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大晦日結界修復作戦~佐伯ヶ原VSルカ!クレイジークレイジー~

 


 林の中、剣一が闘い、佐伯ヶ原と美子が祠を目指し雪の中を歩く。


「多分、あそこだ……弱いけど光が漏れてる」


「一応、本物の力なのね」


「ったりめーだろ。俺は期待されすぎている存在だ」


「すごい自己肯定感」


 美子は色々と言いたい気持ちもあったが

 移動しつつ頑丈な結界を保つのに必死だ。

 同化剥がしをしてもらい、槍鏡翠湖も手元にない今

 術士としてのレベルはもちろん下がっていた。


 牙を剥く妖魔のど真ん中をすり抜け、瘴気の中を掻い潜る。


「きゃ!」

「耐えろっ!」

「もう! 優しくないわね!」


 恐怖はもちろんある。それでも今こうして、団員として行動している事に

 昔は感じられなかった充実感や使命感があるように思う。


『大丈夫か、よっちゃん』


「剣一君、うん」


『こっち片付けたら、すぐに行く』


「うん、頑張る」


 剣一への想いも、頼りになる憧れの人として落ち着いた。


「おい、結界もう少し強くしろ」


「あなたねぇ!」


 今こうして麗音愛と椿や梨里や龍之介が闘っている事を考えると自分もと思えるし、

 この憎たらしい佐伯ヶ原とのやり取りで、こんな緊迫の場面なのに妙に緊張が解れる気がした。


 サポートの術札や道具を使い、少しでも強力な結界に補強し歩き続ける。


「……誰だ、あいつは……」


 少し先を歩く佐伯ヶ原が立ち止まる。

 バラバラになった祠には麗音愛達が見たように、赤黒い液体がかけられ穢されているが

 その前に立つ小さな子ども……。


「あれは!」


 美子は、佐伯ヶ原の腕をぐっと掴んだ。


「……ナイトか?」


「うん」


「へぇ黒髪のお嬢様、あの死闘で僕の顔覚えてくれたんだ」


 執事服のルカ。でも今日は紅色を基調にしている。

 岩サイズの妖魔の上に立つとマントが翻った。


「隣はカースブレイカーですね」


「お前、ナイトのなんていう名前だ」


「僕は紅夜会のルカです」


「ルカ……お前が。こいつと俺のどこが似てるって、あの小猿」


 以前に、椿が言った言葉だ。

 確かに、2人とも見た目は小柄で品の良い家のお坊ちゃまのような雰囲気ではある。

 そして毒っ気がある。


「僕がカースブレイカーと似てる?

 へぇそんな話を姫様が……。しかし姫様を愚弄するのはいけないな

 死にたいのかい」


「そんな事でいちいち殺しか、大変そうだな紅夜会も」


「きゃは!

 さすが肝が座ってるね! 君の絵は紅夜様もお好みのようだよ。

 だから殺す事はできないや。でも両足斬り落として絵描きとして連れ帰ってもいいかも」


「! そんな事はさせないわ!」


 佐伯ヶ原の前に、美子が出る。その手は震えているがルカを睨みつける。


「おい」


「あなたの、カースブレイカーの力は……団にとって必要だからよ」


「……ふん、そんな事はわかってる。どけろ」


 美子を押しのけ、ルカに向き直った。


「俺を今どうにかしたって、小猿もサラもいない。

 無駄にする気はないだろう。ただの余興なら、もう引けよ」


「うん?」


「俺に何かしたいなら、姫様の前での方が効果的だぜ」


「……佐伯ヶ原君!」


「きゃはははは! 君、面白いね

 そうこうやってさ、写真にね」


 ルカはポケットからインスタントカメラを出すと、眩しいフラッシュが焚かれた。


()()()泣き顔、撮りたいんだろう」


「何を言ってるんだい、僕たちの愛する姫様のありのままの美しさを残したいだけさ」


「ふん、ゲスコレクションのための駒はとっておくんだな」


「でも僕、カースブレイカー君と闘いたいな」


「俺は絵描きで非戦闘員だ。

 同化もしない、いつでも白夜団だって辞めたいくらいさ」


「へぇ、じゃあなんで辞めないのさ」


「お前みたいなガキにはわかんねー家系の(しがらみ)があるんだよ」


「オトナって大変だね? 年齢も背もそんなに変わらないと思うけど。

 あ~あ闘いたいなぁ」


「闘いたいか」


「もちろん、姫様を守る騎士なのだから。闘う事が宿命さ」


「そうか、生憎(あいにく)今日の対戦ガチャは残念だった。ハズレだ。

 もう一度言うが、俺とこの女は非戦闘員だ。帰って次の機会を待ってるんだな」


 美子はさすがに恐怖と佐伯ヶ原のやりとりの酷さで目眩がする。

 これほど敵を煽るやつがいるだろうか。


「まぁ、あっちに特務部長がいるけどな」


「ちょっと!!」


「きゃはは! きゃはははは!!

 面白いね! あのクレイジーな絵の作者なだけあるよ」


 ぴくり……と佐伯ヶ原の腕が少し動いた。


「もちろん咲楽紫千剣一が来ている事は知ってるよ。

 少し強い蛇を三匹放ってるから……少し苦戦してるかな」


「じゃあ見学しに行けよ」


「彼には、あんまり興味はない」


「俺もお前には興味なんてない。

 紅夜に伝えておけ、来週のチャリティーオークションで俺の絵が500万から出品されるぞってな。

 俺のファンなら落札しておけよ」


 それを聞いて、またルカが大笑いする。

 美子は、目がまわる思いのなか自分でできる範囲の攻撃術をどのタイミングでするか必死で考える。


「じゃあ、今日は帰るよ」


「えっ」


「二度と来るなよ。全く何時だと思ってる、大晦日でもガキは寝ろ」


「僕の宿敵は君にしようかな。

 今度は殺し合おうね、クレイジーアーチスト」


 ルカがぴょんと飛び跳ねると、積もった新雪が大量に煙のように撒き上がった。


 その雪の爆風が2人を包んだが佐伯ヶ原が結界を補強し

 ルカの笑い声が響いたが、あとにはもう姿がない。


「……本当に帰った……」


「おい」


「え」


「いてぇよ。離せ」


 美子が強く握っていた佐伯ヶ原の右腕。慌てて離す。

 相当大事にしていると思う右腕をねじ上げるかのように掴んでいた事に美子は慌てるが

 それ以上は責められなかった。


「……あいつ、俺の絵がクレイジーだと?

 ぜってぇ殺す」


 そうボソと呟いたが


「やっぱめんどくせ」


 とまた呟いた。


「よっちゃん!! 佐伯ヶ原!!」


 慌てて走ってくる剣一。

 ヨロヨロと腰が抜けたように美子はその場に座った。


 まだ残っていた妖魔を剣一が切り刻む。


「お見事」


「さっきここにいたのはナイトか?」


「あぁ、そうですね。帰ったようです」


 美子は佐伯ヶ原を驚愕の目で見つめたままだ。


「あ……あなた、次に玲央達がいたら殺してくれって言ったようなもんじゃない……」


「あぁ? そんな気はねぇよ」


「何かあったのか? 佐伯ヶ原」


「さぁ?」


「……はぁ~~……」


 脱力して雪に倒れ込む。

 クレイジーだ、とは美子は言わなかった。




いつもありがとうございます!!


今回はなんと佐伯ヶ原無双……だけど口の聞き方無双でした!

次回は……引き続きこの3人と琴音回になるでしょうか(予定

楽しんで頂けると嬉しいです。


いつも皆様の感想、ブクマ、評価、レビューが励みになっております!!

気に入って頂けましたらよろしくお願い致します



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― 新着の感想 ―
[良い点] 佐伯ヶ原くんかっこいいー!! 肝の座った男の子良い!!!
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