大晦日結界復旧作戦~二人、支え合う力~
真っ白な雪に紅い血が舞い、ドサリと腕が落ちた。
「うおあああああああ!」
「闘真!」
ヴィフォの叫びが響く。
麗音愛は構わず、呪怨で闘真の落ちた腕を結界で囲った。
思案があった。
まずは紗妃のように闘真も首を撥ねても死なない身体なのか確かめたかった。
「くそがぁあ!!」
しかし闘真の腕は再生しない。
まだ紗妃のような化け物にはなっていないのか、と敵の勢力を測る意味で麗音愛は安堵する。
「闘真、お前は人の痛みを知れ!」
「闘真! 下がって!」
ヴィフォがまた強く笛を吹くと、一気に妖魔が増えロッサが狂ったように牙を向いた。
「咲楽紫千っ!! てめぇ……!!」
血の刃の要領で凝固させたのか出血は止まったが闘真はふらりと倒れ込みそうになり、ヴィフォが支えた。
「くそぉ……! せっかくの軍服が……こいつを殺す! ヴィフォ離せ!」
「闘真、戻るわよ。紅夜様のご指示です」
「ヴィフォ……お前も、子守ばかりで大変そうだな」
「調子に乗るのは、おやめなさい。咲楽紫千玲央。
闘真の言った通り、今は姫様の一時だけの家畜とのふれあいの時間なだけよ」
「人間はお前たちの思い通りになるほど、ヤワじゃない。
お前の笛を叩き壊す」
「今、私達に手を出せば、あなたが行くのに1時間以上かかる街に妖魔を放つわ。
被害は推定200人……」
「卑怯な真似ばかりして……」
「浅はかな人間に何がわかるというの?
姫様!
そろそろどうか、紅夜様の寛大なるお慈悲の心に気付いてくださいませ
貴女を愛するお父様のお気持ちを……!」
「……やめて!」
またインスタントカメラで、麗音愛そして炎の結界内で振り向いた椿を写真に撮る。
ヴィフォは闘真を抱いたまま、飛行型妖魔に身を預けた。
「ロッサ!咲楽紫千を喰い破れーー! 姫様……また……会いに来ます」
血の跡を残しながら去っていく2人を今は追わない。
見上げた麗音愛を残されたロッサや妖魔が襲いかかる。
麗音愛は闘真の残した腕を雪に埋め、そこをまた結界で囲うと向き直り妖魔を切り捨てていく。
忌々しさと怒りをぶつけるように、麗音愛の刀さばきは際立つ。
「……ぐ……」
乱され穢された楔を祈り整えている椿の閉じた唇から血が流れる。
闘真やヴィフォに言われた言葉が心を巡るが、それを考えないように一心に祈った。
その度にまるで乱れた聖流が怒りのように暴れ、身体が引き裂かれるように衝撃と痛みが襲ってくる。
耳から入ってくる戦闘音が止んだ。
麗音愛が戦闘を終わらせたんだと椿は察する。
瞳を開けなくてもわかる――。
しかし、ふっと祈りの痛みが和らいだ。
祠の前にひざまずいている椿は自分を囲むように炎の結界を張っていたが
その外、椿の真後ろに麗音愛が立っている。
麗音愛が干渉している事にすぐに気付いた。
「麗音愛!? 何を……!」
「俺は邪流を制御する……!」
「でも、そんな事をしたら麗音愛にも影響が!」
「椿の負担は減る! 大丈夫! 前を向いて集中するんだ!」
「わ、私は大丈夫!!」
「話は後だ! 一緒に抑え込もう!」
「……はい!」
言い合っている暇はない。
麗音愛が椿の後ろに立ったのは、椿に姿を見せないためだ。
麗音愛のしようとしている事は
椿が流そうとしている聖流の川に入って、乱す邪流のゴミを拾うようなもの。
聖なる力は麗音愛の大敵だ。炎の川に飛び込むのと同じだ。
しかし守るべき少女1人に血を吐かせて眺めているわけにはいかない。
晒首千ノ刀を椿と同じように地面に突き刺し、そこに手を置いて
麗音愛は立ったまま目を閉じる。
「邪流よ……俺に喰らいつけ……」
深く潜るつもりだったが、その濁流はすぐに感じられた。
綺麗に流れていた川が、無残に破壊され暴れている――そんなイメージだ。
邪魔をする邪流や、怨念や穢れを麗音愛は自分に吸収させたり、または消滅させる。
湧き出る聖なる力に身体が激しく刺し貫かれるように痛み、晒首千ノ刀の置く両手は溶けただれてきた。
痛みで声を出せば、椿が振り返りこの姿を見て驚き止めさせるだろう。
麗音愛は、椿の輝く炎を感じながらそれでも潜り続けた。
「聖流……お願い……」
不思議な事と言うべきか、ここまで一緒に闘ってきて当然なのか
麗音愛には椿がどこの聖流を整えようとしているのか理解できた。
それは椿にも同じで、少しでも麗音愛への影響が少なくなるようにせき止めるように動く。
お互いの心を支え合うように、2人は潜り祈り続けた。
いつもありがとうございます。
麗音愛VS闘真でした。
次は少しれおつばイチャラブもございます!
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