大晦日結界復旧作戦~闘真と薔薇妖魔ロッサ襲撃!!~
雪の舞うなか、壊れた祠の前で炎を燃やし続ける椿。
「くっ……」
浄化を終え、両手を地面に着く。
祈るように握りしめていた手はまるで切り裂かれたように血が滲み、雪が赤く染まる。
「椿!」
妖魔を斬り終えた麗音愛が走り寄り、抱き上げた。
「こんなにも負担が……まだ1つめなのに」
「大丈夫、大丈夫だよ」
そうは言っても額には汗が滲み、手の怪我も治りが遅い。
「麗音愛、早く次の場所へ……!」
次のポイントも距離がある、麗音愛は椿を抱き締め飛ぶ――。
やはり椿はぐったりとしている。
空から見える大晦日の街。
渋滞や、赤色灯の光がチラホラ見える。
すぐに浄化しやすいように剣一や琴音が一層しているらしいポイントは後回しに
紅夜が封印されていた山中にあるポイントに降りた。
降りる前からわかっていた、臭う殺気。
本部から向かうまでに一般の団員は近づけない程の状況だと聞いていた。
しかし人影が見える。
「……闘真か!!」
「またお前!! 姫様から離れろ!!」
椿が辺りを炎で照らすと闘真の姿が見えた。
その手には闘真の特殊能力らしい血の剣が握られていた。
切先を麗音愛に向ける。
「闘真、やめて!!」
「姫様、この軍服見てくださいよ」
闘真は遠くからでも椿に笑いかけた。紅い軍服のような服を着ている。
「……紅い服……」
「紅夜会ですからね!! ねだったら作ってくれました!!
もちろん姫様の可愛いスカートも、ありますよ。
そんなダサいのよりいいですよ!
絶対似合いますよ、だから早く帰ってきてください」
「だから闘真……私は帰らない……」
強い風が吹いて、雪が舞う。
「姫様の反抗期、長いですね……。
俺寂しいです。
だから俺ペット飼う事にしたんですよ」
「……ペット……?」
闘真の後ろの闇から現れる妖魔……。
ぐしゃ……ぐしゃ……と不快な音を立て歩く姿。
緑色で直立したまま根っこのような触手で歩くが大きな紅い花びらは
粘膜で覆われ真ん中には牙が無数で蠢いている。
鞭のような腕には鋭いトゲが光っていた。
「……薔薇……」
「俺の薔薇と妖魔をかけ合わせた、最高にイカした妖魔ですよ。
人間が大好物でめっちゃ可愛いです」
ニコニコと闘真は自分の背より高いその妖魔を見ると微笑む。
「……どうして、どうしてわかってくれないの??
全然、全然可愛くないし、人間が大好物って……そんな」
「姫様は今、ちょっと反抗期だって、みんな言ってますから
俺は待ってますよ。愛しています」
逆に突き刺さる『愛』という言葉。
「……やめて……絶対に紅夜会なんて行かない!
そっちに行くなんて考える事もない! 私は人間を守る側だよ!」
「そんな事あるわけないじゃないですか
姫様は紅夜様の娘なんだから。人間じゃないもん」
「!」
「……戯言は終いだ!」
麗音愛が飛び出し、闘真に斬りかかる。
闘真も血の刃で受けた。
「お前は、いつもそのウザい話で椿を傷つけていると
いい加減気付け……!!」
「お前ら人間には、わかんねー話なんだよ!
いけ! こいつを喰い殺せ!! ロッサ!!」
闘真が名付けたのか、薔薇妖魔ロッサは6体。
ロッサは枝をしならせ鞭のように麗音愛に攻撃をする。
「知恵があるのか!!」
闘真の言う事を聞き、連携をとるかのような攻撃。
一緒に闘うべきか迷った椿に麗音愛が行くんだ! と目で合図をした。
椿は祠に向けて走る……!!
薔薇の妖魔はベースは妖魔だ。
浄化結界には入れまい。
祠は破壊され、血のような液体がまかれ足跡まで付いていた。
ロッサ以外にも沸き出た妖魔が椿を取り囲む。
「また、こんなにグチャグチャに……」
見境なしに襲いかかる妖魔が椿の炎の結界で燃えていく。
「どうか許してください……お願い……また力を貸してください」
緋那鳥を雪の積もった地面に刺し
まだ癒えていない両手を椿は結び、目を閉じた。
その後ろで、麗音愛と闘真の刃が混じる。
ロッサの相手は呪怨にさせているが
やはり特別な妖魔だけあって、強い。
そして闘真も、以前より強さが増している。
チリチリとその殺気で頬が痺れるようだ。
「お前がいるから!! お前がいるから姫様がぁ!!!」
呪怨をすり抜けた、つるが麗音愛の足に巻き付く。
「!」
「俺を捕まえるだぁ!?
お前こそ捕縛して実験材料にしてやるぜ!!」
「黙れ――!!」
麗音愛は邪流と聖流の流れを読んでいた。
兄との稽古で掴んだ技。
一気に加速し足止めしてきたロッサを斬撃、闘真の血の刃も粉砕する――!!
「なにぃ!?」
首を狩れる!!
しかし闘真の首を落とす瞬間に響き渡る『哀響』の音。
一層奏者の力が増しているのか邪流の流れが縦に変わる。
コントロールがずれ、その隙きを突いて闘真は血の刃を創りだし後ろに飛び退いた。
「闘真! いつもこんなふざけた事ばかりして
すぐに逃げずに面と向かって闘え……!!」
「あぁ!? 調子に乗るんじゃねぇ!!
紅夜様が本気になれば、いつでもお前もお前ら人間も一気に滅ぼせる……!」
「闘真……!
姫様にペットを見せるだけだと言ってたはず」
暗がりからヴィフォが叫び、また笛を吹き出す。
「このロッサ達を街へ放とうか?」
「なんだと……!」
「お前は姫様のために生かされている。
ただの姫様のペットみたいなものなんだよ」
観察日記をつける、紅夜は確かにそう笑った。
白夜神の力も結局は恐るるには足りないのか――。
「俺や人間をすぐ滅ぼさず、何をするつもりだ……!
お前たちは一体何を考えている……!!」
ヴィフォの笛の音が聴いたことのない曲調に変わる。
また呪怨が乱れる。
祠の前にいる椿の周りの炎が苦しそうに揺らめいたのが見えた。
「じわじわと……恐怖を味あわせてやるのさ
紅夜様がお前らを選別し……」
「闘真、余計な話はもうやめなさい」
「はいはい……
姫様に制服も見せたし、ロッサも見せれたしな。
でも姫様はもう忙しそうだ」
あの祠で血を流しているだろう椿。
その事には、闘真は心配もないような顔をしている。
「俺たちの愛が今日こそ、伝わるといいな」
「――ふざけるな」
麗音愛が怒りで斬りかかり、闘真はロッサを壁にし避けようとしたが
二匹の巨木のような妖魔も麗音愛は一閃した。
「愛なんて言うなぁあ!!」
「咲楽紫千――!! うおおおおお!!」
晒首千ノ刀の斬撃で闘真の右腕が、落ちる――!!
いつもありがとうございます。
闘真回でした!まだバトル続きます!
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