大晦日結界修復作戦~最恐女子会に割り込む男~
琴音の黄蝶露と紗妃の華織月がかち合う金属音が除夜の鐘とともに響き合う。
「きゃははは!!
私を殺すってぇ!?」
「あぁ……不死身なんだっけ
ゾンビ女なんだよね、あなた」
「そうだ、お前に勝ち目はない」
「そう?
四肢切断して頭も引き剥がして、バラバラにして白夜団に持って帰るわ」
「すり潰す!」
琴音は紗妃の鎌を左の骨研丸で、薙ぎ払うようにして右の黄蝶露で斬り込んでいく。
生身の人間として紗妃と闘えるのは白夜団でも一握りだろう。
二刀流と鎌の攻防が続く。
紗妃も麗音愛と椿以外では咲楽紫千剣一という男の名は聞いていたが
こんな同年代と思われる、しかも女でこの技量には少し驚いた。
琴音もまた、すぐに殺せない敵と闘うのは初めてである。
斬撃の金属音が鳴り響いてお互い死んだ妖魔の死体の上をクッションにするように飛び退く。
「はぁはぁ……さすがに……しぶといわね」
「お前のその邪悪さ……何が聖女だ……」
黄蝶露と斬り合うたびに、不気味な感覚が身体に残る。
「紅夜の者に邪悪なんて言われたくないわよ」
「ふん、紅夜様の慈愛もわからないバカどもめ
白夜団なんて最悪の組織だ!!
――これから新世界が始まりお前らは一掃される!」
紗妃の怒りと共鳴するように、華織月の香りがまた強く濃くなった。
そして跳躍しての琴音への斬撃。
すんでのところで避けた琴音の肩から血が吹き出る。
が琴音もそれに臆する事なく刃を繰り出した。
しかし、リーチの差。
紗妃の頬がニヤリと上がる。
が、血を吐いたのは紗妃だ。
腹には深々と骨研丸が刺さっていた。
琴音の頬がニヤリと上がる。
「てめぇ!!」
刺さった骨研丸を無造作に腹から抜くとドバドバと血が溢れ
紅色の軍服がさらに紅く染まっていった。
これが紗妃にとってどれだけのダメージなのか、ダメージはないのかわからないが
まだ斬り合いは続く。
「くっ!」
やはり生身であり、闘いが続いていた琴音の方が不利だ。
重心が崩れた――その時。
降りそそぐ真っ白い雪。
その冷たい雪は変わらず、暖かい春の風――。
鋭い太刀が、鎌の斬撃を受け止める。
「――雪春さん!」
「待たせたね」
「新手かっ!」
「あぁそうだね新手だよ。
琴音さん、走れるかい? 今すぐこの範囲から100メートルほど離れるんだ」
「!」
琴音には毒になる浄化の何かをするつもりか!
そう察した琴音は転がっていた骨研丸を拾いすぐに走り出す。
「お前、病院にもいたヘタレだな。
摩美なんか相手に、苦戦してたメガネ……」
「酷い言われようだ」
軽く微笑んだが、後ろで走り去る琴音を感じ吹雪のような斬撃を繰り出した。
「がはっ!?」
「ヘタレで申し訳ない」
紗妃の左の指、頬、耳、肩から血が吹き出る。
鎌を両手持ちしていたが指が落ちた事で紗妃は右手だけで鎌を持つ。
「こんなもん!!」
しかし左手はボコボコと回復しようとするが肉塊のように膨れ上がり
元の指のようには形成されない。
「この前の君の回復を見ていてね……そうではないかと思った」
鎌のリーチとはいっても、雪春の長身に太刀。
椿が苦戦していた時とは違う。
片手の鎌でぶれた攻撃を仕掛ける紗妃の間に入った。
「!」
一刀両断――!!
のはずだったが大量の妖魔が紗妃の首と太刀の間に自殺するかのように吹き出し割り込み
紗妃の首は無事だった。
「遅いと思ったら……」
「カリン、摩美」
「帰るよ、紗妃。いつもバカやって」
迎えなのか、羽ばたく妖魔に乗ったカリンと摩美が紗妃を縄で絡めとる。
「この! まだ闘える!!」
「ダメよ、この男はここら一帯を超浄化結界で包囲した。
狂わせた地脈には届かないけど地上の妖魔は一掃される。
お前にもダメージがあるわ」
「こんな夜にとんだ迷惑をかけてくれるね
紅夜会は、これから何をするつもりなんだい?」
「ふふ、プレゼントですわ。……!!」
カリンがにっこり微笑むがその瞬間に上空に飛び去った。
雪春が超浄化結界を発動させようとした事に気がついたらしい。
100メートル範囲内の妖魔は燃えるように一瞬で塵となった。
「……気付かれたか……」
着信が鳴り、通話を繋ぐ。
『恐ろしい人、雪春さん』
「いやいや、普通の人間には無害だよ。
でもしばらく此処には君は入れないだろう。
僕が祠の修復をするけれど、少し話をいいかい?」
『ええ、もちろん。お伺いします』
雪春は琴音への話を続けながら、放おっておいたジェラルミンケースを拾い上げた。
いつもありがとうございます!!
今回も最恐女子会、そして雪春の助け会でした。
次回は気になる雪春と琴音の会話、とそれぞれですね。
そろそろ年明けです。
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