェエエエエエ!?」
その後ろでカッツーも叫んだ。
いつもありがとうございます!
また日常会に戻って参りました。
お知らせなのですが作者の都合で12日頃までの更新が不定期になります。
更新が全くできない状況になる可能性もございます。
その後はまた通常のように更新致しますのでどうぞよろしくお願い致します!
ここまで執筆から離れることがなかったので(予想では)
皆様に忘れられてしまわれないか不安でございますが、現実世界での出来事が此処での芸の肥やしになるように切磋琢磨して参ります!
皆様本当にいつもありがとうございます!